こいつはお前へ贈る俺のロックン・ロール・ラヴレターさ | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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前回のエントリの中でベイ・シティ・ローラーズの歌う「二人だけのデート」を取り上げました。ダスティ・スプリングフィールドのオリジナルより前にローラーズのカバーを聴いたためか、「二人だけのデート」はどうしてもアイドル・ソングに思えてしまいます。

当時(75年~78年ごろ)をご存知の方ならお分かりかと思いますがとにかくこの日本でも女の子がワァワァキャーキャー、タータン・チェックの衣装を着て笑顔を振りまきながら口パクのステージと、今でいえば「ちゃらい」アイドル・バンドそのものでした。




アイドル・バンドなのでメンバーも10代かと思いきや、デューク中島さんからいただいたコメにもあるように、

>若いレスリーでも 昭和30年、ウッディが昭和32年生まれ。F田君や 故M原君がやってるような感じですよね。それどころか、エリックは、昭和28年生まれ、アランに至っては、昭和24年生まれ。私のD大同期最年長が 昭和25年生まれでしたから あの人より年上かあ…と違和感有りましたね。でも キャッチ-で、いいバンドでした。

「二人だけのデート」ヒット時の年齢でいうとレスリーが21歳、ウッディがかろうじて19歳でエリックは23歳、アランは27歳と結構大人なバンドだったんですね、意外ですが。元々65年にアラン(16歳)とデレク(14歳)のロングミュアー兄弟によって結成され68年にベイ・シティ・ローラーズに改名し71年に「朝まで踊ろう(Keep on Dancing)」(全英9位)でデビューという経歴ですから、ひょっとしたらエジソン・ライト・ハウスなんかのブリティッシュ・バブルガムのひとつと考えた方が良いのかも。



ちなみに彼らのデビューを仕掛けたのはあのジョナサン・キングでいきなり9位というのはさすがという気もしますが、その後は何故か泣かず飛ばずでローラーズの代表曲である「サタデイ・ナイト」も4枚目のシングルとして73年に発売されますがチャート・インできずと不遇の時代が続きます。売れないのはルックスのせいと考えたのか既に加入していたポール・マッカートニー似のエリックに加え、ボーカルのノビー・クラークをレスリー・マッコーエンに(これはかなりのポイント・アップ)、


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そしてあごがキュートなウッディくんを加え、心機一転、これが功を奏したのか74年のアルバム『エジンバラの騎士(Rollin')』(うっ!宝塚か)が全英NO.1を獲得しタータン・ハリケーンが吹き荒れることになります。

エジンバラの騎士/ベイ・シティ・ローラーズ


そして75年5月に「バイ・バイ・ベイビー」で遂に全英No.1を獲得します。

このシングルで日本でもタータン・ハリケーンが吹き荒れることとなるのですが、いつもの文化放送の「ALL JAPAN POP 20」のチャートを調べると75年の7月第一週に38位に初登場し2ヵ月後の9月第二週にそれまで6週間1位をキープしていたウィングスの「あの娘におせっかい」を蹴落としみごと1位を獲得。その後カーペンターズの「ソリテアー」(ニール・セダカ作の名曲だ)に抜かれるまで8週にわたり1位を続けています。ちなみに3位はイーグルスの「呪われた夜」でした。



>”新しいビートルズ”を見つけた!英米を征服した噂のローラーズ旋風日本上陸

というキャッチ・コピーですが、元ビートルズのポールのバンド=ウィングスを抜いての一位獲得と、人気という面においてはまさに”新しいビートルズ”というのはローラーズに相応しいものでした。


Bay City Rollers - Bye Bye Baby 1975


さてこの「バイ・バイ・ベイビー」も当時はてっきりローラーズのオリジナルと思っていましたがこれもカバー・ヒットでした。オリジナルはフォー・シーズンズで65年に全米12位のヒットを記録したものでした。

Frankie Valli & The Four Seasons - Bye Bye Baby


金持ちのご令嬢と貧乏男の恋「悲しき朝焼け」や金持ちのボンボンと下町の女の子の恋「ラグ・ドール」といった単なる甘いポップスではない歌詞でヒットを飛ばすフォー・シーズンズですがこの「バイバイ・ベイビー」も御多分にもれず愛し合っているのに別れざるを得ないカップルの歌です。

一緒には居られないと 彼女に話すべきだった
僕の指には結婚指輪
(彼女は僕をとりこする だけど 僕は自由じゃない)

だから バイバイ ベイビー さよならだ


オリジナルはローラーズ版よりテンポはぐっと抑え目でフランキー・ヴァリーの歌声は辛い気持ちを彼女に一言一言噛んで含める、そんな風に聴こえます、さすがという感じ。それに対してローラーズのバージョンはなんかあっけらかんとしてるというか、フォー・シーズーンズのオリジナルとは落差があるように感じられます。

Jon Kutnerの「1000 UK #1 Hits」という本よれば、実はローラーズのメンバーはフォー・シーズンズのオリジナルを聴いたことがなかったようです。彼らが聴いていたのはウッディのシングル・コレクションにあったシンボルズSymbolsが67年にカバーしたバージョンだったようなのです。

The Symbols - Bye Bye Baby - 1967 45rpm


確かにこれだとフォー・シーズンズほどには落差はないですね。それにしても既婚男性と若き乙女の恋というのは、ティーンエイジ・バンドだと嘘くさくなりますがメンバーの平均年齢が20歳を超えているローラーズだったら有りなんというか、メンバーの年齢をうまく逆手に取った選曲だったのかもね。



75年暮れには郷ひろみもカバー。安井かずみが訳詞していますが、郷ひろみも55年生まれとレスリーと同年なのでOKだったのでしょうか。それにしても郷ひろみという人その時々の自分にあった洋楽曲を見つけるセンスを感じてしまいます。

余談ではありますが、ピクシーズ・スリーの「コールド・ウィンター」からの引用といわれるまる子ちゃんの主題歌、渡辺満里奈の「うれしい予感」ですが、「バイバイ・ベイビー」も少し入っている気がします。

渡辺満里奈/嬉しい予感


「二人だけのデート」と同じくオリジナルより先にローラーズを聴いてしまったおかげで、後にオリジナルを聴いたときに何か違和感を感じて、その良さに気付くのに時間がかかってしまいました。正直言って歌詞も今回初めてきちんと読んで”あぁ、そういう意味だったのね、単なるカップルの別れの歌じゃなかったんだ”と繰り返しになりますが、フランキー・ヴァリの歌い方が腑に落ちたわけで、遅すぎますね。


ローラーズは他にもロック・クラシックスと呼べる曲をカバーしています。以下の曲はさすがにローラーズを聴く前にオリジナルを聴いていたので、カバーに幻惑(!?)されることは無かったのですが、中には、ローラーズで初めて聴いてしまってオリジナルの良さに気付くのが遅れたという人もいるのでしょうね。カバー・バージョンというのはオリジナルへの入門に大変役立つものなのですが、最初にきいたものの印象が残りすぎるという功罪相半ばということがあるので要注意です。

たとえばこんな曲。

Don't Worry Baby - Bay City Rollers in Japan with Pat McGlynn


ローラーズ版もけっして悪いとは言わないけど、やっぱりブライアンの声が先で良かったなと。
一瞬在籍したイアンが抜け新たにパット・マグリンが加わった直後に来日した時の映像のようですが、パットくん可愛いですね、エリックがほとんどカメラに無視されてるのがかわいそうという気も。

こんな超名曲も。

Bay City Rollers Be My Baby .wmv


「ビー・マイ・ベイビー」と「ドント・ウォーリー・ベイビー」をカバーするというのはこの2曲の関係性からすれば必然性ありのナイス選曲なのですがちょっと軽い気がするなぁ。ドラムスはかなり力入ってますが。それにしても女の子たちの熱狂ぶりがハンパない、ステージー上は彼女たちが投げたゼリービーンズで完全に埋まっているのもすごいですね。

上の2曲も次の曲の落差に比べれば思いっきり許せてしまいます。ローラーズにちょこっとだけ在籍したイケメン、イアン・ミッチェルくんが結成したロゼッタ・ストーンによるブルース・ロックの名曲のカバー、邦題は「サンシャイン・ラヴ」なのでオリジナルに気付かなかった人もいるかもしれません(笑)。

Sunshine Of Your Love by RosettaStone


映像見て知ったのですがこのバンド、イアン・ミッチェルがボーカルじゃなかったんですね。てっきりイアンがフロントにたってギター弾きながら歌ってというイアンの「人気」を前面に出したバンドと思っていたのですが、どうやらイアンはギターで勝負という「実力」バンドをめざしていた感じですね。にしてもボーカルいちびりすぎ(笑)。


次は”この曲がまさかあの人のカバーだったとは”とずいぶん後になって絶句した曲です。

Rock 'N Roll Love Letter - Bay City Rollers


実はこの曲、その昔ダリル・ホールと一緒にガリヴァーというバンドをやっていたフィラデルフィアのシンガー・ソング・ライター=ティム・ムーアの2ndアルバムの中のナンバーです。ティム・ムーアといえばアート・ガーファンクルが取り上げた「セカンド・アヴェニュー」や1stアルバムのオープニング・チューンの「フール・ライク・ユー」のような洗練されたシティ・ポップスの人というイメージだったので、ローラーズがティムの曲をカバーという驚きよりはむしろあのティム・ムーアがこんな曲書いちゃったんだという驚きの方が強かったりしました。

Tim Moore - Rock and Roll Love Letter


うーん、これは良質のパワー・ポップスに仕立て上げたローラーズの方が良いかな、ティム・ムーアが歌うのには無理がある気がします。でもこれティムのボーカルをダリル・ホールにするとホール&オーツの曲でいけそうな気もします。ひょっとしてガリヴァー時代の作品?


おまけ

「ビー・マイ・ベイビー」と「ドント・ウォーリー・ベイビー」とくれば次はこの曲(笑)。第二のローラーズ狙いのバンドがいっぱい出てきましたが、この曲はビーチボーイズの香りがしてとっても好きでした。大雨の日曜ですが、この歌で少しは爽やかに、「すてきなサンデー」です。

Buster -Sunday