【今回の記事】
親切心でも心身に苦痛与えれば「いじめ」 具体例、幅広く 文科省・対策協案

【記事の概要】
「いじめ防止対策推進法」の運用改善を検討する文部科学省の「いじめ防止対策協議会」は12日、いじめとして認知すべき具体例を初めて盛り込んだ防止対策の素案を示した。親切心で行った行為でも当事者の児童らに心理面などで悪影響を与えた場合はいじめとして認知するなど、社会通念上はいじめとは考えにくい行為や、従来は「けんか」として処理していた行為も幅広く拾い上げ、事態の深刻化を早期に防ぐ狙い。
   素案では、算数の問題を解こうとしていたAさんに対し、Bさんが親切心から解き方と答えを教えたところ、あと一息で正解にたどりつこうとしていたAさんが泣きだしたケースを例示。Aさんが苦痛を感じたと認められるため、いじめと認知すべきだとした。一方、Bさんに対しては「いじめ」という言葉を使わずに、Aさんが泣いてしまった理由を気付かせるなどの指導が必要だとした。

 同法は、2011年に大津市の中2男子がいじめを苦に自殺したのをきっかけに制定、13年9月に施行された。付則で施行後3年をめどに法改正を含めた措置を取ることになっている。


【感想】
   現在検討されている“いじめの定義拡大”は、人間同士の交流を妨げる要因となる。ちなみに、現行の定義であっても、好意、悪意は関係ないことになっている。〜「(定義)第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」つまり、友達がどんな行為をしてこようとも、本人が苦痛に感じればいじめと認知されるのである。
   今回は、この定義に具体的な事例を加えるというものである。素案では、「算数の問題を解こうとしていたAさんに対し、Bさんが親切心から解き方と答えを教えたところ、あと一息で正解にたどりつこうとしていたAさんが泣きだした」というケースを例示。Aさんが苦痛を感じたと認められるため、いじめと認知すべきだとした。
「親切心で行った行為でも当事者の児童らに心理面などで悪影響を与えた場合はいじめとして認知する」と規定すると、良かれとも思って行動した子どもに対してかける教師の態度や言動によっては、親切心で行った子どもが逆に注意を受ける等の状況が生まれ、友達のための善行が減る危険性がある。
   また、心身の苦痛は日常的にあり得る。それらを乗り切る耐性も必要である。苦痛を感じれば全て「いじめ」と認知され保護されることは、耐性の弱い人間を育てることにもなってしまう。

   現行、及び修正案、何れにしても、対象となる事例が広がりすぎて、現場では混乱が起き、県によっては、異なったニュアンスで実態を捉えてしまい、調査結果に県同士のズレも起きている。このような事態を改善するためには、もっと定義を限定的にする必要がある。個人的には、「特定の個人に」「繰り返し」という表記が必要だと考える。

   廊下を歩いていたある生徒が、サンダル履きで歩いていた前の友達のズックのかかとを間違って踏んだだけで、踏まれた本人が苦痛な感情を抱いたのでいじめと認知せざるを得なかったという事例も実際に起きている。明らかに、現行の法律に不備があると言わざるを得ない。