「あの、Uさん…!」
私は彼の背中に向かい、勇気を振り絞って声を…
って…、あれ!?
( ̄□ ̄;)
彼は、入口の所で女性に声をかけられて立ち止まった。
背中を向けているので、駆け寄った私には気づかない。
仕方なく、そのまま2メートルほど離れた位置で二人を観察…。話の内容は、よく聞こえない。
すると
「…そんなことないですよー!」
キャハハッ!
女性が楽しげな笑い声をあげながら
そっと、彼の左腕に手をそえた。
次の瞬間、彼女と目が合う。
私は軽く彼女に会釈をし、目を伏せると会場を後にした。
バカみたい…私。
誕生日が一緒だっていうだけで舞い上がっちゃってさ。
一度会っただけで、しかもたった10分話しただけで運命の彼だって思うなんて、私ってつくづく単純でお調子者…。
自分が情けなくなって、涙が出そうになったので
後ろを振り向かずにどんどん歩いて行った。
すると、エントランスの近くで突然
「…お疲れ様です」
若くてキレイな女性に呼び止められた。20代前半だろうか。
「あ、『S』のパーティに参加してた方ですか?」
私が言うと
「はい!」
彼女は眉をひそめて
「もー!いやになっちゃう。オジサンばっかり!」
声が大きかったので、私は思わず『しーっ』と人差し指を立てた。
「信じられない。パパに頼んで退会させてもらわなきゃ!」
彼女は肩の下で美しくカールした髪を指で弄びながら言った。
確かにオジサンばっかりだったけど、『S』は男性の年齢層高めなので、ある意味仕方がないのに…
(;´Д`)ノ
今日、彼女を可愛いと思い、恋心を感じた男性が何人もいたであろうことを思うと、胸がチクチクと痛むのであった。
彼女と駅まで一緒に歩いて、別れたあと、私は深いため息をついた。
みんな結婚したいと思っている気持ちは一緒なのに、参加した人間が、傷つける側と傷つけられる側に別れてしまうのって、なんだかすごく…
すごく、やるせない。
すごく疲れる。
こんなこと、いつまで続けなきゃいけないのかな…
そのとき
携帯がブルブルッと震えた。画面を見ると、知らない番号…
「はい…山中です」
「きららさん?僕だよ。Uです!もう電車乗っちゃった?」
受話器から聞こえてきたのは、さっきまで他の女性と話してた、私と同じ誕生日のUさんの声だった。
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