ログ・ホライズン1巻 異世界の始まり 感想 | 水脈の底のブログ

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 ちらっとテレビで見たログ・ホライズン。その原作が小説家になろうで無料公開されている事を知りそこで公開されているものを読み終えた時には手元に書籍版が一揃い集まっていたので感想でも書いてみる。

小説家になろう―ログ・ホライズン

 日本サーバーだけで120万のキャラクターに10万人前後のアクティブユーザーが居ると言われているMMORPG「エルダー・テイル」。20年という長い歴史と高い評判を持つがモニター越しに世界を見てマウスとキーボードでキャラクターを動かすという意味ではごく普通のオンラインゲーム。古参プレイヤーの白鐘恵もいつも通りログインしプレイキャラクター「シロエ」でそのゲームに参加していたが突如意識が途切れ気がつけばモニター越しに見ていたプレイヤータウン「アキバ」でシロエになっていた。

 第一巻というだけあってこの世界に関するチュートリアルや説明書のような立ち位置にあるだろうか。さっきまでプレイしていたエルダー・テイルのゲームと似ている世界に居てエルダー・テイルのゲーム知識を持っている以外は何の知識も情報も無い冒険者(プレイヤー)が少しずつ情報を集めるところから始まる。ゲームの仕様以外は読者と同じような情報量なので少しずつ世界の法則が分かってくる様子は面白い。冒険者にとって大きな問題となるのは食料アイテムが見た目に関係なく全て湿気って塩気のない煎餅か色のついた水道水、本人の面影と声は残るが性別や背格好はゲームアバターのもの、ゲームの仕様を引き継いでデスペナを受けての復活があるので死が終着点とならない、統治機構も法律も無いの4つか。食料アイテムが全て湿気った煎餅なのは空腹を凌ぐために食べる必要が有るとは食べ続ければ気が滅入る。説明が入らなくても水道水とサプリメントだけで生活することに近いと思うと気が滅入る。そして背格好と性別がアバターに準ずるのは困る人が多いだろう。その実際例は仲間となって一緒に行動することになるアカツキが居る。長身の男暗殺者のアバターを操作していたアカツキは実際には低身長の女性。シロエの持っていた外見再決定ポーションのお陰でこの危機を回避できその恩義に報いるとか言う理由で同行することになる。

 そして一番問題なのは法も統治機構も存在しないこと。確かに死んでも消滅しないならそこまで問題にしない人も出てくるがこれは大きい。システム上出来るから、自分はそれで楽しいからという理由でプレイヤーがワガママを押し通しギスギスオンラインになるのはよく聞く話だがただのオンラインゲームならば引退するなり自分の気に入ったコミュニティに引きこもればいい。しかし脱出手段どころか原因すらわからない異世界ではそうも行かない。そのギスギスした雰囲気がそのまま自分の周囲の雰囲気となってしまうのだから。システム上制約が無いから何をやってもいい。この考えを突き詰めたのが第一巻の悪役ギルド「ブリガンティア」の存在だ。ブリガンティアはゲーム時代にはNPCと呼ばれていた大地人の奴隷商から始まり果てはプレイヤーと呼ばれていた冒険者にさえその手を伸ばす。

 現実では面識のある直継となぜかシロエを主君と仰ぐアカツキという信頼できる仲間。それに加え所属こそしていないものの信用出来るアットホームな雰囲気のギルド「三日月同盟」との交流がメインだった前半はブリガンティアに狙われている三日月同盟の新人プレイヤー「セララ」を救出しようとする後半へとつながる。シロエ達が居るプレイヤータウンはアキバ、ブリガンティアと救出対象のセララが居るプレイヤータウンはススキノ。エルダー・テイルの世界がハーフガイヤプロジェクトという計画の下で距離は1/2面積1/4の世界を構築しているのがここで非常に役に立つ。アキバもススキノも距離が半分というだけで現実世界のそれと同じ位置関係にある。飛行機も鉄道も高速道路も車も無い。一般的な移動手段が馬と徒歩しか無い世界でアキバからススキノまで行くのは困難を極める。精鋭ではあるが高レベル帯が少ない三日月同盟が救援に向かうよりは90レベルの廃人プレイヤーであるシロエ、直継、アカツキの3人で救出に向かったほうが確実と考えるシロエ。ギルドから見ればよそ者の自分たちが助けに向かうなんて勝手な事を言って良いのかと躊躇するシロエの背中を押して決断をさせる仲間。物事を考えすぎて引っ込み思案になりがちなシロエを支えられる2人の仲間はしっかりしているなぁ。

 そしていざ救出の旅となれば旅らしさが出てくる。一般的ではない移動手段としてグリフォンを使用した空の旅での風景、グリフォンでは困難な地域を回避するために行くコンクリート製の地下坑道。そして地下坑道を抜けた先で待っている津g・・・ライトポート海峡の美しい朝焼け。未知だが素晴らしい物を発見する。その経験を共有する。コレこそが本当の冒険だよなぁ。

 ライトポート海峡を超えてススキノに到着しセララ救出作戦が始まる。ススキノでブリガンティアに狙われていたセララはにゃん太という猫人族の冒険者に匿われシロエ達が到着するまでは事なきを得ていた。その間にセララがにゃん太に対してほの字なのは大事に入らないだろうという判断だが。セララを保護していたにゃん太は落ち着いた雰囲気や自分を年寄りと言う発言からご隠居、班長と呼ばれ親しまれているシロエの知り合い。腕も確かでススキノからの撤退では大きな役割を果たした。数が多くブリガンティアと接触せずに逃げるのが困難と考えていたシロエは予定通りススキノ郊外でブリガンティアとの戦闘に入る。圧倒的な人数を前にしてブリガンティアのギルマス「デミクァス」に挑発での一対一を誘ったりその一対一でデミクァツを追い込み一枚岩では無いブリガンティアの隙を作ってその間に流れを奪ったり、デミクァスからの救援要請を受けて戦闘に参加したブリガンティアメンバーを盾役、遊撃隊、コンビネーションアタックを最大限機能させて士気を挫く。コンビネーションアタックに関しては対象に設置するタイプの支援魔法に気が付けよと言いたかったがおおよそ満足。あと出来ればWEB版と同じようにブリガンティアのNo.2「ゾンダーク」の首と腕がポロリして欲しかったな。シロエの初PKと言うことで覚悟というか汚れ仕事を他人任せにしないという態度が見れて好きだったのだ。それでも単なる力押しで敵を殲滅するのではなく役割や目的をしっかりと持って達成するのは良いな。ススキノからセララを救出しグリフォンで脱出して第一巻は終了。第二巻は戦闘が無いもののログ・ホライズン本番と言えるので感想も書きやすくなりそうだ。

 最後に書籍版に加えられたおまけ要素への感想。今回は合間に挟まれるキャラクター紹介やアイテム紹介の他に12のメイン職テーブルと無数にあるサブ職業テーブルの一部がおまけで入っている。職業一覧は特にサブ職業を見ているには面白いしキャラクター紹介も各職の性能が大雑把にわかって助かる。職設定資料集には情報あるけどそれだけじゃHPやMPが実際にどのくらいの比率なのかわからない。

第一巻該当箇所
WEB版 1~10
アニメ版 1~4