カテゴライズというのは、犬や猫に名前をつけるのに似ている。
だが、やつらにとってはそんな与えられた名前など意味を持たない。
古くは「髪立て系」「耽美系」そして「ビジュアル系」。
時代とともにその呼び名は変わった。
だがどんなに呼び名や世間の目が変わり続ける中で、変わらないものある。
それが、不動の5人編成バンド「BUCK-TICK」である。
群馬県高崎市出身(この地はBOΦWYを生んだ地)であることから、デビュー当初のBUCK-TICKはビートロックとポップ性を併せ持った正統なるBOΦWY後継者だった。
櫻井敦司の驚異的なルックスと今井寿の全方角的音楽感度を売りにしたこのバンドは、当時シーンにはまだまだ早すぎた「異端児」として映ったことだろう。
だが、その後のヴィジュアル系ブームを先取りしていた点で、BUCK-TICKは80年代と90年代のバンドブームにおけるパイプ役を担っていたといえる。
また、一方で大胆過激でスキャンダラスな外見を誇示すればするほど、硬派を気取る音楽誌、音楽評論家からないがしろにされていたのも事実だ。
転機となるで事件が起こったのは89年。
乗りに乗ってる状況の中、メインコンポーザー今井がドラッグで逮捕されてしまう。
当時固唾をのんで見守っていたファンに対しての今井はじめ彼らとった返答は『悪の華』。
ボードレールの詩集から取ったと思しきタイトルに誰もが心の中で「今井やるジャン」と思ったことだろう。
確信犯的なこのメッセージは彼らがロックバンドであるという認識を広める契機となる。
「LSDで良かった。ビートルズもやってたからな。」とは今井の弁だが、ロックミュージシャンたるものエンターテイメントなリップサービスは欠かせない。
アーティストにとってのビッグマウスは自己表現でありパフォーマンスである。
ジョン・レノンは「ビートルズはキリストより有名だ」と。
ジョニー・ロットンは「ロックは死んだ」と。
歴史に残るミュージシャンは極めてアジな発言を口にしてきたものだ。
その後も、順調にキャリアを重ね結成20年の今もって武道館公演を可能とするこのバンド。
先進的な音楽性とダークでデカダンなイメージが若干とっつきにくい印象もあるが、重い扉を開けた先にはめくるめく幻想の世界が広がっている。
吉川とは、よく行き着けの飲み屋で酒を酌み交わす仲だった時代があった。
それに関して、吉川は「あいつら(BUCK-TICK)は静かに飲むんだけど、その量が半端じゃない」と述懐している。
酒好きの吉川にここまで言わしめるBUCK-TICKは『酒』『ドラッグ』『ロック』をまさに体現する数少ないロックバンドである。
この度、彼らのトリビュートアルバムが発売されることが発表された。
評論家に批判や揶揄されても、前線で体を張り続けてきた日本のリビング・レジェンドとしての功績はこのトリビュートを抜きにしても時代が証明している。
変わらない姿勢、変わり続ける音楽性実験精神。
それらはミュージシャンにとって欠かすことのできないものである。
しかしこのアルバム、なかなか錚々たる面子だが今ひとつパンチに欠ける。
ここは一つ吉川晃司に一曲披露してもらいたいと思うのは私だけではないだろう。
今井や吉川は同い年。New Waveを自身の基点とする点なども共通する。
何より吉川20周年記念シングルは『狂った太陽』 。
BUCK-TICKとの親和性は限りなく高いと見るがどうだろうか?