秦先生の「慰安婦と戦場の性」に、国連人権委員会のクマラスワミ女史との面談記録があり、慰安婦の収入についての説明があります。


268頁(クマラスワミ女史との面談)

 私が強調したのは、(1)慰安婦の「強制連行」について日本側で唯一の証人とされる吉田清治は「職業的詐話師」である、(2)暴力で連行されたと申し立てた証言で、客観的裏付けがとれたものは一例もない、(3)慰安婦の雇用契約関係は日本軍との間にではなく、業者(慰安所の経営者)との間で結ばれていた、などの論点であった。
 そして、(3)の実情は、1994年ビルマ戦線で捕虜となった日本人業者夫婦と20人の朝鮮人慰安婦を尋問して、米軍情報部が作成した報告書(米国立公文書館所蔵)が最適と思うと延べ、米軍報告書のコピーを渡しておいた。ところが、クマラスワミ報告書の第40項は、(3)の論点について私の論旨を次のように、正反対に歪め紹介している。


 歴史家で千葉大学の秦郁彦博士は ---- 大多数の慰安婦は日本陸軍と契約を交わしており、平均的な兵士の月給(15~20円)の110倍もの収入(1000~2000円)を得ていたと信じている、と述べた。


 正反対と言っても、水掛け論になりそうな話だが、幸い私の手元には彼女に渡した英文レジメが残っていた。それには前記の米軍尋問記録によるとして。「女性達はブローカー(及び経営者)が300~1000円の前借金を親に払って、その債務を慰安所での収入で返還している。経営者との収入配分比率は40~60%、女性たちの稼ぎは月に1000~2000円、兵士の月給は15~25円」と記してある。
(以上、慰安婦と戦場の性)


 慰安婦は月に1000~2000円も稼ぐと書かれていますが、「稼ぎ」というのは「売上」と理解するのが正しく、388、389頁の表12-8の一覧表に次のように記載されていることからも裏付けられます。


「表12-8」
6.米軍の尋問報告書
場所;北ビルマ、時期;1944年8月、前借金;300~1000円、ショート料金;1.5-3-5円、女の取り分;50~60%、女の収入;150~750円/月、外出規定;買物可、その他;接客拒否・年季明け帰国・兵士の結婚申込み多し、出所;吉見資料集453頁


 以上の各説から、酌婦(従業婦)の月収は、50円~数百円の範囲であろうと推察します。場所(客数)や待遇によって稼ぎの差があるのだろうと思います。


「史実を世界に発信する会」の茂木弘道氏も、月収300~1000円と各種資料の金額を紹介しています。
http://hassin.org/01/wp-content/uploads/Guide.pdf
・新聞広告(京城日報、毎日新報等):300円/月
・US Office of War Information:750円/月
・文玉珠(郵便貯金台帳残高):1000円/月