緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムSPEEDIとその公開の過程は
今回の事故で最も落胆したことの1つです。いまからでも迅速な公開を望みます。
http://www.nsc.go.jp/
①炉心溶融や水素爆発から10日も経ち、かつ退避後に
原子力安全委員会からプレス発表されるなど有り得ません。
http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030103.html
②本来は条件入力から15分で計算結果を供与する事になっているそうです。
報道では実際それくらいにはある程度結果を出していたそうですが、
風向きが内陸方向になり(実際に被害が出た後)モニタリングポストの測定値と比較
できるまで公開することを躊躇した様です。気持ちは判りますがこれでは役に立ちません。
③気象や地形を考慮し放射性物質の降下量を計算・被曝量を推定するそうです。
メッシュの切り方や被曝の及ぶ範囲の境界条件などいろいろと難しいと思います。
一応、それなりの検討はしている様です。では何が悪かったのでしょうか?
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kanhou_shishin/kanhou_shishin003/siryo3-9-2.pdf
④富士通の三澤氏、永森氏の特集記事にSPEEDIの開発の経緯が紹介されています
・1980~1984年:設計、基本システム開発(日本原子力研究所)
・1985~1992年:原安センターへ移管、自治体へ接続(財団法人原子力安全技術センター)
・1993~1996年:地方公共団体端末変更、ワークステーション化
・1997~1999年:システムの分散化、VP→ワークステーション
・2000~2001年:対象施設拡大、オフサイトセンターの接続
・2002~2004年:地方公共団体端末更新、PC化
・2005~2006年:高度化SPEEDI計算モデルの導入など
http://jp.fujitsu.com/about/magazine/backnumber/vol59-5.html
開発時の研究が一段落した後はひたすら
システムの拡大とサーバーや端末機器の「買い換え」に予算を費やし、
20年を経て、やっと若干の修正を行った程度に見えます。
⑤21年度の経産省事業評価シートでも29億円のうち27億円がオフサイトセンター
の機器や通信網の賃料などです。所管の(財)原子力安全技術センターには維持管理費と
して1.2億ほど入っていますが間接経費をひけば人件費程度という感じです。
http://www.meti.go.jp/information_2/downloadfiles/review_sheet/0727.pdf
同時期に文科省からも11億円ほど入ってます。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2010/09/01/1295363_7.pdf
さらに対象地域の地方公共団体もSPEEDIには予算を投入しています。
下記は大阪府の平成23年度予算ですが1700万円レベルです。
http://www.pref.osaka.jp/yosan/detail/index.php?year=2011&acc=1&form=01&proc=6&ykst=2&bizcd=20101007&seq=1&eda=00010004
これら莫大な予算の殆どは機器の維持管理や通信網への支払いに充てられています。
プログラムの高精度化や運用の信頼性向上は置き去りだった様に感じられます。
⑥下記はSPEEDI開発に携わった研究者の経歴の一例です。
http://ssrs.dpri.kyoto-u.ac.jp/~ishikawa/Career_J.html
修士課程卒業後原研でSPEEDIの開発に携わり、完成後は別の研究フィールドに
移っています。原研や原子力行政では良くある事ですが、
「開発した人」と
「製作した会社」と
「運用する組織」が、
ばらばらで中身を熟知したエキスパートが居ない印象を受けます。
福島第一原発の事故で我々が思い知ったのは
・数百m程度離れると(場合によっては建物の3階と1階でも)被曝量には
大きな違いが生じること(ウクライナの麦畑より遥かに難しく責任も重大)。
・結局は地上のモニタリングポストで較正しないと住民避難の判断に
使えるほどの信頼性は無かったこと。
・そもそもの退避基準も、また退避を決断する主体も曖昧だったこと。
などだと思います。
これら困難な要請にシミュレーションで応える為には計算メッシュや構造物の入力の仕方、
飛散物の実測データとの比較など不断の研究と検証が必須だったと思います。
どの分野でも計算コードとはそうやって練られて行くモノと想像します。
今回の事故で最も落胆したことの1つです。いまからでも迅速な公開を望みます。
http://www.nsc.go.jp/
①炉心溶融や水素爆発から10日も経ち、かつ退避後に
原子力安全委員会からプレス発表されるなど有り得ません。
http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030103.html
②本来は条件入力から15分で計算結果を供与する事になっているそうです。
報道では実際それくらいにはある程度結果を出していたそうですが、
風向きが内陸方向になり(実際に被害が出た後)モニタリングポストの測定値と比較
できるまで公開することを躊躇した様です。気持ちは判りますがこれでは役に立ちません。
③気象や地形を考慮し放射性物質の降下量を計算・被曝量を推定するそうです。
メッシュの切り方や被曝の及ぶ範囲の境界条件などいろいろと難しいと思います。
一応、それなりの検討はしている様です。では何が悪かったのでしょうか?
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kanhou_shishin/kanhou_shishin003/siryo3-9-2.pdf
④富士通の三澤氏、永森氏の特集記事にSPEEDIの開発の経緯が紹介されています
・1980~1984年:設計、基本システム開発(日本原子力研究所)
・1985~1992年:原安センターへ移管、自治体へ接続(財団法人原子力安全技術センター)
・1993~1996年:地方公共団体端末変更、ワークステーション化
・1997~1999年:システムの分散化、VP→ワークステーション
・2000~2001年:対象施設拡大、オフサイトセンターの接続
・2002~2004年:地方公共団体端末更新、PC化
・2005~2006年:高度化SPEEDI計算モデルの導入など
http://jp.fujitsu.com/about/magazine/backnumber/vol59-5.html
開発時の研究が一段落した後はひたすら
システムの拡大とサーバーや端末機器の「買い換え」に予算を費やし、
20年を経て、やっと若干の修正を行った程度に見えます。
⑤21年度の経産省事業評価シートでも29億円のうち27億円がオフサイトセンター
の機器や通信網の賃料などです。所管の(財)原子力安全技術センターには維持管理費と
して1.2億ほど入っていますが間接経費をひけば人件費程度という感じです。
http://www.meti.go.jp/information_2/downloadfiles/review_sheet/0727.pdf
同時期に文科省からも11億円ほど入ってます。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2010/09/01/1295363_7.pdf
さらに対象地域の地方公共団体もSPEEDIには予算を投入しています。
下記は大阪府の平成23年度予算ですが1700万円レベルです。
http://www.pref.osaka.jp/yosan/detail/index.php?year=2011&acc=1&form=01&proc=6&ykst=2&bizcd=20101007&seq=1&eda=00010004
これら莫大な予算の殆どは機器の維持管理や通信網への支払いに充てられています。
プログラムの高精度化や運用の信頼性向上は置き去りだった様に感じられます。
⑥下記はSPEEDI開発に携わった研究者の経歴の一例です。
http://ssrs.dpri.kyoto-u.ac.jp/~ishikawa/Career_J.html
修士課程卒業後原研でSPEEDIの開発に携わり、完成後は別の研究フィールドに
移っています。原研や原子力行政では良くある事ですが、
「開発した人」と
「製作した会社」と
「運用する組織」が、
ばらばらで中身を熟知したエキスパートが居ない印象を受けます。
福島第一原発の事故で我々が思い知ったのは
・数百m程度離れると(場合によっては建物の3階と1階でも)被曝量には
大きな違いが生じること(ウクライナの麦畑より遥かに難しく責任も重大)。
・結局は地上のモニタリングポストで較正しないと住民避難の判断に
使えるほどの信頼性は無かったこと。
・そもそもの退避基準も、また退避を決断する主体も曖昧だったこと。
などだと思います。
これら困難な要請にシミュレーションで応える為には計算メッシュや構造物の入力の仕方、
飛散物の実測データとの比較など不断の研究と検証が必須だったと思います。
どの分野でも計算コードとはそうやって練られて行くモノと想像します。