作家の中原昌也さんを、先月初めて鑑賞…お会いしました。

『盲導犬クイールの一生』や『二択思考』など約180冊の著作や編集プロデュース作をもつマルチ作家 石黒謙吾さんが一日店長をつとめる(新宿G街)バーで。
「ち○このない○○○はナインチンゲール」とか世にもくだらないことを(私が)言いながら飲んでいた夜でした。

$誰でも作家になれる! コラムニストのうちあけ話1000





中原昌也作品といえば、

▼至上最高の狂気といわれる三島由紀夫賞作
あらゆる場所に花束が…

¥380


▼「これはひどい」と読んだ人が泣いて怒る野間文芸新人賞作
名もなき孤児たちの墓

¥630


中原さんは、どこでもやると評判どおりのボヤキ芸を披露されてましたよ。
「もう電気もガスも止められそう…」「小説なんかしんどいから二度と書きたくない…」。10月の肌寒い深夜、今時小学生も履かないような半ズボン姿で。

一方、セレブリティとしてきちんとジャージ長袖を着用している自分はすっかり温まって「中原くんそんなこと言っちゃだめだー」「やいやい、もっと真面目に小説書け」とポコポコと氏の御頭をはたいてしまいました。すみません 知らない人なのに。



$誰でも作家になれる! コラムニストのうちあけ話1000
↑今月号はとてもおもしろい

こちらに載っている「知的生き方教室 その十五」という中原作を読んでみたら、きましたよ…。


以下、ネタばれあり。


<STORY>

『面白くない文章を書くのにすっかり疲れ』た主人公が街を徘徊しながら思考をダダ漏れさせます。

『言葉は、いくら紡いだところでゴミにしかならない』だの、『ゴミを、そのまま原稿用紙に貼って編集部に出して、それがそのまま活字になれば…』だの。


『覚醒を催すような飲料水のおかげなのか』、ストーリーの中盤で、なぜか冒頭とまったく同じ十数行(思考)がリピートされ、「この人やっぱり頭おかしいんじゃないか」的な軽い不安に、読者を陥れます。

同時に「この小説はおふざけです」的サインになっており、「来たな。さあどこからでもふざけるがいい」という気構えを迫られます。

合い間に貧困芸がマメマメと挟まれ、『貧しさが私の真骨頂と、わかったようなことを云う読者がいれば、そういう奴は早く死んじまえばいい』
おかしくて死にそうです。なんでしょうねこの人は。

さらに、逆ギレ芸的に編集者の無能と出版界の機能不全を語る体で、あるいは書店や読者におもねる体で、さんざん独りシャドウボクシングを繰り返した主人公は、突如『すべらない話を小説で書いてみたい』、『読者を自由自在に爆笑させる物語を書ければ、文芸誌において人気者になって異性からモテ』・・・と転調します。彼の呪詛、もとい意識変革はとどまりません、


「読者の興味を惹きつけるための文章術のコツ」は相手の話に共感することが大事である』。だと。

おや? どこかで似たようなブログタイトルを見たことがある気がする。そういえば2000年代、ブログ大攻勢時代に、こうした共感性だのコツだのモテだのを謳う「文章家」が大量発生しましてね…。

「モテ」ワードによるSEO対策とか「若い頃ほんとうにモテたの?」とか聞かれるのが心底めんどうにならない根性があれば、もっとこの芸風を続けたかったですよ私だって。あれ、いつのまにかi ワナビー文体になったよ。

でも、その手の「コツ」や根性は、さ迷える主人公のような「作家」には非情に有意義でしょうから、これからも揶揄し、イジリ倒し…じゃなかった、勉強に励んでいただきたいものです。


…。主人公は『犬でもネコでも即座に笑えるような判り易さをいつも心がけていれば、「うんうんその気持ちわかるわかる」と共感してもらうのが可能だ』!と、エンターテインメント的な物への うんこ爆弾を繰り出します。

昔、新宿のハイジアで「客が全然笑わねえ」とキレた劇団ひとりが、パンツを脱いでわーわーさけび始めた光景を思い出しました。



いま、安倍首相にもっとも近い作家と言われる百田尚樹氏がNHKの経営委員に就任して、「人事に政権の意向を反映させる」と批難囂々あびていますが、氏の書いた出版業界小説『夢を売る男』の一節にこういうものがありましたっけ↓

「プロの作家の方が滑稽だ。…大半の作家がほとんど読まれもしない小説をせっせと書いている。特に純文学作家は悲惨の一語だ。…プロ野球の最下位争いしているチーム同士の雨の日の消化試合の観客以下の人数にしか読まれていないのに、だ」

こうしたユーモアセンスゼロな表現で、全作家の98,5%の機嫌を損ねたといわれる百田氏ですが、恐らく氏の将来は(いずれ1,5%組から漏れたとしても)安泰でしょうね。


…。主人公は終盤、『このほど秘密保護法案は内閣で閣議決定した』とし、自分の作家活動は新しいフェーズに入ったと言い出します(笑)。

『(特別秘密)を漏らした国家公務員や共犯者への罰則を強めるための法律の必要性は、私は著作を通じて何度も訴えかけてきたつもりだ』

『この法案のおかげで、いままで辛気くさかった日本の文学も活気を取り戻し・・・』


お(・・)い



と、こういう作品でした。そしてタイトルが「オリンピック・ホロコースト」(≧∀≦)

もうね、こんなゴミみたいなことばかり考えている主人公は有罪ですね。さっさとホロコーストに…。ああ、もう入っているのか。

なんたって、オリンピックが来るんだもの、これからは作家もわかりやすい共感をバンバン売り、内外需の強化のために共有、団結につとめなくてはなりません。安倍首相は日本文芸の最高の「オトモダチ」。「ゴミ」はさっさと焼却炉にもっていき、よりよい日本を取り戻さなくてはいけません。大日本帝国万歳。



波



ふと、思いました。メディアやSNSで「秘密保護法ハンターイ」とおっしゃる、ちゃんとした方々と同様、この主人公作家は、作家として とてもまっとうなんじゃないか。



いけない。 つい、 もちあげてしまった。

ゴミですよ。まっとうな皆さんはこんな作品を読んではいけないと思います。


あらゆる場所に花束が…



名もなき孤児たちの墓