【今回の記事】
序ノ口力士の敗退行為と今後


【記事の概要】
   前代未聞の取組があったのは秋場所3日目のこと。西序ノ口29枚目の服部桜(18=式秀)が、同26枚目の錦城(18=九重)との一番で敗退行為を繰り返した。
 服部桜は最初の立ち合い直後、両手を前についた。立ち合い不成立とみなされ、やり直しの2回目はヘッドスライディングのように自ら転んだ。3回目は、後方に尻もちをついた。いずれも相手に触れる前のことだ。4回目にようやく立ち合い、無抵抗のまま引き落とされた。
   この取組の映像は、非公式ながらYouTubeにもアップされている。(以下参照)
「2016年9月場所3日目 服部桜ー錦城」

【感想】
   まず、上記のYouTubeでこの取り組みを見て頂きたい。

   服部の一番。服部の「敗退行為」(戦わず故意に負けること)が3度続いた。観客からは、甲高い笑い声が聞こえてきた。しかし、私は服部のあの姿を見て心が熱くなった。

   彼は、おそらく自閉症スペクトラム(ASD)の傾向がとても強い人間だと思う。
   ASDとは、その特質を誰もが大なり小なり持っている特徴の事で、ある一定基準以上持っている人が、正式に自閉症スペクトラム障害と診断される。この事については、以下の投稿で触れているので、ご参照ください。
あなたも私も“自閉症スペクトラム” その3
ただし、知的な遅れがないと、健常者と見た目が変わらないので、誤解を受けやすいのだ。

   さて、このASD。最大との特徴は、「過度な不安感」「過度の感じやすさ」である。
   発達障害の人は、環境が整えば通常通り行動できるのだが、今回はその環境が整っていなかった。実はこの服部、この取り組み前に、首を痛めていたのである。通常頭からぶつかる立会いをする相撲では、致命的な怪我である。頭からぶつかった時の衝撃がよほど不安だったのだろう。このように、環境が整わなければ、普通の人から見ると、信じられないくらいオーバーな行動をとってしまうASD。観客からは、甲高い笑い声が聞こえてきた。何度も自分から転ぶその姿がこっけいに映ったのだろう。
   さらに何度も審判長の方をチラチラみる服部。審判長が怒っていないかとにかく心配なのである。

   また、ASDには、「決められた約束事は、その通り実行する」という特質もある。
   その気になれば、立会いでかわる(頭から当たらずに身をかわす)という手もあるのである。しかし、「立会いは頭から当たるもの」という約束事を最後までかたくなに守ろうとするその姿は、ASDそのものだった。立会いでかわる手がある事は、もちろん彼も知っている。しかし、分かっていても、決められた通りにしか体が動かないのである。これが、ASDの「正直さ」という長所でもあり短所でもある

   しかし、彼はゆっくりではあったが、最後には頭から当たった。不安感に負けまいと懸命に努力する彼の姿には胸が熱くなった。

   一般の人には、どうしてもこっけいに見えてしまうASDの行動。このことは、あの「号泣議員」野々村竜太郎氏にも共通することである。彼が号泣する姿を誰もが笑った。彼の事については、以下のブログを参照して頂ければご理解頂けると思う。
知ってほしい野々村竜太郎議員の“わけ”

   私は、野々村氏の誤解を解こうと思い、地元の新聞社にメールを送った。
   発達障害者支援法が施行されて、もう10年以上経つのですが、発達障害者への理解はなかなか進まない。一日も早く、発達障害のことが世の中の人たちに周知されてほしい。