- 小谷野 敦
- もてない男―恋愛論を超えて
タイトル通り「もてない男」という立場から恋愛について語っているのだが、文学研究者だけあって参考文献の量が凄まじい。平安の昔の文献から、世界各国の恋愛論まで登場する。古今東西の数々の言葉を参考に恋愛について考え抜いていくのだが、辿り着く先が小谷野氏の個人的な偏見に満ちた恋愛感と、自分がもてない事に対する私怨にすぎないところが、読んでいて脱力する。
本人がこれはエッセイであると言っているので、そのつもりで読むのがいいだろう。あまりの博識ぶりに、「それなりに、もてるのでは」と思わせるが、読んでいると、やっぱり彼は「もてなさそう」に思えてくる。さらに読み進めると、彼が「もてない男」であることに確信をいだいてしまう。高い理想に狭い視野。現実を偏見で切り捨てる自己保身。これだけの博識が何の役にも立っていないということにも驚く。だが、これは論文ではなくエッセイだ。これらのマイナス要素が小谷野氏の「もてない男」としての価値を高め、やっぱり「もてない男」だなと思わせることで、エッセイとして成功している。伊達にベストセラーになっていない。
以下、もてない男の私怨を引用。
ああ、妬ましい。悔しい。どいつもこいつもいちゃいちゃしやがって。爆弾でも投げてやろうか。なんで俺ばっかりこんなに孤独なんだ。だいたい俺は東大出てるんだぞ。こんなに女にもてなくて振られてばっかりいるんなら、なんで苦労してあんなに勉強したんだ。あいつら、頭はからっぽのくせしやがって。(中略)
こういう嫉妬心が、私のなかにぐるぐると渦を巻いている。
…名文だと思います。
さらに私が不快なのは(もうかなりやけくそになっているが)「男フェミニスト」どもである。というのは、私の妄想かもしれないが、「男フェミニスト」には、いい男、もてそうな男が多いような気がするからである。やけくそだから実名を挙げるが、森岡正博、瀬地山角、宮台真司、伊田広行(写真を見るかぎり大したことないのだが、「いい男」という声あり)など。私は邪推するが、彼らはきっと「女にもてる」のであろう。それで、「俺は女の扱いがうまい」から「女を理解している」と幻想し、「結婚なんて制度だから」とか言いつつ事実婚していて、フェミニスト的なことを言っていると女もさらに喝采してくれて、みたいな環境にいるのではないか。
…中谷彰宏も入れて欲しかったです
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