病理検査の報告書などでは健常細胞と癌細胞は混在して撮影されている。
また癌細胞自体も一般的には「一様」では無く分化度などの異なる細胞が混在
している。添付図のマンガは素人の私が想像する癌細胞周辺の構造である。

細胞と細胞の隙間には毛細血管なども存在するハズである。結局CTなどで撮影
される腫瘍サイズに対しどの程度の割合を癌細胞が占めるのだろうか?

一般的に言われている以下の仮定、
・「癌細胞1粒の大きさ約10μm」
・「1cmの腫瘍には100万個から1億個の癌細胞が含まれる」
から類推すると、体積換算の癌細胞充填率は大体0.1~10%程度と計算される。

私は扁平上皮癌と診断されている。活性度は高く、充填度も高いと考えるのが
妥当であろう。ここでは約10%と仮定し細胞数vs腫瘍サイズをプロットした。

主治医と私の興味の中心は治療前1~2mm程度の大きさであった「中間的」サイズ
の腫瘍群がどうなったか?である。CT断面で確認されただけでも数十点、原理的
にはその数倍はあったハズである。

cmオーダーの腫瘍の推移から類推すると中間的腫瘍群のサイズは約0.1~0.2mm
に縮小した可能性がある。6コース後には0.1mm以内に入ったかも知れない。
その場合の癌細胞の個数は「約100個」程度と計算される。

腫瘍増大のモデルの1つであるGompertzian仮説に基づくと「腫瘍は指数関数
的に増加するが100個を越えると速度は速まり1億個を越えると再び鈍化する」
との事である。

さらにこのモデルから導かれる抗癌剤投与の一般的な考え方にNorton-Simon
の仮説がある。「腫瘍縮小に伴い治療後のリバウンドが強くなる」という考え方
である。が、この一般論は腫瘍サイズが0.1mmを切る場合には適用できないと
考えるのが自然である。

また近年の研究で癌細胞が免疫撹乱物質を利用し排除を逃れるとの指摘がある。
この機構の詳細は別途検討が必要であるが、癌細胞が集合化し免疫撹乱を相補的
に行うことで「煙幕」としての機能は補強されそうではある。

逆に1つの病巣あたりの癌細胞が10個程度になると各癌細胞は周囲の体内環境
に「独立」にさらされる事になる。詳細な機構は判らないまでも癌細胞にとって
過酷な環境である事は想像できる。

これらの考察と以下の期待から私は治療目標を50μmに再設定し直した。
・「成長速度の遅いサイズ域まで追い込む事で再発までの時間を稼ぐ」
・「1病巣あたり10個程度になる事で全癌細胞を直接体内に暴露できる」

可能性があるかもしれない。熟慮の末、主治医に7コース目の実施を申し出た。