前号のSAPIOでは、の抗うつ剤の売り上げと自殺が関連付けられて掲載されています。

今日は、その件について書こうと思います。
あちこちのブログで、この話題が炎上しているようですが、私は自分の知見に自信を持っています。

チャートでの相関関係はありません。チャートから読み取れるのは、抗うつ剤の売り上げが、自殺を減らせていないこと(これは、厚労省の公式見解とも一致)と、そもそもの自殺の多さです。

自殺の統計チャートについては、もう随分前から、にらめっこしてきました。
自殺者の推移といろんな指標を比べてきました。
98年の突然の激増について、その理由を明確に説明する指標は見つかっていません。

98年以前のチャートについては、自殺者数の推移と明らかに相関しているものがありました。
それは、失業者者数との相関です。
自殺者数と失業者数の推移
しかし、なぜか、98年以降は、全く相関しなくなりました。

かつては、自殺と景気要因は連動していたのです。
98年は、失業者が激増していますから、主要因は失業でしょう。

これらのチャートから、明確に読み取れるのは、
自殺の変動要因に景気以外の何かが加わったということです。
それが何であるかを見つけることが、本当の自殺対策です。

一つだけ、説明できそうなデータがあります。
データといえるしろものではないのですが、それは、薬物乱用のブームです。
1955年~1960年、1985年の前後、チャートのピークと一致しています。
1998年からのピークを、処方薬の乱用ブームととらえれば、3つのピークは一致します。
でも、これはまだ、憶測の段階です。
乱用を示す具体的な数値を私はまだ持っていないからです。

次に各国の自殺者数の推移をみていきましょう。

主要国の自殺の推移
抗うつ剤の問題なら、米国のグラフに表れると思うのですがそれもありません。

抗うつ剤の売り上げは、比較するデータとしてふさわしくありません。
事前に相談があれば、これを使うことを私は反対しました。
後述しますが、抗うつ剤は、なにも特別な存在ではなくて、自殺は、その他の向精神薬を含めた全体の問題なのです。抗うつ剤はその一部に過ぎません。

注目すべきは、韓国のグラフです。
この韓国のグラフと日本のグラフには相関がみられます。

韓国の最近の精神科受診ブームは、良く知られています。なんと学習クリニックというコンサータを処方する専門クリニックが沢山あるような状況です。芸能人の自殺といい、経済の勢いと同じで精神科受診ブームも日本を追い越したようです。

韓国の自殺者数の推移と経済状況は全く相関しません。韓国にも、経済状況以外の要素がからんでいるということです。

私が、精神科処方薬が、自殺の原因であると確信したのは、これらのチャートからではありません。

別の事実を積み重ねた結果、そう考えざるを得ない結論に達したのです。

欧米で起きている抗うつ剤の問題は、日本では比較的起きにくいのです。
欧米で起きている抗うつ剤によるアクティベーションによる自殺は、単剤のSSRIが引き起こした問題です。

そこには、人種差の問題があります。遺伝的代謝酵素(CYP)の問題です。
代表的なSSRI(だけでなく、抗うつ剤の殆ど)の代謝酵素は、CYP2D6です。
欧米人(白人)の7%は、このCYP2D6が欠落しているのです。
日本人では、4人に1人、この代謝酵素の代謝が低い人がいるのですが、欠落ではありません。

つまり、言い換えれば、白人は、抗うつ剤で自殺しやすい体質なのです。
日本人は欧米人より抗うつ剤には強いということが出来ます。

それよりも、日本の自殺の原因は、抗うつ剤を含めた多剤併用です。
薬の相互作用による副作用の増強が自殺の原因です。

薬理学的には、併用による相互作用を基にした副作用の増強は明白です。
先の記事でふれた抗てんかん薬の医薬品添付文書には、プラシボとの比較試験で自殺の副作用は有意であることが示されています。

つまり、薬による自殺の副作用は、治験においても証明されているということです。

10万人当たりの自殺者数は、24人。0.00024%です。

海外で実施された大うつ病性障害等の精神疾患を有する患者を対象とした、本剤を含む複数の抗うつ剤の短期プラセボ対照臨床試験の検討結果において、24歳以下の患者では、自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが抗うつ剤投与群でプラセボ群と比較して高かった。なお、25歳以上の患者における自殺念慮や自殺企図の発現のリスクの上昇は認められず、65歳以上においてはそのリスクが減少した。

海外で実施された本剤を含む複数の抗てんかん薬における,てんかん,精神疾患等を対象とした199のプラセボ対照臨床試験の検討結果において,自殺念慮および自殺企図の発現のリスクが,抗てんかん薬の服用群でプラセボ群と比較して約2倍高く(抗てんかん薬服用群0.43%,プラセボ群0.24%),抗てんかん薬の服用群では,プラセボ群と比べ1,000人あたり1.9人多いと計算された。

この治験によれば、1000人当たり2.4人がプラシボで自殺念慮、自殺企図があり、抗てんかん薬は、4.3人。その差1.9人。
10万人当たりにすると190人のひとが自殺念慮、自殺企図の副作用がでるということです。
自殺者の母集団として、てんかん薬だけで430人、これは立派なエビデンスでしょう。

このように、自殺の原因が向精神薬であることは、議論の余地はありません。

さらに、私や私の周りの人たちには、被害者の証言も集まっています。
その証言は、「薬を飲み始めて、自殺したくなった。」です。
それは、自死遺族の証言だけではありません。現在服用中の被害者の証言でもあります。

そして、自殺既遂の事例では、抗うつ剤単剤の例はほとんどありません。
その多くが、抗うつ剤、統合失調症薬、抗パ剤の併用です。
ちゃんと分析すれば、何故、副作用が強くでたか説明可能なのです。

相談を受けた事例すべてで、その副作用増強のメカニズムは説明できたのです。

10万人あたり、0.019%の自殺副作用発現率が、わずか倍の0.038%になれば、自殺予備軍は190人から380人となるのです。

これが、日本の自殺者が多い本当の理由です。
今までの、どんな説明より、明白です。

こんな明白なことが、何故、今まで発覚しなかったのでしょうか。

それは、今まで誰も、この件を科学的、薬理学的に検証しようとしなかったためです。
最初から、精神薬をターゲットに調査すれば、おのずと判明する事なのです。
この問題を処理すべき責任者が、最初から、精神医療を疑いたくなかったのです。

これは、今に始まったことではありません。もう50年以上も続いてきたことなのです。
前任者の怠慢を後任者は暴かない。
日本社会のこの悪しき慣習が、ここにもある。

被害者の数は、累計100万人を超えるでしょう。

明日、TVのディレクターに面談の予定があります。

議題は、これにします。