(前回の続き)
   次に、保育士とのトラブルによる騒音ついて考えてみたい。
「こどものもり」では、保育士が大切な指示を子供達に伝える時は、小さな声で話しかけるそうである。すると、子供達もそれを聞き逃すまいと静かに聞く。なお、静かな声で指示を出すためには、子どもが静かになるまで待たなければならない。ガヤガヤしている中で指示を出すと、そのうちに「静かに聞きなさい!」と先生自身が大きな声を出して注意をする事になり(元々は、子どもが私語をやめないうちに話し始めた指導者の責任であるのだが)、その注意に刺激されるように発達障害系の子どもが更に騒ぐ。更に、先生の指示が子ども達の私語にかき消されて大切な内容が子ども達の耳に届いていないと、理解していない子ども達の動きは、教師の意図とは異なるものとなり、「違います!」「何やってるの!」とまた騒ぎが起きる。つまり、子どもの私語が止んでから指示を出すと、単純にそれだけで余計な子どもの声が無くなるだけでなく、それから派生するトラブルによる騒音も無くなるというわけである。
   また、指導者が「ちゃんと行動させよう!」と、いわゆる「させようオーラ」をピリピリ漂わせていると、その刺激に対して、一部の子どもの「反発スイッチ」がONになり、その子らによって園の静けさが破壊されてしまう。なお、この「させようオーラ」については、以下の投稿を参照頂きたい。
子どもの「反発スイッチ」をONにしてしまう親の「オーラ

しかし、この保育園のように、子ども達に対して「静かで穏やかに話す」意識で接すると、「させようオーラ」は発生しない。ちなみに、この「静かで穏やかに話す」という支援は、以前投稿した「セロトニン5」のうちの一つである。つまり、これに加えて、子供達を見て微笑みながら話しかければ、子供達の脳に安心、安定に導くセロトニンホルモンが分泌され、騒ぐ子どもなど一人もいなくなるだろう。なお、この「セロトニン5」の支援については、以下の投稿を参照頂きたい。
全ての子どもの気持ちを安定させるスーパー支援法「セロトニン5」②
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   
   さて、前回と今回の投稿をまとめると、この保育園では、「主体性」の他に「社会性」の指導も適切に行われているのだと思う。それも、やはり保育士さんが、静かに穏やかに子どもに話して聞かせているために、「社会性」についての話も子どもの心に染み入りやすいのだろう。

   なお、記事によると、「『大人にとって都合の良い保育園』を作っているのではないか?」とか、「今のうちからこんなに静かだと、自分の考えを発言できない意志の弱い大人になるのではないか?」という危惧する声もあるようだが、この園のように穏やかで優しい支援がなされるのであれば、本来「主体性」や「社会性」の指導は、幼児期のうちから行った方が良いものであるし、何をして遊ぶか、どれをどのくらい食べるのかを「自己決定」させているので、自分の考えを自分で決める力(キャリア教育の4つの能力のうちの一つである「意思決定能力」)が育つ。
   つまり、この子供達は、「大人に言われて静かにさせられている」のではない。大人が環境を上手に整えてあげたために、「自分で納得して自分の意思で静かにしている」のであり、前回の投稿での食事のエピソードのように、行動の目的意識の与え方を大人が間違えない限り、将来は、他者の迷惑にならないよう意識しながら、自分の考えをしっかりと発言できる大人に育つことだろう。