TPP協定の批准に影響を与える大統領予備選が収斂しつつあります。5月5日の日経が報道するように、トランプ氏が大統領になれば、(ビル・クリントン大統領が署名したNAFTAの被害を非難し保護貿易を訴えているので)TPP批准はなく、クリントン氏が大統領になれば再交渉になると予想しています。TPP推進派の取り得る行動は、11月選挙後のレームダック議会(来年1月3日まで)に批准し、オバマ大統領が来年1月20日退任するまでに署名する道があります。7月の共和党と民主党の全国大会で誰が大統領候補に指名されるかにかかっています。


「共和党予備選の状況」
5月3日のインディアナ州予備選で、トランプ候補が勝利、代議員獲得数が過半数に近づき、クルーズ候補は撤退を表明しました。

5月3日現在の獲得代議員数(過半数1237人)
トランプ候補 1054人
クルーズ候補  566人(5月3日撤退)
ルビオ候補   173人(撤退済み)
ケーシック候補 153人(5月4日撤退)
残り      445人


ハフィントン・ポスト 5月4日
テッド・クルーズ氏が撤退 トランプ氏の指名獲得が確実に【アメリカ大統領選】
http://www.huffingtonpost.jp/2016/05/03/ted-cruz-withdraw_n_9834344.html
ニューヨーク・タイムズ・予備選獲得代議員数詳細
http://www.nytimes.com/interactive/2016/us/elections/primary-calendar-and-results.html?_r=0


先週、クルーズ候補は残りの代議員を全て獲得したとしても過半数1237人に届かないと分かっているにもかかわらず、3日のインディアナ州に挑戦しました。その意図は、トランプ候補の過半数獲得を阻止し、7月の党大会で代議員の自由投票に持ち込むことでした。しかし、4月27日、ベイナー前下院議長がスタンフォード大で、クルーズ候補には絶対投票しないと二つも卑語を使って非難をしました。共和党主流の重鎮の発言は重く、クルーズ候補は共和党の指名を受けられないことが確定したように思います。そのような状況下で勝者総取りのインディアナ州の代議員57人をトランプ候補に取られたことが撤退表明を促したものと思います。


ベイナー前下院議長発言
「人の姿をした悪魔」と呼ばれる共和党クルーズ候補
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12155855339.html

そして、4日、クルーズ候補に梯子(トランプ過半数阻止)を外されたケーシック候補も撤退を表明しました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN05H04_V00C16A5000000/


「共和党の混迷」
トランプ候補は、昨年大統領選に出馬するために共和党に入党しました。それまでは、無党派でクリントン家とも付き合いがあったと報じられています。この一匹狼が、白人低所得層を掴み、獲得代議員数を増やしたと言われています。クルーズ候補やルビオ候補は、大富豪で極右のコーク兄弟(二人の合計資産800億ドル、トランプ氏は100億ドル)に支援されたティーパーティー派であり、コーク兄弟から資金援助を受けていました。このグループは下院でHFC(下院自由主義議連)40名を構成し、ことごとくベイナー前下院議長に反旗を翻し、財政問題や予算案などの重要法案成立を阻み、何回も政府閉鎖に追い込みました。さすがに、ベイナー前議長も嫌気をさして昨年10月末議長と議員を辞職しました。そのような経緯があるので、ベイナー氏から汚い言葉が出るのです。


共和党主流の穏健派に属しているのは、ケーシック・オハイオ州知事ですが、知名度も低く人気もなく参戦も遅れたため、票が伸びませんでした。


共和党主流派は、共和党の希望の星ライアン下院議長擁立を希望しているのですが、ライアン氏が拒否しています。しかし、7月の党大会で何が起こるか分かりません。従来からの共和党員にとって、今年の大統領選は悪夢であり、一人トランプ候補が残ったことで、絶望感を増しています。


7月に開催される共和党全国大会でトランプ氏が大統領候補に指名されることは確実ではありません。下記のジェフレス牧師の発言と毎日の記事は、共和党内にトランプ支持への苦悩と混乱があることを示唆しています。現在獲得している代議員がトランプ候補に投票しない選択があるからです。そしてトランプ候補は共和党を離脱し独立系で大統領本選に挑む可能性もあります。以下、いくつかの報道を紹介します。


ジェフレス牧師発言
トランプ氏の支援者である第一バプテスト・ダラス教会のロバート・ジェフレス牧師は、3日「共和党がトランプ氏を指名しなければ、大規模なボイコットが起こる」と発言。
https://twitter.com/veganvecoh/status/727246314082193408


毎日 2016年5月5日
米大統領選
共和党内、団結遠く 「反トランプ」重い代償
 【ニューヨーク國枝すみれ、ワシントン西田進一郎】米大統領選で共和党候補指名を確実にした実業家ドナルド・トランプ氏(69)は3日、「共和党の政治家たちが次々と電話をかけてきて、『トランプ電車』に乗りたいと言ってくる」と胸を張った。だが、これまでの指名レースで中傷や個人攻撃が相次ぎ、党内は深く分断されたままだ。11月の本選に向け、一致団結するのは容易ではない。


 中西部インディアナ州予備選の結果が判明する直前の3日午前、共和党候補者同士の中傷合戦は極限に達した。


 トランプ氏は、ライバルのテッド・クルーズ上院議員(45)を蹴落とすため、クルーズ氏の父親がケネディ元大統領暗殺に関連していると報じたタブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」を紹介。これに激怒したクルーズ氏は、トランプ氏を「病的なうそつき」で「道徳観念がない男」と酷評した。


 2008年大統領選で共和党指名候補ジョン・マケイン上院議員(79)を支えた側近のマーク・ソルター氏はツイッターで、「共和党はナショナル・エンクワイアラーが正しいと思っている男を指名しようとしている」と嘆いた。さらに「私は彼女の味方だ」と、民主党候補指名が濃厚なヒラリー・クリントン前国務長官(68)を本選で支持する意思を表明した。


 また、トランプ氏に「低エネルギー」と侮辱され、当初は党主流派の有力候補と目されながらレースから撤退した元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏(63)も4月下旬のCNNのインタビューで、「トランプ氏が民主党候補を打ち負かせるとは思えない」と指摘。トランプ氏が正式に指名された場合は支持するかとの質問にも、「そうならないことを希望する」と語り、支持を約束しなかった。


 「うそつきテッド」「ちびのマルコ(・ルビオ上院議員)」。他の候補を口汚く攻撃し続けたトランプ氏に拒否感を覚える共和党員も多く、ツイッターで「共和党から無所属に登録を変えた」と報告するケースも出ている。反トランプ候補に投票した共和党支持者の半分が「トランプ氏が指名された場合は本選で支持しない」と回答した調査もある。民主党にくら替えしないまでも、投票に行かない可能性もあり、共和党は厳しい局面に立たされる。


「道は閉ざされた」 クルーズ氏が敗北宣言

 「私は勝利への道がある限り、戦い続けると言ってきた。今夜、その道は閉ざされたようだ」。共和党のインディアナ州予備選で敗北したテッド・クルーズ上院議員は3日、州都インディアナポリスの集会場でレース撤退を宣言。ドナルド・トランプ氏への支持を呼びかけることもなく、激しい指名レースの傷痕を浮き彫りにした。


 クルーズ氏は南部テキサス州選出だが、インディアナ州は支持母体のキリスト教福音派が強い。指名争いで2位につけるクルーズ氏は正念場とみて、大量の人員と資金を投入した。3位のジョン・ケーシック・オハイオ州知事(63)陣営と選挙協力して「反トランプ票」を一本化する対抗策も講じた。


 これに先立ち、先月26日の東部5州予備選で惨敗した直後には、副大統領候補に元ヒューレット・パッカード最高経営責任者(CEO)のカーリー・フィオリーナ氏(61)を選ぶと発表。指名獲得前に副大統領候補を起用する異例の策で、追い上げを図っていた。


 それでもトランプ氏の勢いを止めることはできなかった。「我々は力を尽くした。だが、有権者は別の道を選択した。長い目で見た米国の将来に大きな希望をかけ、選挙戦を撤退する」。クルーズ氏が敗北を認めると、支持者からは落胆の声があがった。

 昨年3月、有力候補の中で最も早く出馬表明したクルーズ氏。無念さを胸に、指名争いの舞台から姿を消した。【ニューヨーク田中義郎】
http://mainichi.jp/articles/20160505/k00/00e/030/101000c


より詳細な共和党員の動向について、Yoko's Blogさんが紹介しています。

クルーズ及びケイシックの辞退は何を示唆?(5月4日)
(一部抽出)
「クルーズは4月27日ランニング.メイト(カーリー・フィオリーナ氏)を公表したばかりであるが、結局指名のチャンスが閉ざされた事を悟ったようである。ローラー.コースターが急下降する様に連続的な敗北が続き、昨夜のインディアナ州の予備選結果は決定的な要因になった。クルーズの辞退は衝撃的であったようだ。彼の支持者はクルーズが辞退宣言をした瞬間「ノー」と叫び、泣きながら記者のインタビューに応じた女性もいた。トランプが推定的な指名者となった今日、彼等の投票登録カードをライターで燃やしている幾つかの写真がソーシャル.メディアに紹介された。重要な登録カードを破壊することは総選挙に参加しないことを意味している。」

「他多数の共和党メディア関係者、共和党政治家、その他外部の共和党政治関係者もツイートし、トランプが指名を受けた場合、① 共和党を離脱する、② 11月には総選挙の投票に参加せず自宅にいる、③ 共和党には投票しない、④ 共和党の登録を解除する、⑤ 民主党を援助する、⑥ クリントンに投票することを考慮しているとのいずれかを表明している。」
https://shimamyuko.wordpress.com/2016/05/04/%e3%82%af%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%82%ba%e5%8f%8a%e3%81%b3%e3%82%b1%e3%82%a4%e3%82%b7%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%ae%e8%be%9e%e9%80%80%e3%81%af%e4%bd%95%e3%82%92%e7%a4%ba%e5%94%86%ef%bc%9f/


トランプとの連携に関して共和党の態度は分裂(5月5日)
(一部抽出)
「ザッセはフェイスブックに公開文書 を投稿し、健全な候補者を選択することに失敗したと述べ、トランプもヒラリー.クリントンも正直なリーダーではない為「ひどい選択」であると批判した。」

「他の新たな候補者を求めているザッセのような共和党、トランプを後援しないが、指名を受け入れると述べている議員、トランプと共に団結することを強調する3つのタイプのグループに分裂している現状である。」(注;ネブラスカ出身の共和党上院議員ベン.ザッセ)

https://shimamyuko.wordpress.com/2016/05/05/%e3%83%88%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%97%e3%81%a8%e3%81%ae%e9%80%a3%e5%b8%af%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%97%e3%81%a6%e5%85%b1%e5%92%8c%e5%85%9a%e3%81%ae%e6%85%8b%e5%ba%a6%e3%81%af%e5%88%86%e8%a3%82/


「民主党の事情」
5月3日のインディアナ州予備選までの獲得代議員数(過半数2383人)は、クリントン候補2223人、サンダース候補1450人とほぼクリントン候補が過半数をとることが見えて来ました。しかし、クリントン候補が7月の全国党大会で指名されるかは、国務長官時代使用したメールサーバーの捜査結果が大きな影響を与えることになります。


ヒラリー・クリントン候補の国務長官時代の私的メールサーバー使用についてFBIの捜査が行われていることを紹介しましたが、5月4日現在捜査は続行中で、ヒラリー・クリントン氏への事情聴取は行われていないと報道されています。


4月30日投稿・クリントン・メールサーバーのFBI捜査終盤に
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12155623835.html


FBIの捜査とは別に、5月4日、ワシントンDCの連邦裁判所が、保守教育財団のJudicial Watch が情報公開法(FOIA)に基づき求めた行政官6人の宣誓証言を許可し、6月末に終了する予定と報道されました。FBIの捜査も7月の民主党全国大会前には結果が報告されるという見解もあります。


The Hill 5月4日
Federal judge opens the door to Clinton deposition in email case
連邦裁判所はクリントン氏のメール問題で宣誓証言の機会を開いた

(要旨)
ワシントンDC連邦地裁のサリヴァン判事は、保守教育財団のJudicial Watch が情報公開法(FOIA)に基づき求めた行政官の宣誓証言を許可した。
対象は元を含む国務省職員6名。
ヒューマ・アベディン女史(ヒラリー側近)、シェリル・ミルズ前主席補佐官、パトリック・ケネディ運営担当国務次官、ステファン・マル前事務局長、クリントンサーバーを設定したライアン・パグリアーノ技術担当を含む。ヒラリー・クリントン氏は含まれていない。6月までの予定。
FBIの捜査とは別で、クリントン氏はFBIからの事情聴取の要請は受けていないと語っている。
http://thehill.com/policy/national-security/278702-judge-leaves-open-door-for-clinton-deposition-in-email-probe

The Hill 5月3日
Clinton: FBI hasn't contacted me for email interview
クリントン氏:FBIは電子メールに関する事情聴取の要請はない

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/278531-clinton-fbi-hasnt-contacted-me-over-email-probe


「大統領選とTPP協定批准問題」

米大統領予備選の結果が見えてきたところで、オバマ政権や8人の元国防長官から議会へのTPP批准への働きかけが、活発になってきました。日経(5月5日)は、トランプ候補とクリントン候補の当選を前提として、次期大統領の行動と議会の対応を想定していますが、11月8日の選挙後から2107年1月3日までのレームダック期の現議会で批准、2017年1月20日までの任期のオバマ大統領による実施法(批准書)署名・成立を求める動きがあります。
前回「元国防長官8人がTPP批准を議会指導部に誓願」で紹介しました8人の元国防長官の議会指導部へのTPP批准誓願の書簡を、オバマ政権が引用し、声明を出しています。また、オバマ大統領はワシントン・ポストに主張を寄稿しています。


日経 2016年5月5日(紙面)
政策論争「内向き」に
「経済」 
トランプ氏、法人税を大幅引き下げ
クリントン氏、富裕層課税重く
TPP批准、逆風必至
 【ワシントン=河浪武史】米大統領選の政策論争は、オバマ政権を踏襲して現実路線を進む民主党のヒラリー・クリントン氏と、共和党のドナルド・トランプ氏の過激路線が真っ向からぶつかり合う。「トランプ大統領」が否定できなくなったことで、日本が重視する環太平洋経済連携協定(TPP)や日米安保体制への影響を懸念する声が強まってきた。


 「困った。TPPはクリントン陣営で再交渉論すらささやかれている」。大型連休を使って訪米し、クリントン氏の側近と会談した日本の外交関係者は苦渋の表情だ。接戦になれば論争は内向きになり、TPPに逆風となる。


 日米など12ヶ国で大筋合意したTPPは、旗振り役の米国の議会承認にメドがたたない。アジア重視の外交路線をとってきたクリントン氏は、逆にアジア各国との競争で疲弊する中西部工業地帯での選挙戦に苦戦。産業保護のため「TPPには賛成できない」と反対派に転じた。


 クリントン氏は「TPPの原産地規則は日本の自動車産業などに有利に設計されすぎている」と異論を唱え、協定見直しも視野に入れる。ただ、日本など11ヶ国は「再交渉は受け入れられない」と抵抗しており、TPP参加国に再び亀裂が入りかねない。


 トランプ氏は1980年代から一貫して保護貿易主義を掲げており、TPPも「ばかげた協定だ」と一蹴した。同氏が党候補指名を確実にしたことで、クリントン氏との貿易論争は激しくなりそうだ。オバマ政権は年内の議会承認を求めているが、審議入りは11月の大統領選後まで遅れるとの見方が有力だ。


 経済格差問題や課税逃れ問題で大きな争点となる税財政改革は、両者の主張が鋭く対立する。トランプ氏は35%と高止まりする連邦法人税率を15%まで一気に引き下げ、米企業の海外移転を防ぐと訴える。個人所得税も控除額w引き上げて低中所得層の減税につなげる考えだ。


 ただ、減税構想は10年間で10兆ドル(約1100兆円)を超えると試算され、大型税制改革とされた2001年の「ブッシュ減税」の9倍もの規模に相当する。本選に向け歳出削減などの実効果が厳しく問われる。


 クリントン氏は年収500万ドル超の高額所得者に付加税を課すなど、富裕層への課税強化が柱だ。節税目的の企業の海外移転には「出国税を課す」と強気な姿勢を崩さない。
Web版
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO01956430V00C16A5PE8000/


ホワイトハウスの元国防長官書簡などの引用ブログ

5月4日Ben Rhodes補佐官の投稿ブログ
Why President Obama’s Trade Deal Matters to U.S. National Security

引用(リンク)記事
オバマ大統領のワシントン・ポスト投稿記事(注1)
CSISのジョン・ハムレ会長
ダニエル・クリストマン退役中将
ヘーゲル元国防長官を含む8人の元国防長官(注2)
ジョン・ケリー国務長官
アッシュ・カーター国防長官
https://www.whitehouse.gov/blog/2016/05/04/why-president-obamas-trade-deal-matters-us-national-security


(注1)オバマ大統領のワシントン・ポスト投稿記事(5月2日)
President Obama: The TPP would let America, not China, lead the way on global trade
https://www.washingtonpost.com/opinions/president-obama-the-tpp-would-let-america-not-china-lead-the-way-on-global-trade/2016/05/02/680540e4-0fd0-11e6-93ae-50921721165d_story.html?tid=sm_tw


ロイター簡約記事(5月3日)
中国主導の貿易枠組みに警戒感、TPP議会承認求める=オバマ氏
[ワシントン 2日 ロイター] - オバマ米大統領は2日、中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に警戒感を表明、連邦議会に環太平洋連携協定(TPP)を直ちに承認するよう求めた。
ワシントン・ポストのウェブサイトに、寄稿が掲載された。オバマ氏は寄稿で「われわれの犠牲のもと、米国の雇用や企業、財を危険にさらす形で、中国が世界で最も急成長を遂げる市場の一部を分割する貿易合意について交渉している」と述べた。
RCEPについてさらに、「政府の助成を受けたり、国が保有したりする企業間の不公正な競争を妨げるものではない。自由で開かれたインターネットも保護されない」と指摘、知的財産や労働基準、環境保護の観点が欠落していると批判した。
一方でTPPで、アジアとの貿易を米国が主導権をとることが可能になるとの認識を表明、議会指導者らと緊密に連携していると説明。「(議会承認を)長く待てば待つほど、TPP(法案の議会)通過は困難さを増すだろう」と語った。
http://jp.reuters.com/article/obama-china-tpp-idJPKCN0XT24O


(注2)5月3日投稿「元国防長官8人がTPP批准を議会指導部に誓願」
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12156410190.html


「さいごに」

日本の報道は、トランプ氏とクリントン氏が指名される前提として記事を書いていますが、7月の両党の全国大会で誰が指名されるかまだ予想できません。共和党の混迷の行方、クリントン・メールサーバーの問題がまだ見えていないからです。

もし、トランプ氏が指名され、11月8日の本選挙で勝つようなことがあれば、TPP協定について議会は早い処理を試みるはずです。クリントン氏が勝つような場合は、共和党指導部が望むバイオ製薬データ保護期間、タバコ・カーブアウト(規制のISDS対象除外)、ルー財務長官が望むサーバーなどのローカライゼイション禁止条項修正、そして、民主党指導部が望む自動車原産地規則の原産地率引き上げ修正、ISDS条項のルール修正などが、取引条件となり、TPP再交渉と批准を次期政権と次期議会で行うことが考えられます。
(サンダース候補が民主党大会で選ばれる可能性は低いのですが、もし選ばれたらトランプ候補の一匹狼の立場と同じになります。)


大統領選挙と同時に行われる下院議員全員と上院議員1/3の改選がこれから注目されます。特に、ティーパーティー派のクルーズ上院議員が支持されなかったことが、各選挙区のティーパーティー派の候補の支持にどのように影響を与えるか興味のあるところです。民主党上院のハリー・リード院内総務は、昨年春早々と今年の選挙に出馬せず引退を発表し、コーク兄弟の資金の影響力をそらして、民主党議員当選拡大、特に上院は多数派になる戦略を立てています。