【今回の記事】
いじめの認知件数過去最多、小学校で著しく増加

【記事の概要】
 2015年度の全国の小中高校などで認知されたいじめの件数が、前年度より3万6468件増えて、22万4540件に上り、過去最多となったことが文部科学省の調査でわかりました。
 特に、小学校でのいじめの認知件数の増加が目立っていて、前年度の12万2734件から15万1190件と2万8000件あまり増えました。小学校では暴力行為の発生件数も、1万7137件と前年度から5600件あまり増加していて、特に低学年で急増していることがわかりました。
 文部科学省は暴力行為の増加について、感情のコントロールが苦手な子どもが増えていることなどを理由にあげました。

【感想】
   記事によると、感情のコントロールが苦手な、暴力行為を起こす子どもが増えている」とのこと。では、なぜそのような子どもが増えているのだろうか?発達障害(不全)の子どもが増えているのだろうか?しかし、先天性の発達障害の子どもは、文科省の複数年にわたる二度の調査で「発達障害児童は、通常学級に6.3〜6.5%程度いる」と報告されているので、発達障害児童が増えたとは考えにくい。とすると、増えているのは「愛着障害(不全)」の子どもであると考えられる。つまり、『愛着障害(不全)』の子どもが増加しているために、感情のコントロールが苦手な、暴力行為を起こす子どもが増えている」
   その背景として一番に考えられるのは、一人親家庭が増えたことにより、仕事に追われる親から愛情を十分に受けることができない子どもが増えていることである。これは決して、親が怠けている等ということではなく、物理的に子どもと接するための時間と余裕が取れないためである。両親が揃っている家庭では父親と母親が二人で分担して行なっている事を一人でこなさなければならないのだから大変なことである。しかし、このことが改善されない限り、今回の記事で指摘された問題は解決されることはない。そして、そのために親が今からするべきことは、本来なら愛着形成の「臨界期」とされる1歳半までにかけなければならなかった分の愛情のかけ直しをすることである。
   しかし、今でさえ多忙な毎日である。そのような多忙な生活を送りながら子どもに十分な愛情をかけるためには、たとえ限られた時間であっても効率的に愛情をかける方法が必要である。ちなみに、「愛情をかける」こととは、すなわち「愛着を形成する」ことである。つまり、愛着障害を改善するには、効率的な「愛着形成のやり直し」が必要なのである。その方法については、過去に以下の記事で投稿している。参照して頂きたい。
愛着形成(愛着形成のやり直し)の仕方

   さらに、今回の記事から、特徴づけられる点は次の3つである。
①いじめの件数が、過去最多を記録したこと
②小学校でのいじめの認知件数の増加が目立っていること
③小学校では暴力行為が特に低学年で急増していること 
つまり、いじめやそれに伴う暴力行為の件数が、特に小学校、特に低学年にと、これまでの最多ペースでいじめの低年齢化が進んでいることが分かる。いじめが起きる要因については、これも以前に、以下の記事の投稿によって、ある専門家が「いじめは、加害者が置かれる環境の中で抱くストレスの発散によって起きる」と結論付けたことを紹介した。
「『いじめは加害者のストレスによって起きる」』〜いじめ加害者を育てる環境とは?

つまり、いじめが増えているということは、それだけ、ストレスを抱えているいわゆる「問題生徒」「問題児童」が増えているということである。先に、感情のコントロールができない「問題行動」の要因は愛着障害(不全)によるものと述べた。これらから結論として言えることは、愛着障害(不全)の増加が、いじめを起こす「問題生徒」「問題児童」を増やし、いじめを増加させているということである。

   なお、先の3つの特徴は、愛着障害(不全)が低年齢化していることの現れでもある。子どもが低年齢化しているということは、その親も低年齢化しているということ。つまり、いわゆる「脱愛着化」の現象が、若い親の家庭に広がっているということである。そのことは、次世代になればなるほど、若い一人親家庭に愛着障害(不全)の子どもが増え、いじめを起こすストレスを抱えた「問題生徒」「問題児童」も増加し、それに比例していじめも増え続けていくであろうということを物語っている。それだけに、「愛着形成のやり直し」は、今後のいじめ問題の改善のカギを握る重要な方策と言えるだろう。