昨日(12月2日)「グローバル資本主義を越えて」シンポジウムに参加。5人の先生方の講演を聴きました。昨日のシンポジウムは、質疑も含めて次のように終了したと理解しています。

 「全体主義に結びつく新自由主義にとりつかれた政治家、官僚、知識人は、自由放任主義など、責任逃れにつながる安易な道を選ぶ、統治能力の劣化である。その思想・理論を変えるにはどうしたらよいのか。外部からの力が必要である。」
「外部の力とは何か。68年前、戦争終結と言う形で全体主義を崩壊させた。今それに変わる方法を見つけなければならない。」
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/bgc/index.html
柴山桂太先生、エマニュエル・トッド先生、中野剛志先生の講演と質疑(動画)
http://www.ustream.tv/recorded/41300779


 先週11月26日、フランシスコ・ローマ法王のミッション・マニフェスト「喜びの福音」が発表された。
まさしく、「外部からの大きな力」(信仰心だから内部からの力かも知れないが)に相当する事例なのだが、講演された先生方や質疑でも、このローマ法王のマニフェストに触れた方はいなかった。(情報が入っていなかった。)


 フランシスコ・ローマ法王は、今年3月に就任。アルゼンチン出身。以下、「喜びの福音」を紹介する。


「ローマ法王の新自由主義経済批判」

 フランシスコ・ローマ法王は11月26日、「喜びの福音」224頁を発表した。
そのなかに現在の経済(新自由主義と見られる経済)に対し、痛烈な批判を行い、このグローバル資本主義への戦いを呼びかけた。


ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)報道
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303735804579222932978206104.html
By IAM MOLONEY

 【ローマ】フランシスコ・ローマ法王は26日、8カ月前の就任以来初めての「ミッション・マニフェスト」を発表し、カトリック教会が改めて貧者に的を絞って活動するとともに、グローバル資本主義への攻撃に着手するよう呼び掛けた。

 「Evangelii Gaudium(喜びの福音)」と名付けられたこの文書は、フランシスコ法王がバチカン(ローマ法王庁)の選挙会議「コンクラーベ」で新法王に選出されて以降強調してきた多くのテーマをまとめたものだ。不平等と社会的不公正を糾弾しつつ、カトリック教会に対し聖職者としての使命をさらに深く追求するよう求めている。

 同法王はApostolic Exhortation(使徒的勧告)」として知られる224ページの文書で、異例に露骨な言葉を使いながら市場経済を強く批判した。同法王は「『汝(なんじ)殺すなかれ』という戒律が人間生活の価値を守るための明確な制限を設定しているのとまさに同じように、われわれは今日、排除と不平等の経済に『汝向かうなかれ』と言わなければならない」と述べた。

 そして「このような経済は殺すことになる」とし、現在の経済システムは「その根本において不公正」であると糾弾し、「市場と金融上の投機の絶対的な自立を守る」ものだとした。同法王は、この種のシステムは新しい「専制」を生む可能性があり、それは「自らの法と規則を一方的に容赦なく押しつける」と警告している。

 26日発表の「使徒的勧告」は、フランシスコ法王が全て執筆した最初の主要文書だ。同法王は前任者のベネディクト16世と共同で今年7月の回勅「信仰の光」に署名しているが、これはベネディクト16世が2月に法王を辞任する前におおむね執筆したものだった。

 ワシントンのアメリカ・カトリック大学の神学者チャッド・ペクノルド助教は「ベネディクト16世は国家と市場とを同じように批判していたようにみえるが、フランシスコ法王は、市場には国家よりもはるかに大きな権力があり、人間に対して善と同様に悪をもたらすとの考え方に向かって主導しているようだ」と評した。

 フランシスコ法王は、社会の最も弱い人々、とりわけホームレス、麻薬常習者、難民、移民、そして高齢者に対するケアを促している。

 同法王は文書で、この種の弱者集団に手を差し伸べるにあたって、教会は傷つき、汚れると覚悟しなければならないとし、なぜならそうした教会のメンバーは保護された壁に囲まれた安全な場所(教会)にとどまるのではなく、貧者を支援するために街頭に出るからだと述べた。そして、現代世界の大きな難題として、途方もない所得不平等を生み出している経済システムを挙げ、それは抑圧され疎外された人々を「落伍者」として放置していると批判した。
(以上WSJ記事)


その本文「Evangelii Gaudium(喜びの福音)」(英文)
経済批判は、53章から
http://w2.vatican.va/content/francesco/en/apost_exhortations/documents/papa-francesco_esortazione-ap_20131124_evangelii-gaudium.html
なお、カトリック中央協議会が全文翻訳中。
http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/news/


かなり意訳・省略しているが下記に概要を紹介する。

No to an economy of exclusion
疎外の経済に拒否

53章
「汝殺す無かれ」の言葉を「疎外と不平等の経済」に突き付けたい。
今日、力のある者が力の無い者の上に生きている、競争と適者生存の法則が支配している。
54章
トリクルダウン理論は、事実により証明されていない。

No to the new idolatry of money
新しい金銭偶像崇拝への拒否

55章
現在の金融危機は、深い人間性の危機に起因する事実であることが分かる。
古代の黄金子牛は、お金の偶像崇拝と、本当の人間的目的を欠如する非人間的経済の独裁国家として、新しく冷酷な姿で生き返った。
金融と経済に影響を及ぼしている世界的な危機は、彼らのアンバランスと、とりわけ彼らが人間に対する本当の関心を持っていないことを明らかにした。
56章
指数的に所得を増大させる少数派と、そうでない多数の人々の差は拡大している。
このアンバランスは、市場主義と金融投機の絶対的な自治権を主張するイデオロギーの結果である。
従って、彼らは、公益の管理を任される国家主権を拒絶し、あらゆる形の支配を行う。
新しい専制政治はこのように生まれ、見えなく仮想的であり、その法規を一方的に厳しく押しつける。
57章
金融専門家と政治指導者は、古代の賢人の教えを考えることを奨励する。
「自分の富を貧しい人と共有しないことは、彼らから盗み彼らの生計を奪うことである。我々が持つ物は自分の物ではなく、彼らの物である。」
58章
法王は、誰にでも同じように、金持ちも貧しい者も愛している。金持ちは貧しい者を助けなければならない。
経済と金融が、人間性をいたわる倫理的取り組みに戻ることを勧める。