ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)の蓄積について心配されている方がいらっしゃったので詳しくお伝えします。

ベンゾには、GABAaとGABAbに作用する薬があります。
aに作用するのが睡眠薬で、bに作用するのが抗不安薬や肩こり、てんかんに使う弛緩薬です。
セルシンは後者ですね。
セルシンは催眠作用は強くありません。
弛緩の持越しはあります。転びやすくなったりするので、やはり車の運転は避けるべきです。
それは持越しというよりセルシンはずっと効いてますから主作用です。

aの睡眠薬系の置換にセルシンは向いていません。
(アシュトンマニュアルではどうなってる?)
ソラナックスの減薬には向いてるが、ハルシオンには向いてないという事です。

セルシンは、肝臓酵素CYP2C19(主)とCYP3A4で代謝されます。
CYP2C19が無いからといって、全く代謝しないのではありません。人間の体は毒物と認識するとCYPを最大4倍まで活性します。多剤でなければ蓄積の心配はありません。
(老人や肝機能の低下した方は薬物濃度が上がるので問題です。)

セルシンの蛋白(アルブミン)結合率は98%です。つまり最初飲んだ時には、総量のわずか2%しか使われません。そこから徐々に蛋白から遊離していくことになります。
10日で代謝されるとすると1日あたり10%ずつしか使われないという事です。
薬は、蛋白(アルブミン)に結合して体内に蓄積しますが活性は一部です。
蛋白と結合しない成分が薬として働きます。
ですから、一旦飽和状態になったら、維持量は5~10日に一錠飲めば十分なのです。
(セルシンを継続的に処方する馬鹿がいるので気を付けましょう。)

また、セルシンの代謝物であるノルジアゼパムもまた同様の活性・作用を持っていてその半減期はさらに長くて300時間です。

服薬期間から言って、もう飽和状態であると思われるので、
減薬は、徐々に服薬期間を延ばしていくのがよいと思います。

長く飲んで飽和している場合には、
2日に1錠、3日に1錠・・・と伸ばしていけば良い。
1か月あけることが出来れば卒業です。
セルシンの減薬はこの方法が合理的です。

致死量は、同時に飲んで何百錠とかです。
日々蛋白結合率を超えた部分は普通速やかに代謝されていますから、1日ごとに飲んでいればそうそう致死量に達することはありません。

但しこれは、最終的なセルシン単剤の減薬の話です。

セルシンと他のベンゾが併用されていると話は別です。

薬理の教科書、論文からまとめました。
全てエビデンスはしっかりしています。