患者は大抵瞼を半開きにして、青白い顔で、ベットの上にじっと座っているか横たわっている。ほとんど口を利かず、こちらから質問をすると、やや間を置いて答えが返ってくる。ゆっくりと、気のないような、平坦な口調で、二言、三言言うと、すぐにまた黙り込んでしまう。だが例外なく、返答は概ね妥当で適切であり、注意力や思考は損なわれていないことが分かる。ただし、滅多に自分から質問しないし、関心や願望や好みを表現することもない。治療によって症状が改善したという自覚は概ねあるが、幸福感はない。自覚意識や知的能力に変化はないが、明らかな無関心、外的刺激に対する反応の遅れ、感情や情緒の平坦さ、主体性や感心の減退が見られる。これが治療に起因する精神症候群である。ジャン・ドレー ピエール・ドニカー ロバート・ウィタカー『心の病の流行と精神科治療薬の真実』より

これは、ある薬が初めて使われた際の精神科医の報告である。
何の薬だかわかりますか?

答えは、クロルプロマジン。元祖、抗精神病薬(統合失調症の治療薬)。

この記述は、この薬の性質を的確に表している。
この記述を読めば、治療薬というより、ただの鎮静薬であるが、
その後、この薬は、製薬会社と精神科医たちの手により様々な解釈が加えられ、そのうち治療薬と称されるようになる。
統合失調症はドーパミンの過剰によって起きるとするドーパミン仮説を生み、
科学的ロボトミー、患者が拘束から解放され、社会に戻ることを可能にした奇跡の薬と呼ばれた。
また、精神医学が初めて治療薬と呼ぶ武器を手に入れたとされる薬である。

現在、使われる薬は全て、この薬の性質を受け継いでいる。
何故なら、統合失調症の治療において、ドーパミン遮断という理屈しか精神医学は持っていないからだ。
統合失調症の新薬であるリスパダールも、エビリファイも、ジプレキサも全て例外ではない。

最近、うつ病や双極性障害、子供にまで乱処方される薬の本当の姿である。

この副作用に対するメリットってなんでしょう?
幸福感を失ったり、感情を失うことを引き換えに得られるメリットってなんでしょう?

少なくとも、それは患者本人の為ではない。

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