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  男女間の視線の違い、
   その理由に迫る


  — 女性の方が見る領域が広く、
      男性は顔を見る傾向



Jane J. Lee
for National Geographic News December 3, 2012

男女は物の見方が違うと言われる。最新の研究によれば、性別によって注目する部分が異なると証明されたという。
      男女間の視線の違い、その理由に迫る
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男女計52人を対象に実験を行ったのはイギリス、ブリストル大学の研究チーム。さまざまな画像を見せたところ、注目する場所や視線を動かす範囲が男女で異なっていた。


研究チームは、映画、ドキュメンタリー、絵画の静止画を19~47歳の男女各26人に呈示し、その視線を記録した。使われたのは、映画『サウンド・オブ・ミュージック』、『インサイド・マン』、ドキュメンタリー『ブルー・プラネット』などの1コマや、エドワード・ホッパーの『People in the Sun』、デイビッド・バウアーズ『Three Graces』など。


視線は1~5カ所の“ホットスポット”、特に人の顔(特に目)や身体の一部(手など)に集まった。

女性は男性よりも見る領域が広く、男性が注視する場所よりやや下方の、顔以外の部分に視線を送っているケースが多かった。

ブリストル大学の博士課程で視覚を研究し、チームを率いたフェリクス・マーサー・モス(Felix Mercer Moss)氏は、リスクを避けたい気持ちが一因と推測する。西洋文化において、相手を凝視する行為は脅しと見なされる場合があるからだ。

「女性は、相手の目に合わせる行為が高リスクととらえている可能性がある」と同氏は話す。そのため、顔を見る時は男性と比べて下の位置に焦点を当てているという。

男女間における視線の動きの違いについては、いろいろな研究がある。しかし、「感情を表現した顔や、性的に挑発するような写真など、使用する画像が偏っていた」と同氏は指摘。今回の研究では、より一般的な視覚刺激でも、男女に違いが出ると仮説を立て、それが実証された。

イギリスのイースト・アングリア大学で社会的認知を研究するアンドリュー・ベイリス(Andrew Bayliss)氏は、今後に期待できると高く評価している。
「次の課題は原因の解明だ」

マーサー・モス氏も、成果が眼球運動の研究に役立ってほしいと願っている。「視線追跡を扱う学部の在籍者は、男女比が偏っている場合が多い。例えば、コンピューターサイエンスでは男性が、心理学では女性が多数を占める。性別の偏りが研究結果にも影響している、としたらどうだろう?」

男女の違いをテーマにした長年の論争の決着はまだまだ先になりそうだが、ものの見方が異なっていることは確かなようだ。


研究の詳細は「PLOS ONE」誌で11月30日に発表されている。

Photograph from Moviestore/Alamy; Illustration (below) courtesy Felix Mercer Moss