今回は、「『叱る基準』と『守る基準』」というテーマについて考えてみたいと思います。

   まず、「叱る基準」について。つまり「どんな時に叱るか」ということです。
   保護者の方々は、「自分はこういう時に叱る」という叱る基準がはっきりしていらっしゃるでしょうか?もしも、叱る基準が明確になっていないとすると、おそらく、ご自分の今までの経験から学んだ規範意識の中で強く心に残っている基準を基に叱っている、という方も多いのではないでしょうか。しかし、一人の大人がこれまでに学んできた規範意識というのは多岐にわたります。。「嘘をついた時」「他人に迷惑をかけた時」「暴力を振るった時」等など。
   しかし、叱られる側のまだ幼い子どもにとっては、今まで何十年も生きてきた自分の親が、どんな規範意識を強く持っているかなどということは知る由もありません。
   以前私が勤めていた小学校で、知的障害者をバカにしたセリフ(「知的」を略した「ちて」)で遊んでいた子供たちがいました。その子供たちにとっては、「障害」に対する正しい認識はまだありませんでしたし、しかも、そのセリフは、ある子どもが中学生のお兄ちゃんから聞いたもので、子供たちにとっては罪の意識はなかったのです。しかし、それを聞いた我々大人は、「障害」に対する正しい理解を持っていたため、「障害者を馬鹿にするとはけしからん!」と、その子供たちを厳しく叱りつけました。すると、その子どもたちの中の一人が、「中学生でもやっている遊びがどうしてダメなの?!」とショックを受け、それ以来、登校拒否に陥りました。それほど、子供の価値観は大人に比べてまだまだ未熟なのです。
   精神科医の岡田氏によれば、どんなことで叱られるかが予測できない叱られ方をされると、子どもは精神的に混乱し、不安定型愛着スタイルの持つ人間になる危険がある、とのことです。そのことは、先の登校拒否に陥った子どもの例を考えれば納得のいくところです。つまり、子どもにとっては、「自分の親は、このような時に叱る」という見通しが必要だということです。ぜひ、「どんな時に子どもを叱るか」という基準をはっきりさせて、子どもに予告してほしいと思います。

   長くなってしまいました。もう一つの耳慣れない言葉、「守る基準」については、次回にお話ししたいと思います。