2000年頃を境に国内でも多少は効く抗ガン剤が使われる様になって来た。
しかし投与の現場では「抗癌剤には個人差があります。奏効率は○○%です」という説明がなされ、
効果が落ちてくれば「癌に薬剤耐性がつきました残念ですが、、」と言い渡される。

患者にとって重要なのはその「中身」である。抗癌剤が効く為の最低条件?は前回記事で列記した。
投与した薬剤が円滑に患部に届けられるのは重要である。しかしそれだけで効果が上がるほど問題は
簡単ではない様である。

添付図は最も基本的な細胞代謝の考え方である。
代謝

1つの重要かつ複雑なハードルは細胞膜の機能であろう。単なる浸透膜と異なり様々な酵素が配置
され細胞内外の物質の出入りを調節している。

イオンポンプやイオンチャネルは薬剤耐性や個人差の問題に対し(素人目にも)重要に思える。
しかしながらそれらの役割、数、機能、活性度の制御、等は未だ研究の途にある様である。

生体は非常に巧妙である。最近の研究では「低分子化合物を排除する」ポンプもあるそうである。
抗癌剤治療においては邪魔な感じもするが本来は「有害物質を解毒する」高級な機能である。

肝臓癌や腎癌、肺癌など、常日頃から「外界のモノを取り込み処理する」器官はもしかすると
こういった高度な機能が強いのかも知れない。その結果、抗癌剤治療がより困難になっている、
と想像する事もできる。

また同じ臓器で見ても細胞膜の(膜に含まれる酵素の)機能にこういった個人差があるのは
充分考えられる。抗癌剤を補強する様な「イオンポンプ補助剤」などが開発されるのが理想では
あるが、当分は無理な様に感じる。結局、患者にはどうする事も出来ないのだろうか?

現段階での私の結論は「正常状態を維持する」ことしか思いつかない。
・例えばコレステロール過多は細胞膜の(動きを阻害し)流動性を悪くする様である。
・また血漿中のアルブミン低下は組織液を引っ張れなくなり浮腫や胸水を起こす要因になる。
・さらにカリウム、ナトリウム、塩素などの電解質バランスは細胞膜内外の電位構造を決める。

細胞付近のこれらのパラメータが採血結果とどの程度相関しているかはまた議論があるが、
実際的には血液検査のデータから類推するしか無い。これらのデータが「正常値」に入る様
調節するのが今やれるせいぜいの対策かも知れない。

勿論この「正常値」が抗癌剤の効果に対して「最適」かどうかも本当は判らない。
しかし殆ど指針が無い現状にあって「当てずっぽう」な戦略はリスクが大きすぎると考える。

もしも許されるなら毎日毎日、全国の病院で回収される膨大な血液データを私は知りたい。
抗癌剤が効く人、効かない人のデータを整理し、癌腫や治療内容、年齢、イオンバランス、
コレステロール、、、等々データを整理すればあるいは「抗癌剤の効果を上げる」ヒントが
見つかるかも知れない。

少なくとも私の場合の1例を見ると「良く効いた時期」と「殆ど効かなかった時期」がある。
これについても情報を整理する必要がある。