【今回の記事】
「デブ」と生徒に連呼、拳で顔殴る 横須賀の中学教諭

【記事の概要】
 神奈川県横須賀市の市立中学校で9月、技術科の20代の男性教諭が授業中に2年生の男子生徒(14)を殴り、「デブ」と暴言を浴びせていたことが学校などへの取材でわかった。市教育委員会は体罰として県教委に報告し、有識者らでつくる専門委員会が調査している。
 学校によると、男性教諭は9月15日午前、技術科の授業の際、男子生徒がパソコンに書いた文字を指示通りに消さなかったため口論となり、生徒に向かって「うるせー、デブ」と連呼。その後もみ合いとなり、生徒の頭を机に押さえつけたり、拳で顔を2回殴ったりしたという。
 学校が居合わせた生徒から聞き取ったところ、「教諭が生徒の上半身を机の上に仰向けに押さえつけ、腹を3回、顔を2~3回殴った」という証言もあった。
 生徒の両親によると、生徒は鼻血を出し、前頭部を打撲。生徒は以前にも教諭ともみ合いになるトラブルがあったという。両親は「体罰は許せない。頭を打撲しているのにすぐに病院に連れて行かず、保護者への連絡もなかった」と話す。
 学校は生徒と保護者に謝罪。校長は「体罰はあってはならないこと。不適切な言動があり、教諭本人には指導した」と話す。教諭は学校の聞き取りに「髪の毛をつかまれるなどし、身の危険を感じたので殴った」と説明したという。(前田基行)


【感想】
「生徒の上半身を机の上に仰向けに押さえつけ、腹を3回、顔を2~3回殴った」ここまでくると、指導の域をはるかに逸脱した、ただの子どものケンカと同じ。もはや教師とは思えない呆れた言動です。

「体罰」についてはこれまでも話題に上がって来たので、今回は「うるせー、デブ」という言葉に着目してみたいと思います。この言葉の意味について知る上では、以下の記事が必要となります。URLタップにてご参照ください。
体罰関連行為のガイドライン 〜改めて問われる教師の不適切な行為〜

   さて、今回着目するうるせー、デブ」という言葉は、「うるせー」と「デブ」です。実は、これらはいずれも、概念上体罰には含まれませんが、「体罰」と同様に、教育上不適切な行為であり許されない「不適切な行為」に当たるものです。 
   まず、「デブ」は、不適切な行為」の中の、更に暴言等」の中の「人格(身体・能力・性格・風貌等)否定」にあたります。「あなたにはこの問題無理だね」等の発言も、子どもの能力を否定しているので、これに当たります。
   次に、「うるせー」は、やはり、不適切な行為」の中の、更に「暴言等」の中の威嚇(威力をもっておどすこと)」に当たると考えられます。ちなみに、大きな声で怒鳴る先生方は、たくさんいるように見受けられますが、実はこの行為に当たると考えられるのです。実際に、怒鳴り声に恐怖を感じた感覚過敏の子供が数ヶ月間不登校になった事例もありました。

   これらは、体罰のように子どもの“”は傷つけることはありませんが、特に感覚過敏の子どもにとっては、“”を傷つけられる、ある意味体罰よりも長期間に渡って子どもに悪影響を与える行為と言えるかも知れません。
   平成18年度までは、障害児童は特殊学級にしかいないとされてきた「特殊教育」でしたが、現在は、通常学級にもいる感覚過敏の自閉症スペクトラム障害の子どもに対しても特別な支援を施さなければいけない「特別支援教育」の時代です。「知らない」では済まされない重要な問題なのです。