活動家や韓国政府が「慰安婦と自称する韓国の方が個人の請求権を日本政府に請求できるのか」という問題を提起しています。しかし、日韓の間には賠償問題も補償問題もないことを「日韓基本条約」が示しています。


簡単に経緯をまとめます。

1.朝鮮は1910年より日本国になり、大東亜戦争で連合国と戦った仲間である。(朴正煕元大統領は、帝国陸軍士官学校出、満州軍第8師団中尉として終戦を迎える。朝鮮戦争時、韓国軍の指揮官は元日本軍人が多くいた。)
2.従って、敗戦により、日本も朝鮮も敗戦国の扱いになった。
3.GHQの戦後処理の政策として、朝鮮半島をソ連と北緯38度線を境に分割統治を行い、アメリカにいた李承晩を朝鮮半島に帰還させ、1948年大韓民国を建国させる。
4.1951年サンフランシスコ平和条約の署名を求めるが、連合国より拒否される。
5.1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争では、李承晩政権は敗退を重ね、米軍(国連軍)に指揮権を渡し、1953年7月27日、38度線で休戦になる。
6.李承晩は極端な反日政策をとり、李承晩ライン設定など日本人を迫害する。
7.李承晩はその後独裁政権を維持し、政敵をつぶして行くが、不正選挙糾弾のデモが全国に広まり1960年4月失脚、5月米国に亡命。
8.その後、クーデターで軍事政権を樹立した朴正煕大統領と佐藤栄作首相の間で、1965年日韓基本条約が締結される。


その内容は
(1)一つの国が二つ(北を入れると三つ)に分かれるときの、双方の国民が他方に残した財産権の精算問題であり、最終的にチャラにした。
(2)この時の交渉において、賠償問題として取り上げられたのは、李ラインによる日本漁民の被害補償問題であったが、これも請求を放棄した。
(3)韓国の経済発展のため、無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドルの供与及び融資を行った。(賠償金でも補償金でもない)
(4)GHQの帰還事業不徹底や朝鮮半島の李政権の独裁と朝鮮戦争から逃れた人々が日本に居残り、いわゆる在日朝鮮人の法的保護を規定した。


 1965年の日韓基本条約では、それぞれの国民への財産返還は、その国が行うべきとされている。従って、韓国政府が朝鮮人慰安婦の財産を返還すべき問題となるが、公式記録では「慰安婦」の言葉も現れない。しかし、敗戦、GHQの朝鮮における日本財産の没収(軍令第33号)、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の建国、朝鮮戦争という混乱により、財産・証拠が散逸、また日韓基本条約の内容を韓国国民に隠すなど、財産請求の機会が失われた。


政府の無償3億ドル、有償2億ドルの資金提供と返済を下表に示す。

韓国には、1965年日韓基本条約経済協力以降、無償約19億ドル供与、有償6,455億円を貸付け、2009年に返済が完了し、15.7億ドル(1727億円、110円/$として)の回収益になった。
(ネットで流布しているデータの多くは、回収(返済)を含んでいない。)




注1 ODA白書の「政府貸付」の記載が、2003年までは(貸付額-回収額)の表記であり、それぞれは不明

注2 日韓基本条約経済協力の実施状況 (1975年12月17日終了)
東大田中研
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPKR/19751216.O1J.html


「無償3億ドル」
 基本条約以前の1961年4月21日確認の日本の債権約4,573万ドルを相殺し、2億5427万ドル(863億円)を供与


下記の実績検索で韓国の全期間の援助のデータが得られる。
1969年~75年の無償の合計が2億5427万ドルにならない。
その差額30.26百万ドルを1968年に記載。
http://www3.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/index.php


「有償2億ドル」
 2億ドルを10年に渡り、原則均等の2千ドルを貸付け、1975年11月26全貸付終了。金利3.5%、7年据え置きを含め20年以内に返済。


「その他経済協力」
環日本海経済研究所 ERINA REPORT Vol. 42(8, 9頁)
 日韓基本条約の2億ドル以外に、下記の経済協力があった。
・工業高校設立資金 無償10億8700万円(391万ドル)
・公共円借款(1970~75年)884億円(3.45億ドル)
・食料支援 無償7432トン(3億9600万円)、有償70万トン(360億円)、63.3万トン(現物償還)
http://www.erina.or.jp/wp-content/uploads/2001/01/pp4210_tssc.pdf

注3 外務省ODA白書より集計
1997年~2014年 ODA白書,参考資料集,年次報告
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo.html
1996年以前 国別援助実績
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/index.html
及び出版物


注4 援助累計について
外務省;政府開発援助(ODA)国別データブック 2013
韓国 東アジア地域4頁
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/13_databook/pdfs/01-00.pdf
中国 中国39頁
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/13_databook/pdfs/01-04.pdf