これはセミナー配布冊子の冒頭の抜粋です。

「貴方は何者ですか?」
これは、私に対する非難で一番多いものです。診断や投薬について語ることが、まるで罪であるかのような言い草です。
また良くある意見は、
「お医者さんのいうことを聞いていれば大丈夫」
です。

自分の体に起きていることを一番知っているのは、そもそも患者です。
まず、その患者の訴えを聞くことが、そもそもの治療の大前提であることに疑問の余地はありません。
他人である医師が、短い診療時間のなかで正確な判断を下すことなどほぼ不可能です。

そうした大前提に加えて、
あ・ベンゾジアゼピンには、離脱症状などない
・明らかな副作用を病気の悪化とする
・医薬品添付情報の記載を守らない
・薬理の基礎をしらない
などという医師が蔓延するこの日本医療の悲惨な状況では、
「お医者さんのいうことを黙ってきく」という態度は致命傷になりかねないのです。

被害から学ぶ姿勢を医療界が持っているなら、私の出る幕はありません。
医療界が被害を認めない以上、市民が自ら学び、事実を示して医療に改善を求めるのは当然の成り行きです。
PUS(Public Understanding of Science)という概念は、私の拠り所です。

以下抜粋

国民が自ら学ばねばならない理由

 我々は普通に暮らしていると、TVや雑誌、インターネットと言った媒体からいきなり漠然とした情報を得ます。「新型うつ病が増えているらしい」「学校での発達障害の子供が問題になっている」などといった新しい病気の概念や「良い薬が出来ました」「最近の睡眠薬は安全です」などといった情報です。こうした情報は、科学的な情報ではなくビジネスを目的としたただの広告に過ぎません。日本の薬事法では、薬の効果を直接宣伝することは禁止されています。そのため製薬会社のTVCMは「良い治療薬が出来ましたお医者さんに相談しましょう。」という間接的な表現になっています。そのCMを観た消費者は、自ら病院に出向き、医師の処方を通じて結果的にその製薬会社の薬を利用することになりますので、そのCMは実質的に薬のCMと何ら変わりません。例えば、「禁煙はお医者さんに相談しよう」は、ファイザー社がスポンサーのTVCMですが、禁煙の為に禁煙治療クリニックに行けば、同社の「チャンピックス」という禁煙治療薬が処方されるというわけです。

 原発事故が起きるまで、我々国民は、「原発は安全だ」という漠然とした情報を信じていました。しかし実際に原発事故を目の当たりにして初めてその危険性を知ることになったのです。この国では、科学的な事実よりも、「原発は安全だ」という空気のような事実がまかり通ってきたということです。本当に原発が安全かどうか知るためには、原発がどういう仕組みで動いていて、どういう立地に建っていて、どういう安全対策が取られているかを知る必要があったのです。原発事故の解説を通じて日本中の人が、初めて、原発の大まか仕組みを知り、様々な問題を抱えていることを知ったのです。現在の精神科医療には、原発問題と同様な様々な空気のような事実が蔓延しています。我々国民は、「専門家が処方すれば向精神薬は安全だ」という漠然とした空気を信じています。それはただの空気であり、科学的な事実ではない事をまず学ぶ必要があります。精神医療の現場では、そうした空気のような情報のなかで、科学的根拠に基づかない向精神薬の処方が蔓延しています。

 薬の代謝にはチトクロムP450(CYP)という肝臓の代謝酵素が関わっています。このCYPと言うのは、既に米国では常識とされている知識です。問題なのは、このCYPは、人によりその活性が違っていることです。その一つにCYP2D6というタイプの代謝酵素がありますが、このCYP2D6という代謝酵素は、主な統合失調症治療薬、抗うつ薬の代謝に大きく関与しています。問題なのは、日本人の4人に1人は遺伝的にこの代謝酵素の活性が50%ほどしか無く、別のCYP2C19というタイプ(ベンゾジアゼピン系薬品の代謝に関与)は、10人に1人の割合で全く活性が無いということです。代謝酵素の活性の低い患者に、同タイプの代謝酵素で代謝される薬を服薬させることは、お酒に弱い体質の方にお酒を飲ませることと同様です。残念ながら日本の医療現場では、こうした科学的な事実を全く考慮せずに薬の処方が行われています。このCYPの例に限らず、医療の非常識によって患者に様々な不利益が生じていることは大変残念な状況です。

支援者の役割

 原発問題で我々国民が学んだのは、専門家の言う漠然とした事実を盲目的に信じていても、自身の身の安全は守れないという事、科学的な根拠に基づいているのかを国民自身が検証していかなければならないという教訓でした。国民は、「うつ」や「統合失調症」とはなにか、「発達障害」とはなにか、またその治療に使う薬とはなにか、精神科治療の科学的根拠を確認する必要があります。

 特に福祉における支援者教育では、しばしば、こうした知識を持つことは医療の不可侵な領域とされ、現場で支援者が診断や投薬に口をはさむことはタブーとされています。それは果たして良い事でしょうか?米国では、医師はもちろんPSWや心理カウンセラーなどの支援者ならCYPを含めた薬物相互作用の知識を持っていることは当たり前とされています。近年、医療現場に取り込まれているインフォームドコンセントを始めとするEBM(根拠のある治療)導入の目的は、患者本人が積極的に治療方法の決定に参加することにあります。しかしながら、特に精神科の患者さんは、その病気の特性から、自らの意思を主張する事が難しい状況に追い込まれています。患者の一番近くにいる家族や支援者は、認知能力の落ちた患者に変わり、積極的に治療に参加する役割を果たすべきではないでしょうか。支援者が医学知識を持つことは医師の邪魔をすることではありません。むしろ医師をサポートし、患者の利益に寄与するものです。

一般市民の専門的知識力の向上

 インターネットの発展により、かつて専門という権威をまとった医学は急速にその専門性を失いつつあります。実際に、医師の為の薬の取り扱い説明書である医薬品添付文書は、一般の人達も読むことができるようになり、導入が叫ばれるEBM(根拠のある治療)の定義には、患者の意見を聞くこともその実施要件に加えられています。専門家でない市民は、その社会的観点や本質論においてしばしば専門家を凌駕する場合があります。こうした科学への一般市民の理解は、PUS(Public Understanding of Science) と呼ばれています。これは医学の世界に限らず、民衆が科学者に要請する「科学」に関する説明責任です。これは科学のあらゆる領域で起きていることで、今後このスピードはさらに加速されていきます。なにしろ、インターネットの世界には、医学部や臨床経験でのみ得られる経験知以外は全て転がっているのです。実際に大衆からの様々な指摘は、最近の精神医学会の議題に上るようになり、その幾つかは実際に治療ガイドラインなどに強い影響を与えています。
 そうした流れにあって、医療者が、民衆(患者)や支援者に対して、「治療や投薬に口を出すな」というのは、あまりにも不遜です。そうした態度を続けるということは、精神医療が科学を装っているのと同時に、説明不可能なアートのような非科学的なものもまた持ち合わせており、説明責任が果たせない状況であることを自ら認めていると思わざるを得ません。


精神医療被害連絡会メールマガジン申込み
携帯メールで申し込みをされた方は、きちんと配信されない可能性があります。また一斉配信で送信しておりますので、迷惑メールに分類されている可能性もございますので確認ください。

精神医療問題を学ぶセミナー開催します。栃木県小山3月3日
参加者には、向精神薬の基礎を学ぶ冊子を提供します。是非参加ください。
当事者、家族のみならず、医療関係者、支援サービスの皆さまの参加をお待ちしております。

精神医療問題セミナー(関西カウンセリングセンター主催)
大阪3月10日

ミニ情報交換会

神戸3月9日(16:00~)参加費用:御茶代、資料代500円
参加希望の方は、連絡会HP右下のメールから問い合わせ下さい。
また、3月11日まで在阪しておりますので、面談希望の方は申し出ください。