市民団体やマスコミの米韓FTA2周年に関する記事を紹介する。なお、筆者はこれらの記事の数字の点検を行っていません。


パブリックシチズン分析(概要)
 USTRは暗い米韓FTAの現実を隠すためデータの切り貼りと歪曲を使う。
協定発効後、韓国への商品輸出は月平均11%下落、貿易赤字は月平均増加した。
http://citizen.typepad.com/eyesontrade/2014/03/administration-uses-data-omissions-and-distortions-to-try-to-hide-dismal-korea-fta-realities.html


パブリックシチズンの米韓FTA2周年の分析(概要)
 米韓FTA発効前と発効後22ヶ月をみると、米国から韓国への商品輸出は、月平均11%の下落、そのうち農産物は月平均41%下落、自動車貿易赤字は月平均19%増
http://citizen.typepad.com/eyesontrade/2014/03/on-2nd-anniversary-of-korea-fta-us-exports-down-imports-up-and-trade-deficit-balloons-fueling-congre.html


日本経済新聞 2014/3/17
車部品など対米輸出拡大
米韓FTA発効2年 韓国、農業に打撃も 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1405O_W4A310C1FF8000/

 【ソウル=加藤宏一】米韓自由貿易協定(FTA)が15日、発効から2年を迎えた。関税の撤廃や引き下げ対象となる恩恵品目の対米輸出額はこの間、発効前2年間の合計額の16%増。対米輸出全体の10%増を上回った。韓国政府はFTAの成果を強調するが、一方で米国から自動車や農産物などの輸入も拡大。環太平洋経済連携協定(TPP)参加を巡り、米国の規制緩和の要求もあり、自由貿易推進に労働組合などの反発も強まっている。
 韓国の産業通商資源省によると、米韓FTAが発行した2012年3月15日~14年3月14日の対米輸出の合計額は1210億ドル(約12兆商品2千億円となり、発行前2年間に比べて10%増。このうち、恩恵品目は16%増の243億ドルと大きく伸びている。
 「輸出入の増加に加えて対韓投資も拡大し、経済の活性化も寄与している」(同省)。輸出の伸びは特に自動車部品や石油製品、家電製品などが大きい。米韓FTAでは品目ベースで全体の約8割で関税が即時撤廃。2.5%の自動車部品も大部分が撤廃された。
 韓国貿易協会の調査によると、韓国の恩恵品目の対米輸出が12~13年に年平均8%増える中、同一品目で日本は3.2%増、中国が5.6%増となり、韓国の先行が目立ったという。また。企業と国家の紛争解決(ISDS)条項が整備されたこともあり、同期間の米国の対韓直接投資(申告額ベース)は前2年間と比べて66%増の72億ドルと大きく伸びた。
 一方で輸入増から国内産業の競争が激化している品目もある。関税が8%から4%に下がった米国製自動車の輸入は12~13年の値率平均で49%の大幅増。日本メーカーが韓国向け輸出の一部を日本製から米国工場からの供給に切り替えた影響が出ている。また、チェリーやアーモンド、ワインなどの農産物や加工食品も3~4割増。米韓FTAは10年で98%超の関税が撤廃され、農畜産物が打撃を受けるとの懸念も強まっている。
 韓国政府の13年6月発表の資料によると、自国とFTAの締結国・地域の国内総生産(GDP)は、世界全体の56%を占めており、今後3年で70%に高める計画を打ち出している。昨年11月にはTPP交渉の参加に向けた協議入りを表明、1月には米国と事前交渉をはじめている。
 米国は韓国のTPP参加に当たり、15年に導入される二酸化炭素排出量の多い車の購入者に付加金を課す新たな環境規制や、1月に導入した国内機関による勇気加工食品の認証制度見直しなどを求めたとされる。だが、こうした要求は不当だとして、進歩系団体の反発も広がる。
 全国民主労働組合総連合は13日の記者会見で、「無差別なFTA推進は国内産業の崩壊をもたらす。副作用はすでに現れている」と批判した。4月下旬に韓国を訪問するオバマ大統領との首脳会談に合わせ、韓国政府がTPP参加の立場を明らかにするとの見方もある中、同労組は同月中旬に1万人規模の大規模な反対集会の開催を計画している。
(以上日経スクラップより)


朝鮮日報3月15日(注、比較する期は3月15日の区切り)

韓米FTA発効2年、対米貿易黒字は大幅増
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/03/15/2014031500596.html

対米輸出10%増の一方で米国車の輸入は2倍に
自動車用部品や化学製品の輸出は好調
心配された農産物分野は逆に対米輸出21%増
牛肉の輸入額は10%減少


 ちょうど2年前の2012年3月15日、韓国と米国の自由貿易協定(FTA)が発効した。その後、韓国製品の対米輸出は急増し、貿易黒字は90億ドル(約9120億円)ほどにまで増加したことが分かった。韓米FTAは韓国経済全体にプラスの効果をもたらしたわけだ。

 産業通商資源部(省に相当)は14日「韓米FTAの発効から2年、対米輸出の増加率は10.3%を記録した。これは同じ期間における韓国全体の輸出増加率(6%)を上回る」と発表した。韓国貿易協会も「米国市場で韓国製品が占める割合は、2011年に2.57%だったが、昨年は2.75%にまで上昇した」と明らかにした。

 品目別では自動車用部品など輸送用機械の輸出が2年で年平均17%増加した。また化学製品(13.1%)や石油製品(10.4%)の増加も目立った。2016年から無関税となる韓国製自動車は、FTAとは関係なく対米輸出が急増している。製品力の向上とブランド価値の上昇が相乗効果をもたらしたからだ。

 一方で米国車の輸入も急増した。FTA発効と同時にそれまで8%だった輸入関税が4%に下がったためだ。ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、クライスラーなど米国メーカーはもちろん、トヨタ、ホンダ、フォルクスワーゲンなど米国に工場を持つ日本やドイツのメーカーも、米国で製造した車を韓国に輸出している。2011年に韓国国内で販売された米国車は1万600台を少し上回る程度で、輸入車販売全体の10%にとどまっていたが、昨年は3万台(19%)以上を記録した。韓国輸入車協会のユン・デソン専務は「2016年に関税が完全になくなれば、輸入車の販売会社は一層マーケティングに力を入れるだろう」と予想した。


農畜産物は輸入が減り対米輸出が増加

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権から李明博(イ・ミョンバク)政権にかけて米国とのFTA交渉が行われた際、市民団体や農業団体などは「牛肉など米国産の農畜産物が大量に輸入され、韓国の農業は壊滅的打撃を受ける」などとして激しく反対していた。ところが実際は米国産の農畜産物輸入はここ2年で20%以上減少し、逆に韓国産の農畜産物輸出は20%以上増加した。

 問題となっていた牛肉輸入額もここ2年で10%ほど減少した。韓国市場における米国産牛肉のシェアは2011年には10.4%だったのが、昨年は7.2%にまで減り、韓国産牛肉のシェアは逆に42.8%から50.2%に上昇した。豚肉や鶏肉など他の米国産肉類の輸入もこの間に半分近くにまで減った。

 韓国産農畜産物の対米輸出の増加も注目されている。農畜産物の輸出額はFTA発効の1年前には4億4000万ドル(約446億円)だったが、FTA発効2年目には5億3000万ドル(約537億円)へと21%ほど増えた。韓国農水産大学のナム・ヤンホ総長は「農業分野の開放は世界的な流れとなっているが、この状況で韓国もFTAをきっかけに農業競争力を高めれば、勝算は十分にある」とコメントした。

チョ・ジェヒ記者