『ことばの花束』より引用
私はクリスト教徒が正しいということを欠伸しながら認める。
シェンキェヴィチ
P102
余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。
正岡子規
P104
沈黙しているとき私は充実を覚える。口を開こうとするときたちまち空虚を感じる。
魯迅
P134
苦労が人間をけだかくするというのは、事実に反する。幸福が、時にはそうすることはあるが、苦労はたいてい、人間をけちに意地悪くするものなのだ。
モーム
P151
私の生涯は極めて簡単なものであった。その前半は黒板を前にして坐した、その後半は黒板を後にして立った。黒板に向かって一回転をなしたといえば、それで私の伝記は尽きるのである。
西田幾太郎
P167
ことばの饗宴―読者が選んだ岩波文庫の名句365 (岩波文庫 (別冊7))
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『ことばの饗宴』より引用
上から桜の葉が時々落ちて来る。その一つがバスケットのふたの上に乗った。乗ったと思ううちに吹かれて行った。風が女を包んだ。女は秋の中に立っている。
夏目漱石
P12
「いい人ね。」
「それはそう、いい人らしい。」
「ほんとにいい人ね。いい人はいいね。」
川端康成
P14
一個の人間にとってもっとも恐ろしいのは、気がつかないということです。気がついてしまえば、救う方法はあるものです。
郭沫若
P114
「なんでもない事が楽しいようでなくてはいけない」というのが父の気持ちだった。ところが子供の私にそんな事が解るはずはなかった。
小堀杏奴
P120
感ずる心がなければ言葉は符牒に過ぎない。路傍の瓦礫の中から黄金をひろい出すというよりも、むしろ瓦礫そのものが黄金の仮装であった事を見破る者は詩人である。
高村光太郎
P172