不眠の原因を探る。

参考文献:精神科治療学27(1)睡眠薬の多剤併用の意義と問題点

不眠の原因として以下のような原因が想定される。
1. 疾患により引き起こされる場合
2. 薬物により引き起こされる場合
3. 環境、生活習慣により引き起こされる場合
4. 体が必要とする以上に長く睡眠をとろうとする場合
5. 概日リズムに逆らって眠ろうとする場合
6. 悩み不眠などにより入眠できない場合
7. 実際には眠れているに関わらず眠れていないと誤認する場合

元の参考文献では、不眠治療のガイドラインとしてこうした分類を挙げ、
不眠で受診する患者に対し、その原因に応じて、薬物治療と非薬物治療をすべきと論じている。

だが、「不眠は鬱のサイン」キャンペーンのもと、不眠でクリニックを訪れるといきなり抗不安薬や酷い場合最初から抗うつ剤が投与されることは珍しくない。

このような状況で我々がすべきことは、まず自分自身で不眠の原因を今一度考え直してみることだ。

それぞれを解説してみたい。
以下は論文に私の見解を加えたものです。

1. 疾患により引き起こされる場合

様々な体の不調、痛みなどから引き起こされる不眠である。当然のことながら優先されるべきは、原疾患の治療である。

2. 薬物により引き起こされる場合

薬物による不眠は、SSRIや興奮剤により引き起こされる。また睡眠薬による睡眠は本当の睡眠でないため寝足りないと感じる場合もある。離脱症状。寝酒も同様で連用すると効かなくなる。アルコールは、バルビタールと作用機序が同じである為、睡眠薬代わりに使うとその内効かなくなる。カフェインの摂取も不眠の原因となる。

3. 環境、生活習慣により引き起こされる場合

近所の騒音、不規則な生活、赤ちゃんの泣き声。なにより無職の人の昼夜逆転。家族が寝てからしか好きなことが出来ないなど。

4. 体が必要とする以上に長く睡眠をとろうとする場合

睡眠量は個人差がある。誰もが7時間(日本人の平均睡眠時間と言われている)寝なければならないという事ではない。日中に居眠りや眠気で集中困難にならないもの、寝足りない位は不眠ではない。加齢によって睡眠時間が浅く短くなるのは正常。若い時の様に寝れないのは当然。いつまでも若いと思っていることがおかしい。

5. 概日リズムに逆らって眠ろうとする場合

体内時計に逆らって、急に早く眠ろうとしても寝れないのは当然。入院直後などは寝れないのは当然。時差ボケ。

6. 悩み・不安などにより入眠できない場合

心配事、不安があって眠れない。不眠が恐怖になり眠れない。

7. 実際には眠れているに関わらず眠れていないと誤認する場合

睡眠に対する人間の感覚はあてにならない。静かな床で覚醒していると、短時間の覚醒も苦痛に感じる。睡眠薬の持越し作用や向精神薬による日中の倦怠感・眠気を睡眠が不十分と誤解する。


不眠を感じている人は、今一度、原因を考え直してもらいたい。自分で対処可能なもの、ほっとけば良いものがあることを理解頂きたい。

この論文でも、これらが原因の不眠全てを治療対象としている。
(薬物治療だけを推奨してはいない。)
実は、この論文に記載される治療内容には私は同意できない。
ベンゾの長期処方など国際標準からも逸脱している部分がある。
だが、今より被害者を増やさないガイドラインとしては非常に有用である。実際の精神科での不眠治療の実際よりはずっとマシであるからだ。

その見解と睡眠治療で使われる薬剤の解説は次回で。

この論文の「はじめに」の部分をそのまま紹介しておきたい。

睡眠薬が多剤併用あるいは大量投与されている症例を見ることがあるが、このような処方をしても不眠の改善は期待できず。様々な弊害を引き起こす。睡眠薬多剤併用・大量投与は、不眠及びその治療、睡眠薬に対する精神科医の知識不足から引き起こされていることが多い。

これ、私が言ってるんじゃありませんよ。

不眠は「うつ」のサインではありません。

(この内容は、精神医療被害連絡会のメルマガに掲載予定の内容です。6月strong下旬より配信開始予定です。)