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やっとのことでUさんの追跡を逃れ、電車に飛び乗った私。
ふと我に返ると、周囲の視線を痛いほど感じた。
無理もない。いまは8月。
真夏の新宿を全力疾走した私の髪は汗で乱れ、ブラウスは体に貼りつき、肩で息をしている。
涼しい車内では異色の存在だ。
いくつもの視線を避けるように扉の前の位置をキープした。
そして、何事もなかったように窓の外を流れる風景を眺め…ようとした。
しかし、あろうことか、汗だけじゃなく涙が止まらなくなってしまったのだ。
(ノ_・。)
目頭から流れだした涙はとめどなく鼻のわきを伝った。しょっぱい味がした。
私は涙と汗をぬぐいもせずに窓の外を眺めていた。
頭の中には色んな思いがぐるぐるぐるぐる回っていた。
悪かったのは私かな…。
本当はイヤだったくせに深夜の携帯メールに付き合ったりして。
あげくひっぱたいて逃げて。何やってるんだろ
…いやいや。でもあっちが悪い。いきなりお尻触るのは反則でしょ?
でも本当の涙の原因は、これだった。
なんで私だけうまくいかないの。
世の中結婚してる人なんてたくさんいるじゃない。
私がんばってるよね?
わざわざ結婚相談所になんて入らなくても、相手を見つけてる人はたくさんいるのに。
友達のヨーコもサオリもリョウコもみんな幸せになったのに。
なんで私だけ…。
なんで?
そのとき、バッグの中で携帯が震えた。
もしかして、Uさん?
恐る恐る画面を見ると、それは、結婚相談所Sで私の担当をしてくれている佐野さんからの着信だった。
私は次の駅で途中下車すると、折り返し電話をかけた。
「山中さん!すぐこっちから折り返します!」
佐野さんは短く言うと、すぐ折り返してきた。
「もっと早くご連絡したかったんです」
佐野さんは言った。
「この間のパーティー、どうでした?気が合いそうな人はいましたか?」
私は迷った。言うべきか言わざるべきか…
「山中さん?」
いいや。言ってしまえ。
いまは、誰かに聞いて欲しいと思った。
「佐野さん、すっごいタイミングですよ!」
つとめて明るく言った。
「パーティーで知り合った人と、待ち合わせしたんです。今日」
「今日?」
佐野さんは不思議そうに言った。
「もうデート終わりですか?まだ時間早いですよね?」
「ハイ」
私は一呼吸置いてから
「待ち合わせしたひとにね、いきなりお尻触られたからひっぱたいて逃げてやりました!」
えええええ…
佐野さんはすっとんきょうな声を出して驚いている。
それを聞いてたら、なんだか可笑しくなって
アハハハハ…
(≡^∇^≡)
私は声を出して笑った。
なんだ、まだ笑えるじゃん。
だいじょうぶ。まだまだ頑張れる!
今日の青空と同じくらい晴れ晴れと、そう思った。
後日談:
Uさんには他にも、
お見合い相手の女性に無理やり自分へのプレゼントを買わせる、
ご飯を無理やり奢らせる、等の前科があることが判明し
ほどなく結婚相談所『S』から強制退会させられました……
いったい何がしたかったの?Uさん。
( ̄Д ̄;;
私もあのあと、デートを続行してたら、奢らされたのかしら???
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