解散総選挙の根拠になった二期連続のGDPマイナスは、12月8日大幅に改定され、プラスになる可能性がある。

 12月1日、法人企業統計が財務省より発表された。その数値により、民間シンクタンクは、12月8日にGDP7~9月期の第2次速報値が上方修正されると予想している。日本経済新聞によれば、設備投資が上振れするので速報値が上方修正になると予想している。


財務省の調査結果(財務総合政策研究所)
http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/index.htm
財務省の報道発表
http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h26.7-9.pdf


全産業の推移(四半期の金額)
       1月~3月期    4~6月期    7~9月期
売上高  345兆3293億円  315兆886億円  328兆578億円
設備投資 12兆2307億円   8兆5617億円   9兆4383億円
在庫投資 △5兆7958億円   5兆688億円   1兆6305億円
在庫率   7.3%         8.9%       8.7%

(注)
上記設備投資と在庫投資は金融、保険を除き、前期からの増加額
在庫率=棚卸資産(期末)/(売上高 x 4)x 100


 次に、11月17日発表のGDP第一次速報値では、最もマイナスに寄与した民間在庫品(製品、仕掛、原材料、流通)増加が次のように記載されている。定義の上で、在庫投資は在庫増加分であるから、同じ範疇の数字と考えられる。どのように法人企業統計からGDP速報値に変換していくか分からないが、少なくとも、12月1日発表の在庫投資は、前期に比べて1兆6305億円の増加である。これを11月17日発表のGDP速報値では、約3兆円のマイナスとしている。


              1月~3月期    4~6月期    7~9月期
民間在庫品増加  △ 5兆5906億円  △ 222億円    △ 2兆9701億円


内閣府発表資料(11月17日)7~9月期GDP速報値
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2014/qe143/pdf/gaiyou1431.pdf
内閣府
GDP暫定値及び速報値の推計方法の概要(各項目の定義)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/siryou/1999/pdf/2.pdf#page=28


 日経の報道では、シンクタンク13社のうち、ゼロからプラス成長が3社あるが、在庫品増加について、明確な分析を避けているような表現である。投票日前の8日に、マイナス成長からプラス成長に速報値が変わるとしたら、安倍首相をはじめ政治家は、どのように説明するのだろうか。



2014年12月2日 日本経済新聞
GDP改定値 上方修正の見方
7~9月 設備投資上振れで

 8日に内閣府が発表する7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は上方修正との見方が広がっている。民間調査機関13社が出した最新予測の平均値は前期比0.1%減、年率換算で0.5%減。速報値からそれぞれ0.3ポイント、1.1ポイント改善する。設備投資が速報値から上振れするとみられるためだ。ただ、下方修正との見方もあり、見方は分かれている。
 1日に財務省が発表した法人企業統計を受けて、各社はそれぞれGDP改定値を予測した。改定値では法人企業統計でまとまった設備投資や民間在庫の数値を計算に使う。GDP速報値は前期比0.4%減、年率で1.6%減で、2四半期続けてのマイナスだった。改定でどれだけ数値が変わるかに市場関係者は注目している。
 民間予想では前期比で増えるか横ばいになると予測したのが3社、減少幅が縮まるとしたのが9社あった。上方修正とした各社の多くがポイントに挙げるのが法人企業統計で分かった企業の設備投資の伸びだ。
 7~9月期の設備投資額は前年同期比で5.5%増加。4~6月の3.0%から伸び率が拡大した。季節要因を除いた前期比(ソフトウエア除く)も3.1%増と持ち直しをうかがわせている。GDPの速報値では設備投資は前期比0.2%減にとどまったものの、民間13社の予測平均は0.8%増に回復する見通しだ。
 一方、大和証券は改定値は下方修正されるとみる。「在庫投資のマイナス寄与が速報値から拡大する」とみるためだ。7~9月期は在庫の増加ペースが鈍っており、速報値ではGDPを0.6ポイント押し下げた在庫品増加が改定値では0.7ポイントの押し下げになるとみる。
 上方修正との見方が多いものの、予想は年率で0.2%増から1.7%減と幅がある。
 改定値の発表に合わせて2013年度の確報も公表される。1~3月までの四半期の数値も大きく見直されるため「7~9月期の改定値の予測は難易度が高い」(SMBC日興證券)という事情のようだ。
 速報値段階までのGDPは2四半期連続のマイナスになっているものの、法人企業統計では4月の消費税増税後の落ち込みから企業活動が持ち直していることもうかがわせた。7~9月期の企業の経常利益は前年同月比7.6%増え、4~6月期の4.6%増から増益率が高まった。


民間予測 「難易度高い」との声も
7~9月期実質GDPは上方修正との見方が多い
(民間13社の改定値の予想、%、△はマイナス)
                 前期比   年率
速報値              △0.4   △1.6
野村證券              0.1    0.2
SMBC日興證券           0.0    0.1
バークレイズ証券          0.0    0.0
三菱UFJモルガン・スタンレー   △0.1   △0.2
ニッセイ基礎研究所        △0.1   △0.3
BNPパリバ証券          △0.1   △0.4
農林中金総合研究所        △0.1   △0.4
第一生命経済研究所        △0.1   △0.5
日本経済研究センター       △0.1   △0.5
三菱総合研究所          △0.2   △0.7
シティグループ証券        △0.2   △0.8
日本総合研究所          △0.3   △1.0
大和総研             △0.4   △1.7
  平均             △0.1   △0.5

Web版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H5T_R01C14A2EE8000/