6・15精神医療問題セミナー福岡
6・16精神医療問題セミナー広島

次は田中究(神戸大学医学部講師)の研究報告のサマリーである。
まずは一読頂きたい。


被虐待児童の評価として、既に十分に確立している精神疾患概念(診断基準)①を用いて評価し、被虐待児童の精神症状、心理的影響について、その成育史上の特徴との関連を明らかにすることは有用であると考えられ、調査を実施した。本調査は兵庫県児童擁護連絡協議会および神戸市養護施設連盟に加盟する児童養護施設(28施設)において行ったものである。その結果、児童養護施設には高率に被虐待児が入所しており、また何らかの精神症状、精神疾患を持つものも高率におり、児童養護施設はもはや生活施設としてではなく、療育・治療の施設としての位置づけがなされなくてはならない状況②であった。また、2施設においては悉皆調査を行い、児童の精神医学的診断を質問紙法(子ども用面接(ChIPS))③でおこない、加えて児童の観察および診察および事例検討を通して精神科医および小児科医、臨床心理士が評価を行った。また、この評価と生活状況、養育環境および虐待体験の有無、虐待の種類などについて検討し、統計学的解析を行った。この結果、児童養護施設入所時のうち被虐待児の割合は70%認め、何らかの精神症状を持つ児童が74.7%認めた。その内訳は反応性愛着障害35%、注意欠陥多動性障害23%、反抗挑戦性障害28%、行為障害28%、全般性不安障害16%、気分変調・抑うつ状態16%、遺尿(夜尿)18%、解離症状24%、感情コントロール不全16%、知的障害19%④などを認めた。さらに、乳児院を経て入所した児童は、反応性愛着障害、注意欠陥多動性障害、反抗挑戦性障害で有意に多かった。これらの児童への治療は、身体医学的治療(薬物療法)⑤および精神医学的治療を医師らがあたり、心理学的治療(遊戯療法、芸術療法、認知行動療法、など)は臨床心理士等に業務依頼し、経時的にこれらの症状評価を行った。研究協力者として加藤寛氏(兵庫県こころのケア研究所研究部長)、井上雅彦氏兵庫教育大学発達心理臨床研究センター准教授)に評価、治療等へのご協力を頂いた。
(赤字は筆者が付与)



知らない人が読めば、真っ当な研究をやっていると思われるかも知れないが、これはとんでもない代物である。
問題を指摘しておきたい。

①既に十分に確立している精神疾患概念(診断基準)

わざわざ十分確立しているなどと改めて強調しているところが言い訳がましい。
その十分確立していると言われている診断基準とはDSMⅣやICDの診断基準またはそれをベースにしたものと推測される。その診断基準をそもそも作ったDSMⅢやDSMⅣの編集責任者は、既にこうした診断が過剰診断であり、不祥事であり、子供の処遇を決める判断に使われるべきではないと述べている。ADHDと診断されている子供の95%は、過剰診断である。

③児童の精神医学的診断を質問紙法(子ども用面接(ChIPS))でおこない


診断チェックシートでの診断は危険極まりない。精神科診断は、この研究者のいう身体医学的検査は何も行われていない。質問の仕方、捉え方でいかようにも解釈可能である。ましてや、自己決定能力の低い子供が意思表示することは不可能であるから、この診断は医師、心理士の主観によって行われた可能性が高い。


④反応性愛着障害35%、注意欠陥多動性障害23%、反抗挑戦性障害28%、行為障害28%、全般性不安障害16%、気分変調・抑うつ状態16%、遺尿(夜尿)18%、解離症状24%、感情コントロール不全16%、知的障害19%

まあ、小難しい障害名をよくもここまで揃えたものである。この難しい障害名をその漢字から読み解くと、これらの親から引き離された子供、十分な愛情が与えられなかった子供が当たり前に起こしそうな感情表現であり行動である。その状況で良い子で居られる方が異常である。

⑤身体医学的治療(薬物療法)

勝手に子供を分析するだけならまだ良い。学問として研究するのも良いだろう。問題はこうしたいい加減な診断に従って薬物治療が行われる事である。ちなみに④であげた症状のうち、子供への適応として国が認可しているのは注意欠陥多動性障害に対するコンサータ、ストラテラのみである。
あとは適応外もしくは子供への安全性の確認されていない薬しかない。

2011年の厚労省の調査では、専門医に対する調査で「幼児に向精神薬処方」が3割を超え、年齢が上がり高校生まで含めると精神科を受診した児童の7割に向精神薬が処方されていることが報告されている。

次は、子供に良く使用されているリスパダールの副作用報告(FDA)の適応別の報告数のデータである。
この薬は、その適応である統合失調症より適応外の使用での有害報告の方が多いという由々しき状況を表わしている。

適応外

さらに、その副作用の内容である。
統合失調症薬であるリスパダールが、統合失調症を引き起こしていることに注目頂きたい。
さらに分泌系の副作用が多いことにも注目頂きたい。

副作用
②児童養護施設はもはや生活施設としてではなく、療育・治療の施設としての位置づけがなされなくてはならない状況

この研究では、児童養護施設を療育・治療の場として位置付けろと言っている。
とんでもない。子供に取ってこれら診断や治療は明らかに有害である。根拠の無い薬物治療はただの傷害に他ならない。
ここまで言っても、まだ根拠はあると言い張る人はいるだろう。
そういう人はその根拠となる数字が如何にして作られているか良く考えてみて貰いたい。
それは主観を排除できる客観的な研究ですか?

先日のこどものうつに抗うつ剤が効かないというのは、治験データそれもプラセボ対照試験で判明したのです。現実は、効かない抗うつ薬を使ったどころの話ではない。使われている薬の多くは子供への安全性すら確認されていません。

児童養護施設の子供に必要なのは、諸事情により彼らが得られなかったものを社会が家庭に代わって提供してあげることだ。
そうすることにより、彼らが大人になって社会に恩返しをするような人物になる。
子供の問題行動を病気を理由とすることは、そもそもの問題への対処を怠らせることにもつながる。
病気だからこの子は問題を起こすんだという、極めて短絡的な思想に陥る。

この子達に必要なのは、その問題行動の陰に隠れた本当の原因を探ってやり、得られなかったものを社会の責任として何らかの形で補ってあげることである。
デタラメ診断とデタラメ投薬は、健康にとって有害なだけでなく、重大な人権侵害である。

6・14関西カウンセリングセンター
(関西カウンセリングセンター主催講座)
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