2週間延長して3月14日にカーク代表がUSTRを退職、後任が決まらず、マランティス氏を代表代行とした。マランティス代表代行が19日の上院公聴会に出席し証言した。
 この後任人事が遅れている理由は、前にも紹介したが、2012年1月にオバマ大統領の発表した「商務省、USTRなどの省庁統合とリストラ計画」が議会の反対にあい頓挫したことが一つの理由。この計画を立案したザイエンツ氏(Zients)は、議会から信頼を得ることができなかった。議会の代理人のUSTRを商務省の一部門とすることに議員は耐えられなかった。そういう意味では、USTRは大統領府の一行政組織ではなく、議会の下にある組織だと言える。
 次に上院財政委員会が問題にしたTPAを持たずにTPP交渉を進めたUSTRの違法性(違憲)。これまでの4年間、カーク前代表はTPA獲得に熱心ではなかった。いわば、夏休みが終わっても宿題に手を付けていない状況である。だからこそ、ボーカス委員長やハッチ議員がTPA獲得への協力を申し出た。

 しかし、ブッシュ政権下で2002年にTPAを獲得した時、民主党議員を説得しかろうじて可決できたが、10ヶ月要した。今、FTAの被害特に雇用減の認識が議員に浸透しているので、FTAならびにTPAに反対する議員が増加したと見られている。(2012年11月選挙)
 10月のAPECまでにTPP合意をしたいとオバマ政権が言っているが、それまでにTPAを獲得できる見通しは全く暗い。その前に、議会工作のできる能力をもったUSTR代表を、オバマ大統領が指名し、上院財政委員会の公聴会で人物確認を行ったあと、採決で承認を決めなければならない。通常、指名から採決まで2週間以上かかる。

 これまで下馬評にあがった候補を見ると適任者が見あたらない。


 ボーカス委員長が言っているようにTPP交渉妥結には、TPA法案可決が前提。可決できなければ、オバマ政権は協定に署名できないし妥結表明が延期される。2011年9月の上院の投票では、可決に60票必要であったが45票で否決されている。あと15人以上賛成派に転向させなければならない。
 今年、TPA獲得ができなければ、USTRさらにはオバマ大統領の責任問題、国際的な信用失墜になる。自由貿易とTPAとを議員一人一人に訴え賛成派を増やせる能力を持った魅力的かつ政治的な人材が求められるが、引き受ける方がいるのだろうか。特にTPAは、上院では可決されない。

 USTRのTPP交渉に最も厳しい異論を持っているワイデン議員が19日の質問でTPAも日本参加についても言及しなかったのは、2011年9月のTPA反対を変えていない可能性がある。その異論と言うのはTPP条文案をUSTRが議員に秘匿していることである。(2012年3月7日公聴会で違憲性を指摘、その後も声明)

 昨年11月の選挙で、上院1/3が改選され民主党が2名増加し、合計で54名(独立2名含む)になった。11月の選挙では、上院下院ともFTA推進を掲げて戦ったのは、ハワイ州での上院選挙の共和党リンゲル州知事だけであった。対抗する福島生まれの女性ヒロノ下院議員は一貫してFTA、TPAに反対であった。ハワイ州の上院選挙は、接戦を予想されていたが、ヒロノ候補が26%の差を付け日系女性として初めて上院議員になった。リンゲル候補はユダヤ系。つまり、上院では、FTA反対派が増えたことを意味する。また、昨年の選挙では、雇用増が主題でオフショアは受け入れられなかった。


 まず、ザイエンツ氏が外れた。
ロイター
http://www.reuters.com/article/2013/03/19/us-obama-cabinet-trade-idUSBRE92I0LZ20130319
USTR代表人事、大統領の指名は、イスラエルから帰った後、来週以降になる。
候補として予想されていた、行政管理予算局(OMB)のザイエンツ氏(Zients)がOMBにとどまると、カーニー報道官が答えた。
ホワイトハウス記者会見(下記、最後の方に、Jeff Zientsの名前があるところ)
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/03/19/press-briefing-press-secretary-jay-carney-3192013


 フローマン国際経済大統領顧問、マランティス代表代行(前上院財政委員会の国際貿易顧問)、サンチェス商務次官(国際問題)、ホッフバーグ輸出入銀行代表などの名前があがった。19日の公聴会では、ハッチ上院議員がマランティス代表代行を賞賛していた。
 オバマ米大統領は12日、「大統領輸出評議会」に出席、業界代表、議員が参加するこの評議会で、フローマン大統領顧問をEUとの交渉の功労者として持ち上げた。
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/03/12/remarks-president-meeting-presidents-export-council
ロイターの記事では、フローマン大統領顧問もオバマ大統領が手放しにくいとの観測もある。


 下院は、共和党が安定的過半数をとっていてTPA法案可決が可能だが、問題は上院。マランティス氏は、元々財政委員会の元で働いていた有能な官僚であったがビデオを見ていた方が「代表の器でない」と漏らしていた。


 今、USTR代表になる方の資質は、あと15人以上の上院議員をくどき味方につける能力であり、ロイターが報道している候補に、そのような能力を持っている方がいるか疑問である。また、TPA獲得ができなければ歴史的汚名をかぶることになるUSTRの最大の危機に引き受ける方がいるのだろうか。名前の挙がっていない方で一人いるのだが。来週の大統領指名を待つ。


最後に、19日の公聴会の情報を正確に流さない、TPAの議論を全く報道しない日本のマスコミは、統制下にあることを、ご理解いただきたい。
日本政府の交渉相手が正式代表ではなく、違法集団であることを、日本人に知られたくはないからだ。


「3月23日誤記訂正と追加情報」

ホッフバーグ輸出入銀行代表→ホッチバーグ輸出入銀行総裁
輸出入銀行総裁続投でUSTR代表人事から外れる。(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpUSpolitics/idJPTYE92L03I20130322
ホワイトハウス
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/03/21/presidential-nominations-sent-senate