これまで、愛着についての話を度々してきました。しかし、どうしても断片的な発信にしかならず、初めてご覧になる方にとっては、内容があちこちに飛んでしまうことで理解が難しかったのではないかと思っていました。
   そこでこれからは、「愛着の話」と題して、愛着の考え方について、順を追ってより分かりやすく話をしていきたいと思います。「No.」もつけるので、仮に読み飛ばしてしまった際にも、順序を追い直して読んで頂けるのではないかと思います。
   実は、この「愛着の話」は、精神科医の岡田尊司先生他の先行研究の考え方をより分かりやすく表現し直し、乳幼児期の養育の大切さを1人でも多くの皆さんに伝えたくて、いつか一冊の本として出版できればと思い執筆してきた原稿の内容です。しかし、売れない本を細々と出版するよりも、今私には、情報共有できるたくさんの仲間がいるのですから、このSNSで発信していく方がずっとたくさんの方の目に止まるだろうと思い、出版は止めて、このブログへの投稿を思い立ちました。皆さんには、一冊の本を区切りながら続けて読んでいくということになるため、長い目でお付き合い頂ければ幸いです。
   また、これまで私が断片的に述べてきた内容が、再度述べられるという場面も出てくるかと思いますが、より分かりやすい表現になっていると思いますので、ご理解頂ければと思います。
   また、これからも、時々は時事ネタを取り上げて、今の世の中にある、愛着、子育て、学校教育、更には特別支援教育が関わる問題について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
   前置きが長くなってしまいました。それでは、「愛着の話」No.1からご覧ください。
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   あるテレビ番組での事です。芸能人の親子関係について特集する内容でした。その番組の中で、ある女性の芸能人の方が涙を流しながらこう言いました。
私は、我が子に何一つ不自由させる事なく育ててきましたし、あの子が楽をできるように一生懸命働いてきたました。それでもあの子は、私に対する敵愾(てきがい)心を捨てる事は決してありませんでした。」と。
   この方はかなりのベテラン大物芸能人で、おそらく経済的にかなり恵まれていた方だったようで、子どもさんが望むものは何でも買い与えていたようでした。しかし、その母親がしたことはそれだけでした。金品しか与えてもらえなかったその子どもさんは、大人になった今でも、自分の母親を憎み続けて生活してきていたそうです。
   しかし、贅沢な暮らしをさせる事が「愛情」ではありません。その子どもさんは、その事を母親に対して訴えていたのではないでしょうか。

   また、平成9年に神戸連続児童殺傷事件を起こした当時14歳だった少年(別名「酒鬼薔薇聖斗」)は、当時の事件の鑑定人によると、「一歳までの母子一体の関係の時期に、少年に最低限の満足を与えていなかった(精神医学の専門用語でいう愛着障害)疑いがある」とされています。しかし、母親は、我が子が幼稚園に行って恥をかくことのなようにと、団体生活で必要な生活習慣や能力をきちんと身につけさせようと、排尿、排便、食事、着替え、玩具の片付けなどを早めに厳しく躾けたそうです。(母親いわく「スパルタで育てました。」)その結果少年は、母の過干渉によるノイローゼと医師から診断を受けました。その後、ナメクジ、カエル、そして猫を解剖したり虐待したりしながら、ついには、小学校男子児童の頭部を切り落とし、その頭部を校門の前に置くという猟奇的な行為に至ってしまったのです。これだけ残虐な犯行だったために、だれもが大人による犯行だと思っていました。それだけに、当時の社会に与えた衝撃はあまりにも大きなものでした。(文藝春秋20155月号より)事実、他虐的で動物や自分より弱いものに対する残酷な面は、愛着障害の症状とされています。少年の母親も「最低限の生活技能を厳しく躾けてあげるのが子どものためになる」と考えたのでしょう。しかし、それも正しい「愛情」の姿ではなかったのです。
   金品を与える事でもなく、厳しく躾けることでもない。それでは、本当の「愛情」とは一体どんなもののことを言うのでしょう。(続く)