昼食以来、どこにも止まらず、車に乗りっぱなしの私たち。いいかげんお尻が痛くなってきた。
夕暮れがせまるにつれ道路は混雑してくる。帰りは渋滞に巻き込まれるかもしれない。
ちなみに、「海に沈む夕日を見る」これが今日の彼のメインテーマである。
「夕日って何時くらいかな。今は冬だからけっこう早いよね!?」
そう言われても、私はお天気お姉さんじゃないから日の入りの時間までは把握していない。
「さあ…、そろそろじゃないですか?」
時刻はまもなく午後5時になろうとしている。
「とりあえず、海岸に降りようか!」
車を降りると冷たい風が吹き付ける。2月だから当然である。私はコートの襟を思い切り立てた。
空を見ると薄暗くなっている。
「少し曇っているかなぁ」
彼は言った。そのとき私は気がついた。
「あの。太陽、逆のほうにありますよ」
そうである。いま私たちがいるのは東側の海岸。海に沈む夕日が見たいなら逆側に行かないと…。
「あっそうか!じゃあ今から急いでグルっと回って逆側に行く!?」
「…間に合わないと思います」
なおも「グルっと回る」と言ってきかない彼を説得し、私たちは帰路につくことになった
案の定、帰りは渋滞に巻き込まれた。
私は家まで送るという彼の申し出を丁重に断り、途中の駅で降ろしてもらった。
「あの、高速代と、ガソリン代は…」
別れ際、私が財布を出そうとすると彼は「今度でいいよ」と言いヒラヒラと手を横に振った。
…あれ?けっこう太っ腹じゃん?でも、もうどうでもいい。
家に着いたのは午後9時。
ああ~。疲れた。ドッと疲れた
(-。-;)
デートでこんなに疲れたのは初めてである。
午後11時、そろそろ寝ようと思って携帯を見ると、メールが届いていた。ハヤシさんだ。
件名:
オツカレサマでした!!
本文:
いや~、帰りは渋滞にはまって疲れちゃったね!次回は家まで送りますよ。
ところで、今日のお会計は以下の通り!
レンタカー代
7035円
駐車場代
500円
高速代(往復)
4700円
昼食代
4000円
ガソリン代
2635円
合計 18870円
なので、一人9000円でお願いします。
端数の870円は僕がおごります(^^)/
支払いは次回で結構です。では、おやすみなさい!
……マジ?
「今度でいいよ」って、今回はオゴリっていう意味かと思った。
そんなわけないよね。だってハヤシさんだもん。
端数870円って…おごってもらっても嬉しくないし。
…寿司をおごらせなかったのは、キッチリ割り勘にしたかったからなのね
( ̄_ ̄ i)
デートでこんなに疲れたのも初めてなら、デートのあとにこんな請求書が届いたのも初めてだ。
私はうつろな目で携帯の画面を眺めた。
そして、メールを送った。
件名:
お疲れ様です
本文:
今日はありがとうございました。お支払、振込でもよろしいでしょうか。口座番号を教えてください。
このメールには返事が来なかった。
だから、結果として私はこの請求書を踏み倒したことになる。
後日談。
彼を紹介してくれたミナコと食事に行った。
「で、ハヤシさんはどうだった?」
「せっかく紹介してくれたのに悪いけど…私は無理。もう会うことはないね」
ミナコは言った。
「…ごめん、やっぱりね…」
「やっぱりって…」
「うん。彼が変わり者なのってサークル内でも有名で。でも見た目はイケメンでしょ。女の子にはモテるみたいだけど、すぐ振られるらしい」
「…そんな人をなぜ私に紹介した…(怒)」
「ごめんごめん!きららってなんか許容範囲が広そうっていうか、優しいじゃん!?ハヤシさんみたいな人でも、もしかしたらOKかなって思って…」
ミナコよ…。許容範囲が狭そうと思われるよりは広そうって思ってもらえるほうが嬉しいけどさ。
次回はもっとマシな人を紹介してくれい!!!
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