【今回の記事】
いじめ認知格差、都道府県で30倍 「重大事態」への対応急務(産経新聞)

【記事の概要】
 いじめを苦にした自殺などの撲滅に向け、国のいじめ防止対策協議会が定義の明確化と積極的な認知を求める提言を出した。文部科学省は年内をめどに、各教委に対し「重大事態」に該当する複数の事例を示すなどして対応を促す。各都道府県で認知件数に大きな差があるなど、教育現場で混乱が続いているためだ。
いじめ防止対策推進法が施行されて3年たつが、いじめによる自殺が起きているのは事実。重く受け止めたい」。文科省幹部は協議会終了後、そう語った。推進法は平成23年10月に大津市の中2男子が自殺したのをきっかけに、25年9月に施行された。ただ、その後もいじめが原因とされる自殺は後を絶たず、26年度も5件に上る。最近では青森市の中2女子生徒が8月、いじめを苦にした様子を遺書に残し自殺した。最悪の事態はなぜ回避できないのか。
「いじめの重大事態を学校が捉え切れていない」。関係者の間では、学校側が自殺に直結しかねない重大事態の定義を消極的に解釈しているとの疑念が広がる。文科省によると、推進法施行後に重大事態と認定されたケースは、25年度が179件、26年度が449件と伸びている。ただ、被害者側が申し立てても重大事態として扱われないケースがあるのも事実だ。学校側と被害者側との認識の隔たりは「心身や財産への深刻な被害」という定義の曖昧さも一因とされるが、文科省幹部は「教員が評価を気にして矮小(わいしょう)化する傾向があるのではないか」と話す。     
   都道府県の間でも認知の格差が目立つ。26年度の小中高校生1千人当たりのいじめ認知件数は、全国最多の京都府(85・4件)と最少の佐賀県(2・8件)との開きが約30倍。文科省は認知件数の少ない自治体に対し指導を強化する方針だ。

【感想】
「重大事態」に関わる学校側と被害者側との認識の隔たりや都道府県の間でも認知の格差等は、「重大事態」や「いじめ」についての定義が曖昧なためであると考える。
   そもそも「いじめ防止対策推進法」第二十八条によれば、「重大事態」とは、「生命、心身又は財産に重大な被害」(以上、原文からのコピペ)とされており、既にこの記事の「心身や財産への深刻な被害」という定義とズレが生じている。
   そもそも「定義」とは、表現しようとする対象が一つに限定されるから「定義」と言えるのであり、ある一つの定義から、いくつもの解釈が生まれるということが起きるのは、国が定めた定義そのものに問題があるためである。それを、都道府県や学校の責任にするのはお門違いというものである。その認識の格差を防ぐためには、国が、全国統一した調査用紙や不備のない定義を各学校に提供する必要がある。そうしないと、生徒が「大丈夫です」と言ったからといって、解決済みと扱ったために生徒が自殺した、青森市浪岡中2年の女子生徒のようなケースが生じるのである。

   以前にも以下の投稿で述べたが、この調査に関わる言葉の解釈の仕方や調査用紙等を各学校に丸投げすると、学校や都道府県によって差が生まれるのは当たり前である。
いじめ「解決済み」悲劇招く 〜生徒の「大丈夫」は「大丈夫」じゃない〜

   なお、国のいじめ防止対策協議会が、いじめの認知件数を低めに出す都道府県があることから、「認知件数が多いことは肯定的に評価される」と各教育委員会や各学校、及び保護者に改めて周知したそうである。しかし、この通知内容は如何なものだろうか?せめて、「ありのままの件数を報告することは肯定的に評価される」とした方が、余計な混乱が生まれないと思うのだが…。