今日は、震災と、NGOと、アーティストパワーのはなし。


fesboard

先週末、静岡県の掛川で ap bank fes が開催された。


去年のフェス では、3日間で10万人近い動員数を記録しながら、会場内のゴミはすべて9分別。

ライブやトークだけじゃなくて、徹底したリサイクルと、生き生きしたボランティアの人たちと、

NGOや社会的企業のブースが楽しかった。


参加者のチケットの利益分はすべてその後のap bank の資金源になり、

社会的事業に還元されていく。


そういう驚異的野外フェスが、ap bank fes だ。 今年は、その3回目だった。




artist                                                            (c)rakuten.co.jp




発起人の小林武史さんとお話するまでは、邦楽をほとんど聴かなかった私。

それなのに、去年のフェスに参加させてもらって 、大感動した。


音楽が好きで集まった人たちが、自然と「環境」のことを意識しはじめる感じ。

音と、自然と、「いいことしたい」というみんなの意識が共振して広がっていく感じ。

その空気感がなんとも言えず好きで、「来年も絶対に行こう!」 と誓って会場をあとにした。


stage 2006年は動員数、3日間で10万人!

booth たくさんのブースが楽しい。



・・・けれど、モモが生まれて今年は断念。

生後2ヶ月の赤ちゃんと生活をともにしている私には、静岡県の掛川まで遠征するのはキツかった。



ところが、今年は連休を襲った台風4号の影響で、

3日間のフェスの1日目、2日目がキャンセルになってしまった。



連休最終日の16日は大盛り上がりのうちにフェスが開催されたけれど、
同じ時間帯に、新潟はたいへんなことになっていた。



そう、マグニチュード6.8を記録した、新潟県中越沖地震だ。



負傷者は1000人を超え、今も1万2千人以上の人が避難所で過ごしている。


柏崎市を中心に約4万5000戸で断水、約3万5000戸へのガス供給が停止、

約2万3000戸で停電・・・。ライフラインの寸断は、続いたままだ。

市内の学校も、小中高や特別支援学校をあわせて67校が休校になった。



もちろんピースボートは、すぐにスタッフを現地に派遣した。



でも今回驚いたのは、現地に駆けつけているのが

ピースボートをはじめとするNGOスタッフばかりではなかったこと。


ap bank fes が終了した翌朝、つまり震災の起こった翌朝、

きっとまだフェス明けで徹夜のままだったんじゃないかと思われる小林武史さんとap bank スタッフ、

それにap bankがプロデュースするお店 kurkku(クルック)のスタッフが、そろって柏崎を訪ねた。




kurkku 明治通りから少し入った場所にあるお店、kurkku。




震災の被害状況を把握しに、そして

kurkku がフェスの最初の二日間で出す予定だった食材を何かに役立てることができないか、

そんな思いのもと、カレー3000食を携えて、新潟県柏崎へむかったのだった。



すごい!



ストップ温暖化、なんて言ってエコっぽい広告を出す企業は増えてきたし、

実際に本気で省エネに取り組んだり、海外の植林事業などに精を出しているところもある。


でも、いまだに大手の食品メーカーでは週に平均600トンという量の食料が捨てられている。

そのほとんどが「賞味期限切れ」などではなく、「ラベルの貼り違い」「注文しないものが届いた」

「賞味期限の印刷ミス」など、確実にまだ食べられるものが多いというのに。


大量に食料が捨てられていく一方で、日々の食事に事欠く人がいる。

「だったら、それを生かしてもいいんじゃない?」

と思うのはあたり前の発想だけど、

日々の忙しさに忙殺されて、その「あたり前」を実行できない事業家が多いのが現実だ。



そんな中、小林さんはフェスの翌日に、動いた。 やっぱり、やるね!


日本の音楽シーンを代表するプロデューサーの小林武史さんは、

本気の社会的起業家としても日本を代表できるんじゃないか。


同僚から小林さんたちが新潟入りしている話を聞いて、かなり興奮した。




・・・とはいえ、震災支援は、難しい。


ただモノを送りつけても、混乱した現地ではさばききれずにありがた迷惑になることが多い。

長期的に、持続的にできなくては、「支援」の意味がないのだ。

そして、フェス明けの小林さんたちが、現地に数週間滞在できるとは考えにくかった。




「でね、思ったんだけど、ピースボートの震災支援と ap bank、コラボレーションすることはできないかな。」




おおーっ!

ニュースを仕入れてきた同僚の惣一郎、さらなるナイスアイディア!


そう、ピースボートには長期的、持続的に支援する気マンマンの若いスタッフがたくさんいる。

でも肝心の支援「内容」についてはいつも地道に募金を集めてまかなっているのだった。

今回も当然、ゼロからの募金スタートの予定だった。

ap bank と協力すれば、お互いの弱点を補完しあえるんじゃない? とは、まさにその通り。




さっそく小林さんのアシスタントの枡谷さんに電話をしてみた。

フェス明けの疲れも冷めやらぬままの、少し興奮した声だった。


「そうなんです、

 今朝こちら(柏崎)に来て、今、ボランティアセンターに到着したところです。

 カレーを3000食、ただ捨ててしまうなんてしのびなくて、どうにかお役に立てないかと

 小林やクルックのスタッフと来ているんですが…。」


「ピースボートは、

 毎日10数人のスタッフで、少なくても2週間は滞在しようと思っています。

 一緒に動けたらいいなと思いまして」


「そうですか!

 とりあえず、今すでにボランティアセンターで炊き出しをはじめて、

 今日の夜までになんとか100食は使い切ることができそうだったのですが、

 残り3000食は保存場所がないと断られてしまって、どうしようかと思っていたところなんです」




マッチング、成立!




ピースボートから現地入りしていた百戦錬磨の震災支援スタッフ、山本隆(通称ジュニア)は

大混乱する震災の現場で、何度も不可能を可能にしてきた頼もしい同僚。

インフラが停止している場所で、現地の人々のニーズを調査して

できる範囲での支援をひねり出す天才だ。


なんとかカレーの保管場所も確保して、(いったいどうやったのか、武勇伝を聞くのが楽しみ)

クルックの食材を引き受けることになった。




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ジュニアさんは写真右  (c)神戸新聞





ジュニアさんの震災支援暦は阪神大震災にさかのぼる。


神戸の震災、おととしの新潟中越震災、トルコや台湾の地震、スリランカの津波、パキスタンの震災、

それにアメリカを襲ったカトリーナのときも、いつもいのいちばんに出かけていって、

ボランティアの仕切り屋になる。


炊き出し、飲料水確保、雪かきの手伝い…。

ニーズがあれば、全国のボランティアスタッフを呼び集めて、なんでもする。



パキスタンの震災のときは、

豪雪の冬がはじまろうというのに屋根のある家を確保できていない人がたくさんいた。

ピースボートでは、街頭募金で集めたお金で4000枚のブルーシートを購入、

若いスタッフが2人で現地に入って、自ら野宿しながら数百世帯に簡易シェルターを建てた。



96年の神戸のときは、まだ日本に「ボランティア」や「NGO」が根付き始めた頃だった。

役に立ちたくて全国から若者が集まったけれど、大混乱した震災の現場に

「なにかしたいんです!」と押しかけても、そう簡単には役に立てない。

先走る思いが空回りして、逆に被災者に迷惑をかけたりすることもある。


ジュニアさんをはじめとする当時のピースボートスタッフは、

プレハブ小屋をボランティア基地にして、全国から集まったのべ千人の若者と連日打ち合わせ。

生活情報誌の発行や物資の輸送、避難所での被災者支援…。

効果的な動き方を自分たちで考えながら、2ヶ月間の支援を続けた。



kobe

1996年、神戸                (c)神戸新聞





神戸の震災から10年。

「ボランティア」や「NGO」もずいぶん日本社会に浸透して、時代は少し風向きを変えている。

今回は、やる気のあるピースボートの若者たちが、クルックのカレーを炊き出しする。


他にも、アウトドア企業のモンベルや、物資運送トラックを提供してくれたオリックス自動車なども

今回のプロジェクトに協力してくれた。


アーティストや企業がNGOに協力して、一緒に震災支援をする時代が到来している。



もちろん、

震災で被害を受けた人たちの気持ちが、たった3000食のカレーで救われるわけではない。

ひとつのNGOにできることなんて、結局は小さなことだ。


それでも、

環境に思いをはせる人たちの気持ちのつまった、3000食のオーガニックカレーが生かされる。

アーティスト・パワーとNGO、それに企業のコラボレーションという、新しいかたちの震災支援がはじまる。


助け合いの気持ちや、つながりを大切にする心は、広がっている気がする。




まずは、後日談に期待したい。




※最後に、

 経済的にでも、からだひとつでも、「自分も貢献したい!」方へ ;



以下、転送大歓迎


新潟県中越沖地震・被災した人たちに『こころ温まる食事』を!
支援スタッフを現地へ派遣、緊急支援基金を立ち上げます


●ブログにてスタッフの現地報告を更新しています
http://ameblo.jp/pb-campaign/


2007年7月16日午前10時13分ごろ、最大震度6強を観測した「新潟県中越沖地震」 が発生。

ピースボートでは、早急な救援活動を開始するために、スタッ フ4名を先遣調査隊として現地へ派遣、

柏崎市内を中心に『炊き出し』を行うことを決定しました。


ピースボートではこれまでにも、阪神淡路・台湾・トルコ・パキスタン・アルジェリア・

インドネシア・スリランカなどでの自然災害に際し、特に行政機関などの支援が行き届きにくい地域での

被災者支援活動をおこなってきました。


今後も現地スタッフからの状況報告を受け、被災した方々からのニーズ(希望・必要)を直接確認しながら、

支援を行う予定です。


救援募金の受付はこちら


郵便振替口座:00180-6-705651
加入者名:ピースボートUPA
※通信欄に「新潟県中越沖地震」とお書き下さい
※募金の一部は、必要最小限度の活動経費としても活用させていただきます


●食材の提供をお願いします  
野菜、カレーのルー、麺類など、日持ちする食材の提供を募集しています。

食材は直接現地にお届けいただくよう準備をおこなっています。

詳しくは下記『ピースボートセンターとうきょう』までお問い合わせください。


●ボランティアスタッフも募集中  
募金活動など、本プロジェクトに参加するボランティアも募集しています。

また、現地での炊き出し活動のため、調理経験のある方も募集しています。

このリリースに関するお問い合わせは...

ピースボートセンターとうきょう(担当:山本隆)
(Tel:03-3362-6307/Fax:03-3362-6309/E-mail:tokyo@peaceboat.gr.jp)