お前を決して忘れない | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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「ラインストーン・カウボーイ」などのヒットを持ちカントリー畑で活躍し、かってはブライアン・ウィルソンの代役としてビーチ・ボーイズで歌ったこともあるグレン・キャンベル。ご存知の方も多いかと思いますが、数年前よりアルツハイマーが進行していて昨年発売された『シー・ユー・ゼアSee You There』が最後のアルバムになると言われています。歌うこともままならない状態になってきているグレンですが、現在アメリカでは彼のスワン・ソングとなるであろう曲が話題となっているようです。


I'm Not Gonna Miss You


俺はずっとここにいる 今はまだ行かない
ギターも弾けず自分の歌も歌えない

僕には思い出せないんだ
最後までお前を愛しつづける
お前は俺には最後の女
思い出せる最後の顔

そして いちばん大事なことは
お前を決して忘れない
忘れはしない

今までのようにお前を抱けはしない
子供にアイ・ラヴ・ユーが言えもしない 

俺の行いや言葉のすべて
傷つけ痛めつけるものすべて 
お前が俺の瞳の中にそれを見ることは無いだろう
お前が涙しようとそれが俺を傷つけることはない
お前が何を思うのか俺には分からない

俺に残るただひとつのものは
お前を決して忘れないということ
お前を決して忘れはしない


拙訳を読んでいただけば分かるように、記憶がどんどん失われていく現在の状態をグレンは歌にしています。すべてのことが失われても愛するお前の事だけは決して忘れないと歌っているのです。カントリー畑の人とは書きましたが60年代後半はジム・ウェッブの諸作をヒットさせたり、前述したようにビーチ・ボーイズのメンバーだったこともありロック/ポップ畑の人というイメージも持っている人でもあります。

「ロック」が「老い」を歌う。若者の音楽というアイデンティティーで生まれた「ロック」がついにここまで来てしまったかという感慨を覚えてしまいました。

かってジョニー・ロットンは「ロックは死んだ」といい保守化してしまった「ロック」に決別しようとしましたが、今まさに「ロック」は死のうとしているのかもしれません。