【今回の記事】
あなたの叱り方、子どもに伝わってる?お母さんにありがちな6つの叱り方NG

【記事の概要】
(前回からの続き)
◯お母さんにありがちな6つの叱り方NG

◆NG1 子どもの人格を否定する
ダメな子」「イヤな子ね」というような、人格を傷つけるような叱り方はよくありません。人格を否定されるようなことを言われ続けていると、子どもの心はネガティブになり、「自分はダメな子なんだ」と思うようになってしまいます。たとえば、「そんなことする子はお母さん、嫌いよ」ではなく、「そういうことは、お母さんは嫌いだからしないでね」というように、その子の行為で間違った点を、正確に伝えるようにします。

◆NG2 すぐに叱らないで後回しにする
   子どもは時間の感覚が、はっきりしないところがあります。お母さんに「この前、どうして○○したの?」「昨日もそうだったよね」と言われても、子どもは「この前?」「昨日?」と思い出せないのです。
   過ちはその場で正すのが基本です。たとえば子どもがレストランで騒いだら、ほかのお客さんがいるからと後回しにせず、すぐに「迷惑になるから騒いではいけません」と叱るようにします。その場でけじめをつけることで、何が悪かったのかが子どもにも伝わり、忘れないで覚えていられるのです。

◆NG3 人のせいにして叱る
騒ぐと先生に叱られるよ」「ちゃんと食べないとお父さんに叱られるからね」など、他人の存在を強調して叱るのはやめましょう。叱るときは、その場にいた人が、自分で判断し、自分の権威と責任で叱ることが重要です。そうでなければ子どもに伝わりません。
   最近、スマートフォンのしつけサポートアプリが話題です。鬼から電話がかかってきて、子どもに「早く寝なさい」などと言い、子どもは鬼が怖くて言うことをきく、というもの。人気があるようですが、子どもを怖がらせて言うことをきかせるよりも、お母さんの言葉で叱るほうが、子どもの心にしっかり残るでしょう。

◆NG4 他者と比べて叱る
お兄ちゃんはできたのに、どうしてあなたはできないの」「○○ちゃんは上手なのに、それに比べてあなたは……」と、きょうだいや友だちなどの他者と比較して叱ると、子どもは劣等感にさいなまれ、自分に対してマイナスイメージをもつだけです。いつも他者と比較されるということは、「あなたはほかの子と比べて劣っているのよ」と言われ続けているようなものだからです。次第に、「どうせがんばってもダメなんだ」と、努力しなくなってしまいます。子どもにもプライドがあります。傷つけないように叱ることを心がけてみましょう。わが子を傷つけたいお母さんはいないのですから。

◆NG5 失敗や結果の不出来を叱る
   いつもやっているお手伝い、たとえばお皿を運んでいて割ってしまったとき、「もう、何やってるの」「もうしなくていいから」という言葉を口にしていませんか。新しいことや難しいことに挑戦して失敗したときも、うまくいかなかったことを叱りがちです。そんなときは、むしろ「でも、挑戦してえらかったね」「でも、最後までよくがんばったね」と、意欲や過程をほめるようにします。
   失敗は決して悪いことではなく、たくさん失敗したほうが、経験を積むことができます。失敗を生かして、次につなげられるからです。お皿を割ってしまっても、たとえば「よそ見してたから」と自ら気づくほうがとても価値があることなのです。大切なのは、どうしたらうまくいくかを子ども自身に考えさせること。親も一緒に考えたり、ヒントを出してみるのもいいでしょう。

◆NG6 叱り方に一貫性がない
   同じことをしても、親の気分次第で叱られたり叱られなかったりすると、一貫性がないため、子どもは混乱してしまいます。また、同じことをしたときに、お母さんは叱るけれど、お父さんは叱らないというのも、子どもが混乱する原因になります。
   できれば、身近に関わる祖父母なども交えて、(1)人に迷惑をかけたり、危害を加えたとき、(2)相手の心を傷つけたとき、(3)やるべきことをやっていないときは叱るなど、「叱る基準」を決めておくことをおすすめします。


【感想】
   どの「NG」も、全くその通りで、自分自身を振り返るうえで、とても参考になることばかりです。「今更私などが…」という感はありますが、若干補足させて頂きたいと思います。

   まず、「NG1」で「そんなことする子はお母さん、嫌いよ」ではなく、「そういうことは、お母さんは嫌いだからしないでね」が良い、という指摘がありました。言わんとしているのは「罪を憎んで人を憎まず」という諺もある通り、個人そのものを否定せずに、その子のした行為を否定せよ、ということだと思います。しかし、「お母さんは嫌いだから」という理由づけが好ましくありません。規範基準はお母さんの好みによるものではないからです。お母さんが基準になってしまうと、社会のルールを飛び越えて、とにかくお母さんに気に入られようとする意識が芽生えてしまいます。すると、いつもお母さんの顔色を気にする「不安型」の子どもになってしまう危険があります。例えば、「そういうことは、他の人に迷惑になるから止めようね」「そういうことは、あなたの健康に良くないから止めようね」のように、幼い頃からでも“本当の訳”を知らせる方が、筋道立っていて子どもの理解が定着しやすいと思います。
   次に、「NG2」で「その場でけじめをつけることで、何が悪かったのかが子どもにも伝わり、忘れないで覚えていられる」という指摘がありました。これは単に「子どもが忘れやすいから」という理由だけではなく、叱られる言葉が、その時の自分の気持ちや周りの様子等の“叱られた時の具体的な状況”と一緒になって記憶に残るので、本当の意味で理解でき、すぐに思い出すこともできるのです。
   次に、「NG3」で例に挙げられた「子どもを怖がらせて言うことをきかせる」のは“脅し”にあたります。学校の教師が「そんな問題もできないなら一年生の教室に行ってもらうよ」と言うのと同じです。私たち教師にとっては、“脅し”は“暴言”と同じく、体罰と同様に許されない「不適切な行為」に当たり処分の対象になります。

   こうして見てくると、これらの「NG」はその多くが、私達教師にとっても「ご法度(絶対やってはいけない)」とされている行為ばかりです。場合によっては、子どもの心を傷つけ、担任不信にさせ、不登校にさせてしまう場合もあります。
   しかし、だからと言って、親だから許されるというものでもありません。というより、親が子どもの心を傷つける方が事態は深刻だと思います。なぜなら、私たち学級担任はわずか1、2年の付き合いですが、親によって心を傷つけられた子は、一生の「安全基地」を失うことにもなりかねないからです。「安全基地」を失ったばかりに、糸の切れた凧のように親の元から離れ、重篤なトラブルに遭遇しても、親に助けを求めずに自ら命を絶つ子どもも現実にいるのですから。