図は2008年10月に骨盤に照射した重粒子の計画線量である。
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シミュレーションは実際の照射姿勢で行われる。今回は「斜めうつぶせ寝」。
実際の固定具をかぶせ約1時間かかる。(私はいつも30分程度で済むが)

こういう図を見るときに私が気にするポイントは2点、
・最大線量(今回は57.6GyE)に対し90%以上の線量が見込める照射範囲。
 殆どの癌には画像には映らない辺縁部が存在する。
 また呼吸同期を取るとは言え、実照射の際の誤差も必ず生じる。
 それらを合わせ患者としては5mmから10mm程度はマージンは確保したい。

・もう一つは最大線量に対し50%以上の線量が「あたってしまう」体積。
 肺や呼吸器付近に対しては胸水や肺炎などの危険を考えると20Gy以上の
 照射領域をできるだけ少なくしたい。
 今回は骨盤であるので直腸などの消化管がリスクポイント。肺ほど弱く
 無い事が実証されてはいるが「目標は40GyE以下」を目指したい。

例えば「仙骨の中心付近に小さい骨転移がある」程度の患部なら、
体表面に近く、接線入射も可能な為、IMRT(強度変調放射線治療)でも結構
集中させられる。通常、学会発表されるのはそういう「良い患者」の例。

私の様な「最悪の患者」の場合、粒子線の「局所性」が必須だと考える。
後はこの分布をいかに「計画通り」に照射するかの勝負。

殆どは病院側の技量に依存する事になる。患者にできる事と言えば、
・照射台に乗ったら、できるだけ再現性良く呼吸し、力を抜くこと。
・計画から治療終了までの約1ヶ月間、なるべく体型を変えないこと。
ぐらいだと思う。(毎回照射前に補正は行うが、、)