(旧mixiより抜粋)
ホーム(レス)キーパー日記№7 こちらの続き

公園や、いわゆる緑道と呼ばれる地域には、この寒空のしたも、たくさんのダンボーラーがいます。
もっと、暖かい所が他にあるのではと"素人"は思いますが、彼らなりに、「変わらない定位置」に居たいのだそうです。

人は、ひとりぼっちの着のみ着でも、自らがホームと名付けた場所にいたいのでしょうか。

さて、「失踪」して3週間弱でしょうか。

ビラでも撒こうかと思っていた頃、テルちゃんは、夕方、ひっそりとやってきたのです。
「ごめんなしゃい…」と泣き濡れて、何を言っているのかよくわかりません。

わたしは安堵で腰が抜けそうでした。この人が路上で亡くなったら、自分のせいのような気がしたので。

テルちゃんは、問わず語りはじめました。

先日、私に強引に背中を押されて3年ぶりに家族と再会できて、すごく嬉しかったそうです。
今の“勤め先”が性にあっていると言ったら、喜んでくれたそうです。

反面、「一族のお荷物」のような立ち位置に、またもプレッシャーを感じたそうです。

そして3年のフリー生活の間に、おじさんや、義弟が亡くなっていて、ガックリしたそうです。

私や、自分の家族にヤイヤイと再生を迫られ、彼女なりにガンバロウと思い、

履歴書の回収や、年金記録の確認をしようと以前の勤め先に電話したのです。

しかし、彼女が頑張れたのはそこまでだった。
急にいろんなことを行って、鬱病の揺り戻しが来たのでしょう。

ものすごく暗い、奈落に落ちていくような悪夢を見て、目が覚めたら、元の会社の人との面会時間が過ぎていたそうです。

それで、何をする気力もなくなったそうです。鬱がぶり返しちゃったのでしょうか。


私は、あるお買い物をお願いしていて、1万円を預けていたのですが、


「そのお金も、落としてしまったの」


「……」

ほんまかいなと こちらが気を落としてしまいそうですが、当分無給で働くと言ってくれているので、なんにも言わないことにしました。


先日、公衆電話から無言電話をかけてきたのは、

「あなたにあやまろうと思って電話をかけたら、急に脇から、ガラの悪い若い男が割り込んできて、わたしのウエストポーチをとろうとしたので、エイエイッて揉みあっているうち、電話がきれちゃったの」

これには思わず、笑………、

わけのわからない説明ですが、彼女なりに必死に取り繕ってくれているのだろうから、まあいいや。

彼女はその、鬱のぶり返し期間を経て、また力が出てきたそうです。

「もう一度、前の会社に連絡してみます!」


「まあ、できなくてもいいから、そんなに気負わないで」

するとテルちゃんはキっとわたしを見て、
「そんなふうに言わないで。さやかさんに、出来るってところを見せたいんです」

と強く言いました。

なんだか、わたしまた、た言い方を間違えたかな。

かくして3日後、テルちゃんは、前の会社の人事と会い、無事に履歴書を獲得してこれたのです。

テルちゃん。できるじゃないのテルちゃん!!
年金記録がないけど、それはまた後日で…。

自信をつけたのか、彼女は言葉尻も、急に明瞭になってきたようです。

64歳、人は、どん底からでも這い上がれるかもしれないと思わされた2008、

そして、
人は人の思惑通りにはならないもので、自分を変えたり、寄り添うほうが、カンタンに世界が広がると知った年でした。



No.8につづく