わたしが病院で出されたサプリメントのうち、いくつかポイントになっていそうなものを
リストアップして、関連する情報を集めてみた記事です。

入手可能な書籍から情報を集めたり、ネットの情報(ある程度信頼性がありそうな検索等)を
用いているので、やや表現が硬かったり専門用語が多めの記事になっていますが、ご容赦下さい。

今回は鉄。
女性の場合はとくに不足しやすく、鉄欠乏性貧血の原因になるため
食事やサプリメントで補うことが大事であるとよく言われている、鉄です。

【一般的な情報】
鉄(Fe)は人体にとって必須な物質で、最も豊富な(約4g)微量元素です。
体内の酸化還元反応の触媒としても重要な意味を持っているものです。
生体内の鉄の2/3はヘモグロビンの成分として赤血球に含まれて循環しています。
また筋肉中のミオグロビンにも鉄は含まれ、またフェリチンまたはヘモジデリンとして貯蔵されます。
食物としてはホウレンソウやレバーなどに多く含まれていますが、動物性の食物起源の鉄の方が
吸収効率が高いとされています。(自然にキレートされたヘム鉄を多く含むため)
ただし過剰に摂取すると鉄過剰症になることもあります

人体内の鉄のバランスは、腸内での鉄吸収を調節することで維持されており、
人は出血以外に鉄分を失うことはほとんどありません。
(男性に比べて生理のある年代の女性に鉄欠乏性貧血が多いのはこのためです)
ヨーロッパ、北米の一日平均の鉄摂取量は10~20mgで、吸収されるのは1mgだそうです。
そしてそのほぼ同量が排泄(胆汁を経由)されています。

【医薬品製剤の適応・用法など】
経口製剤としては硫酸鉄、フマル酸第一鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム他が販売されています。
静注製剤もあり、シデフェロン、含糖酸化鉄他が臨床上使用されているようです。

医薬品の適応は全て「鉄欠乏性貧血」
どの製剤も「鉄欠乏状態にない患者」は投与禁忌です。(鉄過剰症のおそれがあるためです)
静注製剤に関しては、経口投与が何らかの理由で適さない場合にのみ使用すること、
また予め必要な鉄量を計算した上で、定期的に血液検査を行い投与するように、という
注意書きがあります。(これも鉄過剰症を防止するためです。)

用量としては、経口製剤では1日あたり100mg~200mg(鉄として)というものが多いようです。
静注製剤の場合は製剤ごとに異なりますが、経口製剤より少量投与になっています。

サプリメントとしてよくみかけるミネラルで、気軽にとっている人も多い鉄分ですが
実は医薬品としては、それなりに投与時に注意が必要な成分ということがわかります。
一旦体内に入った鉄は、基本的にごく少量ずつしか体外へ排泄されていかないために
身体に不要な大量補給は、鉄過剰症を引き起こすリスクがあるのです。

【鉄欠乏の症状・所見など】
鉄欠乏性貧血:貧血の最も一般的な原因として挙げられるものです。
易疲労感(疲れやすい)、動悸、呼吸困難感、顔色が悪い、といった、一般的に貧血の症状と
される症状が主体ですが、爪が反り返る所見もみられることがあります。
ヘモグロビンが低下するために下まぶたの粘膜が白っぽくなることもしばしばあります。

【目標摂取量】
米国での推奨量:成人男性と閉経後(51歳~)の女性で8mg。19歳~50歳の女性は18mg。
(妊娠中、授乳中は別の用量設定があります)
上限量が設けられており、全ての成人において1日45mgが上限量です。

日本の食事摂取基準では、成人男性で6.5mg~7.5mgが推奨量。
月経のある女性の場合は10.5mg、月経のない女性の場合は6.0~6.5mgが推奨されています。
上限量は成人男性で45mg~55mg、成人女性では40mg~45mgです。(年齢により異なる)
わたしの年齢だと40mg/日が上限でした。

2000年の栄養所要量では、男性10mg・女性12mgと設定されていたのですが、2005年の新基準では
その設定が男女ともに引き下げられていることがポイントです。
以前は鉄の不足が問題となるケースが多かったのですが、近年は鉄の過剰摂取に対する注意が
呼びかけられているケースも増えているためです(後述)

【一般的なサプリメントに含有される鉄の分量】
DHCのサプリメント   :(ヘム鉄の名称)1カプセルに鉄6mg 1日1カプセル
ファンケルのサプリメント:1日4粒 4粒で鉄6mg
小林製薬のサプリメント :1日2粒 2粒で鉄4.8mg

一見すると月経のある女性の場合ではやや足りないかな、という鉄の含有量ですが
この量であれば、男性や月経のない女性でも推奨量を超えないということで
各社概ね同じレベルの含有量になっているのであろうと考えられます。

鉄は栄養機能食品の栄養素として認められており、一日摂取目安量を満たした商品については
栄養機能表示が認められていますが、この場合の摂取目安量は上限10mg、下限値2.25mgです。

【わたしが処方されたサプリメントの袋表示と実際の服用指示量】
1粒あたりヘム鉄5mg・イースト鉄3mg
これを「一日あたり2粒を目安にお召し上がりください」というのが袋表示です。
この指示通りに服用した場合、1日16mgです。
わたしが栄養解析レポートと、栄養カウンセラーから指示された服用量は1日6粒。
トータルでサプリメントの鉄分含有量は48mg/日でした。(レポート上にも表記あり)

鉄欠乏が明らかな人に投与される医薬品の投与量はさすがに下回っていますが、
市販のサプリメントの8倍ほどの鉄量になりました。
わたしの年齢の摂取上限値はオーバーしてます(゚∀゚)
(あ、ちなみにわたしはフェリチンとヘモグロビン、血清鉄、UIBC等の鉄関連の数値は
 全て検査会社の正常範囲内です
し、いわゆる貧血に伴う症状もありませんですw)

【副作用と過量投与の際の有害事象など】
医薬品の経口鉄剤の副作用は、消化器症状(悪心・嘔吐・食欲不振その他)や過敏症状など。
肝機能異常や頭痛、めまい、倦怠感などを呈するケースもあるようです。
また過量投与の場合、悪心嘔吐、腹痛、下痢、吐血などの症状が出現したり、頻脈、血圧低下、
チアノーゼ、ショック状態や昏睡に陥る場合があり、迅速な処置(催吐・胃洗浄等)が必要になります。
小児の場合は鉄中毒で致死的状況になることがあり、とくに注意が必要との記載があります。

鉄の利用・吸収はビタミンC他の因子により促進され、アルコールや過剰な補給、また医療的には
疾患のために頻回に輸血を反復した場合などに、鉄過剰症を引き起こす場合があります。

【鉄過剰症の問題】
山田医院だより
日本医師会雑誌「鉄過剰症ーその病態と治療」←項目のみです
下記参考リンク先にも多少情報がありますのでご覧になっていただければと思うのですが、
鉄は2価と3価の状態を行き来することで触媒として働き、活性酸素・フリーラジカルを発生します。
(フェントン反応)
2価の鉄が過酸化水素と反応して、身体の中で発生する化学種として最も反応性の高い
ヒドロキシラジカルを作り出すことが以前から判明しています。

フリーラジカルはDNA情報を切断したり修飾することで、アポトーシス(細胞の死)を引き起こしたり
変異を引き起こす形でDNAに影響を与え、発がんにつながっていくという機序を通し、現在では
鉄過剰は発がんと関係しているということは明らかになりつつあることなのだそうです。

また高度な鉄沈着を起こす疾患(遺伝性ヘモクロマトーシス)というのは以前から知られている
疾患でしたが、軽度や中等度の鉄の沈着であっても長期間に渡った場合、いろいろな障害が起こる
ことが近年判明し、すでに臨床上でも応用されているようです。
(ex.インターフェロンが効かないC型肝炎に瀉血を行うことで、ウイルスそのものは
  除去されなくても肝機能が改善し、がんの予防効果があるとする研究など)
日本鉄バイオサイエンス学会では鉄剤の適正使用に関する指針を含め、いくつかの書籍を出版し
鉄剤の長期的・人為的な投与に対して再検討することを促しています。

【栄養療法関連書籍(低血糖症と精神疾患治療の手引)での鉄の位置づけとツッコミどころ】
鉄の投与量は「貧血の程度に応じて」という記載があります<ある意味当たり前
低血糖症に貧血が合併した場合は、より症状は重くなります、という記載がありますが、
わたしは貧血がないにもかかわらず鉄を48mgも投与されています(゚∀゚)

あとこの本は、貧血=鉄欠乏、という前提に則って書かれていますが、そもそも貧血には
鉄欠乏以外の原因もあるということも医師であるならばもちろんおわかりですよね?

そもそも「この人になぜ鉄が欠乏するのか?」ということを個別に考えず
ビタミン依存体質等という名称で個体差のせいにだけしていたら
鉄欠乏になった原因疾患の存在を見逃しかねないのではないですか?

子宮筋腫による月経過多で出血が多いために鉄欠乏になっている女性に、鉄だけ補給しても
根本の原因は全く解決しません。
考えるべきなのは鉄そのものではなく、鉄が足りなくなる原因疾患でしょう?

このことで得をするのは、長期にわたって「鉄が足りないから具合が悪いんですよ」といいながら
自費で高額なサプリメントを患者に売ることができる立場にいる人間です。
検査をしてデータが良くなっていなくても「投薬で治療している」ということにできる。
「そのくらい難しい病気だから高額で治療を続けないと良くならない」と思わせやすいから、
そう思ってしまうのは、勝手な想像ですかね(にやり)

そしていつものように、過剰投与のリスクについては一切記載がありません
何だかツッコミが定番のパターンになってしまっている気がしますが、要するに、
「低血糖症の治療そのものにおいて鉄が必須であるという記載はありませんでした」

【おわりにわたしの意見など】
サプリメント関連の記事は、下調べに集中力と体力がいるので結構疲れます・・・w
まぁ自分でやりたくて始めたことなんで仕方ないんですが。


処方されたサプリメントを初めて飲んだときの、お通じの変化と吐き気が今も印象に残っています。

今まで調べたサプリメント成分はどれも過剰な投与で吐き気が出るので、実際は鉄剤自体で
わたしが吐き気を感じていたかはなんとも言えませんが、毎日おなかは張っていたし、どうも
すっきりしない感じがずっと続いていました。
そしてサプリメントをやめた途端に、すっきりしたという(苦笑)

医師の指示で服用しているのに、なんでこんなことが?
そう思いながら、各種のわたしが飲んでいたサプリメント成分を調べているうちに、
自分でも思いもかけなかったことをいろいろ知ることになりました。

貧血には鉄、といわれていた時代は、すでに古い時代の医学になりつつある。
先進国においては、すでに鉄はその人に応じて適正量の管理が必要な成分となっています。

だからこそ、日本人の食事摂取基準も、近年必要量が引き下げられているのと、
サプリメントでも非常に控えめな含有量になっているのだろうな、と思います。

鉄が明らかに欠乏している人(フェリチンが正常値以下で、かつヘモグロビンも低下している人)
にとっては、確かに鉄剤は今後も必要なお薬であるのだろうと思います。
身体疾患で出血をしたとか、何らかの理由で鉄欠乏になった人に対する医学的な管理のもとでの
鉄の投与まで否定するつもりはありません。

ただし、「何となく」とか、「よさそうだから」という理由で安易に長期間にわたって、
鉄を服用し続けることには、今後問題がさらに明らかになってくると思います。

そしてそれは医薬品だけでなく、鉄含有のサプリメントについても同じことが言えるでしょう。

医師ですら、静注の際には必要量を計算してまで投与を行う成分。
経口投与を安易に続けないよう、不足していない患者には禁忌とされる成分。

それを「サプリメントのほうが吸収にいいから」と、市販のサプリメントの含有量の数倍、
医薬品量の半分近い成分量を含有しているサプリメントを投与し、そしてどの患者に対しても
採血は一律に3ヶ月おき。

これは個体差を考慮している医療と言えますか?
長期投与で鉄過剰症を引き起こしたとき、彼らは責任を取るでしょうか?


参考文献リスト
エビデンスに基づくハーブ&サプリメント事典
治療薬マニュアル
サプリメント事典初版本
低血糖症と精神疾患治療の手引

参考リンク
Wikipedia鉄
Wikipedia鉄欠乏性貧血

(文中にも一部リンクがあります)


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