【読書日記】自己肯定感と、自己を顧みることの重要さ-「ヒア・カムズ・ザ・サン」 | ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~

【読書日記】自己肯定感と、自己を顧みることの重要さ-「ヒア・カムズ・ザ・サン」

おはようございます。
本日の1冊はコチラ↓


「ヒア・カムズ・ザ・サン」 有川浩 新潮文庫


正直、面白いと思いました。
同じ登場人物とシチュエーションで、
異なる中編小説が2本。
それぞれが描こうとしている部分に
合わせてストーリーが変わる。

なのに、両方ともいいのが読後感。
複雑な人間心理を表現しているのに、
いやな感じが残らないどころか、
さわやかな気持ちになれてしまうのが、
いい本だなと思わせてくれます。

主人公は出版社の編集者をしていて、
特殊な能力を持つ古川真也。
手に触れた物に残された感情や場面を
読みとることができてしまいます。

その能力への悩みと、
その能力の活かし方の模索。
特殊な能力がある自分のことを、
つい卑下してしまう。

自分の持つ能力と、
周囲の人たちの魅力とを比べて、
悩み落ち込むときもあれば、
その能力で助けられることもある。

特殊かどうかは置いておいて、
人は誰しも自分が持っている力と、
他の人とを比較してしまいます。

2編の小説のうち、
前編では仕事を舞台に描き、
後編では家族を舞台に描いて
いるように私は読めました。

主人公の真也の同僚のカオルと、
そのお父さんで脚本家の白石が、
水と油のように弾いていくのを、
真也の能力が中和させていく。
どちらもそんなストーリーです。

私は、前編のほうがお気に入り。
主人公が特殊な能力を持ってるのに、
妙にどこもかしこも人間臭くて、
「あー、わかるなー!」
って、随所に思えてしまう。

例えば、真也が抱える能力への不安。

『全員にそこそこ受け入れられる―それは、編集者に置き換えれば正に自分のことではないのか。誰とでも上手くやれる、誰にでも受け入れられる代わりに、こいつでなくては駄目だと言われることも一生ないのではないか、自分は。暑苦しいほど一生懸命なカオルと机を並べて仕事をするようになって、深刻で後ろ向きな命題に取りつかれるようになった。もし生まれつきの「余分な」気づきを持っていなかったら、自分の編集者としての能力はどこまで落ち込むのだろう。もし、何かの拍子でこの「余分な」力がなくなったら、自分は無能に成り下がるのではないか。』(P33)

これって、誰もが抱える不安です。
特殊な能力なんてなくても、
誰だって才能は持ち合わせています。

他の人を見ていて、
「あの人のここがうらやましい」
とか思って嫉妬をしたり、
「それに比べて自分は・・・」
とか思って卑屈になったり。

能力があるから、
仕事ができるわけじゃないし、
能力があるから、
人から好かれたり嫌われたりする
わけでもないのに。

私たちはついつい、
持ち合わせた自分の能力に対して、
その原因を求めたがります。

しかも、他の人の良い点は、
すぐに目についてしまう。
だから真也も、能力を持っていない
カオルの良い点がうらやましい。

自分を卑下するカオルのことを、
嫉妬の眼差しで見る真也に対して
愛着を持たずにいられるでしょうか。

『「どうせ」今まで見たこともないような卑屈な顔に、真也のほうが打ちのめされた。「どうせあたしは一生懸命やるしかないのよ、それしか能がないんだから」―どうせっていうな。俺はお前の一生懸命さを眩しいと思ってるのに、その枕詞にどうせってつけるな。太陽に向かうようなお前の持ち味をお前自身がそんなやさぐれた声で否定するな。俺はあと五年、麻井先生の担当をやれたとしても、絶対お前みたいに呼び捨ててはもらえないのに。』(P53)

きっと、どんな才能を持っていても、
平凡な人間であったとしても、
それを否定してはいけない。

では、肯定さえすればいいのか?
というと、その答えをカオルの父、
脚本家の白石が教えてくれます。

日本で成功するも、いざこざがあり、
渡米してアメリカでの成功を誓う父。
しかし、自分の才能のためであれば、
何を犠牲にするのもためらわない父。

才能のない自分には関係ない。
と思っても、白石のことを想像して
文章を読み進めていくと、日本人には
こういうお父さんって少なくないかも
しれないと、思えてきます。

『家族のためにと言いつつ娘が父親の顔を忘れるくらい仕事場に籠もっているなら、仕事を少し減らしてでも家族の時間を作ってくれるほうが、どれほど彼女たちは幸せだろう。しかし、白石が愛しているのは、家族よりもまず自分の才能だった。自分の才能を発揮することが白石にとっては最優先の人生の命題だったのだ。―それは表現者という人種が大なり小なり抱えている病理かもしれないが、白石はそれが極端だった。』(P106)

特別な才能の有無は無視すると、
仕事に一生懸命でいる自分が、
一番いとおしい。

自分は家族のために仕事をして
いるのだから、きっと家族は理解を
してくれている。

能力を自分のためだけに使う。
他を犠牲にするのは仕方ない。
確かに、それも生き方の1つです。

でも、私だったら・・・
自分の持つ力が周囲のためになって
こそ初めて、自分の力が認められて
いるように実感できる気がします。
実際にそうできるかは別問題ですが。

自己満足だけでは、
自分も幸せにはなれないし、
周囲も幸せにはなれない。

自分に卑屈になることでも、
周囲と自分を比べることでも、
同じく幸せになれない。

大事なのは自己肯定感と、
自己を顧みることのバランス。
それを教えてくれるドラマでした。










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ヒア・カムズ・ザ・サン (新潮文庫)