叔父 | スティルマイン

叔父

ばあちゃんの息子に、叔父がいる。幼い頃、預けられていた田舎のその家で、叔父だけがべらぼうに恐ろしかった。祖父母は欲しくもないおもちゃを与えてくれたりもしたが、このモテ過ぎな環境の中、叔父のみが私に厳しく接した。

叔父は肉体的スポーツで日本何位がどうこう、という恐ろしい冠を持っており、アイパーな男前だった。

幼い私は叔父が物凄く恐ろしかった。叔父は若くお盛んであり、アイパーだったため、私は叔父の前に居ると「モジモジ」してしまうのだった。「遊んで」の一言が言えず、その言えなさ加減が恥ずかしく、無かったことにしてばあちゃんの陰に隠れる。そんなだった。

「伸び伸びと増長させよう」と預けられていた筈が、増長し過ぎると決まって叔父に説教された。正座させられ、泣かされた。ばあちゃんの横っ面をバットでクリーンヒットしたときも泣かされた。飯を食べるのが遅い、と泣かされた。

躾ける人間が居なかったため、若い叔父は頑張っていたのかもしれない。どんなに泣かされても叔父を好いていたのは、幼いながら「叔父は正しい」と分かっていたからだと思う。「正しいってのが一番怖くてつええんだな」という認識は今でも私を支配している。


預けられていた頃から数年経ち、再び帰省したある日、やはりモジモジしながらも私は叔父に「ラジコンで遊んで」と言えた。叔父はニッと了解してくれた。

2台持っていたラジコンのうち、強い方を叔父に渡し、仏壇の部屋でラジコンをぶつけ合って遊んだ。この遊びのゴールがどこだったかは覚えていない。