「三ちゃん農業」はもうおしまいに | 偕楽園血圧日記

「三ちゃん農業」はもうおしまいに

 いきなりむちゃくちゃ暑い! 水戸は32.1度だと。なんだこりゃ。


 時事通信が、

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 TPPに有権者の審判=貿易自由化、割れる賛否―検証・安倍政権【16参院選】

 今回の参院選は、日米など12カ国が合意した環太平洋連携協定(TPP)や、政府主導の農協改革に対する有権者の審判の機会ともなる。安倍晋三首相はTPPをてこに輸出を拡大する「攻めの農業」を強調するが、自民党が伝統的に票田としてきた農村部では、賛否が割れている。

◇輸出拡大の掛け声
 TPPが参加各国の承認を経て発効すると、世界全体の国内総生産(GDP)の4割近くを占める巨大な自由貿易圏が誕生する。農家や企業が海外に販路を広げる好機になるとして、安倍政権はTPPを「成長戦略の切り札」と位置付ける。
 安倍首相は今月9日、山形市内での街頭演説で農林水産物・食品の輸出額を2020年に1兆円へ伸ばす政府目標の1年前倒しに言及した。しかし、輸出拡大策やTPPの影響に関する議論はまだ十分でなく、「政府の見通しは甘い」(関西の地方自治体)との声も少なくない。
(後略)
 時事通信 6月17日(金)16時23分

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 こんな記事を書いていたのだが……なんだかなぁ。
TPPに有権者の審判」もなにも、TPPのことは(2016/04/09の記事、議員の数の話の前に、こいつらをクビにする必要があるんじゃないか?(怒)) で書いたように、我々一般人に変わって「公開された2900ページの協定文書」について精査するはずの国会が、民主党(現・民進党)の「甘利のつるし上げ」や「『非公開だと自分たちで決めた交渉過程の文書が黒塗りだった!』騒ぎ」などでまったく機能せず、深い審議が行われなかったではないか。
 おかげでいまだにヤフージャパンのニュースコメント欄には「日本を米国に売り渡すTPP!」と書きこむ人間が居座るなど、くだらないアジテーションが続けられている。

 これは、選挙になるともっとひどくなるのだろう。自分たちで内容の精査の邪魔をしておきながら「政府は丁寧な説明をしない!」と喚き、レッテルを張って有権者を釣ろうとする民進党の戦術は、「安保法制」の時とまったく同じである。まったくいい加減にしろ! だ。


 とにかく「政権叩き」をしたい人間は、このTPP絡みで「農業が死ぬ」ということばかりをいうが、TPPが片務的ではないというところに目をつけるならば、今我が国の農業現場では、

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 「所得増えた」4割 需給調整やPR期待 農産物輸出50事業者調査

農業所得
(グラフ、日本農業新聞より。農産物輸出と農家の所得に関するアンケートの結果)

 日本農業新聞は、農産物・食品の輸出に取り組むJAや企業、農家ら50の事業者に、輸出に関するアンケート調査を行った。現時点で「輸出が農家の所得増大につながっている」と回答したのは42%にとどまり、「所得増大につながっていない」「どちらとも言えない」が合わせて58%と半数を超えた。輸出には販路拡大やPRに利点があると期待する声は多いものの、農家の直接的なもうけにつなげて輸出拡大の意欲を高めていくには、まだ課題が多いことが浮き彫りになった。

 検疫、物流、日持ち課題
 調査は50の事業者に「輸出が農家の所得増大につながっているか」を3択で聞いた。輸出に取り組む理由や経営の中での輸出の位置付けも併せて聞いた。21社(42%)が「所得増大につながっている」と回答。「所得増大につながっていない」は14社(28%)、「どちらとも言えない」15社(30%)だった。
 輸出向けと国内向けの出荷価格の水準に言及した社のうち、農家所得がどちらも変わらないとしたのは18社。国内向けより輸出向けの所得が低いとした企業は3社、国内出荷より輸出向けが高いとした社は2社だった。
 ただ、「所得増大につながっていない」と回答した社も含めて、輸出にはさまざまな期待がある。メリットで最も多いのは「販路拡大」「国内需給の調整機能の役割」で、21社が挙げた。豊作時や需要減への対応策といった側面があり、国内価格の安定に主眼を置く社が多い。
 新潟県佐渡市で米を輸出する「佐渡相田ライスファーミング」は「国内の米消費の落ち込みが厳しい中で、輸出に活路を見いだしたい。単純にもうかるという理由では輸出していない」と説明。セロリなどを輸出する長野県JA信州諏訪も「国内需要の引き締めで輸出している。輸出で稼ぐという考え方ではない」と明かす。
「輸出することでブランド化につながり、国内需要が活発化する」(葉などのつま物を輸出する徳島県上勝町(株)いろどり)、「国内市場に向けて大きなPRになる」(かんきつを輸出するJA広島果実連)など、宣伝効果を強調する社もあった。
 メリットを感じる一方で、「輸出向けの出荷数量はわずか」という意見も目立った。
 多くの課題も挙がっている。相手国の基準に合わせた飼料給与や梱包(こんぽう)など「手間が掛かる」「現地まで行って商談するのにコストがかかる」などの意見が相次いだ。そうした煩雑さを考慮すると、所得増大につながっているとは言いにくいと判断する社もある。輸出を広げていく上での障壁には「検疫」「物流」「日持ち」が挙がった。
 調査は5月下旬に実施した。農水省が輸出取り組み事例として紹介するJA、企業、農家を無作為に抽出し、電話で聞いた。
 日本農業新聞 6月7日(火)13時50分

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 こういうことも起きているという。

 日本農業新聞は「儲かっていないがどちらともいえないとあわせて六割もある」と書くが、海外販路に手をつけ始めたばかりで四割もの農家が効果を上げているというのは、尋常なことではない。他業種にいきなり四割の事業所が「収益が上がった」と答えるような業界があるかどうか、考えてみたらいい。

「梱包に手間がかかる」などというのは「そもそも輸出に積極的に取り組むのが面倒」だといっているのだから論外だが、商談とか権益に関しては、 

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 <農産品ブランド1年>地理的表示 登録12産品

 地域の農産品ブランドに国がお墨付きを与える地理的表示(GI)保護制度がスタートし、今年6月で1年が経過した。農林水産省は2020年までに各都道府県で最低1産品の登録を目標に掲げるが、登録済みは10県12産品にとどまる。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への対応が迫られている政府は、GI普及によるブランド化で農産物の輸出力強化を図りたい考えだが、制度のさらなる認知度向上が課題となりそうだ。
「GI登録された日本に誇る食材、江戸崎かぼちゃのスープをご賞味ください」。高島屋日本橋店(東京都中央区)の青果売り場では11日、茨城県のJA稲敷の生産者が販促イベントを開いた。
「国のお墨付き」をアピールしたい生産者側の求めに、店側が応じて実現した。完熟で収穫するため甘みがあり、果実のオレンジ色が濃いのが特徴。同店の井上悠乃・生鮮食料品売り場担当は「価値を求めるお客様のニーズに合う」と、GI登録産品が増えることを期待する。
 GIは生産者団体が登録を申請し、専門家の審査などを経て、農相が登録の可否を決める。農水省は昨年6月に受け付けを開始し、昨年12月「江戸崎かぼちゃ」など7品を登録し、今年3月までに5品を追加した。「通販の販売数量が3倍に増えた」(あおもりカシス)、「量販店からの引き合いが強くなった」(鳥取砂丘らっきょう)など、登録効果も出てきた。
 だが、なかには登録申請を拒否された農産物も出た。千葉県四街道市の飼料の生産者組合が申請した「生牧草」は「千葉県で開発されたが、全国で栽培されている品種」との理由で、GIにはふさわしくないとされた。農水省にはすでに50産品以上の申請が届いているが、準備不足などから「提出資料の不備があり、審査に時間がかかっている」(農水省)ケースも多い。
(後略)
 毎日新聞 6月13日(月)23時45分

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 政府がこういう仕組みを作っているのだから、それを利用することも考えるべきだろう。

 また、

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 三井住友銀行が農業参入 秋田に米生産の新会社設立

 三井住友銀行は15日、秋田県の農業法人などと新会社を設立し、米の生産を始めると発表した。農業分野は、政府の農業改革で今後農地の集約化や大型化が進むとみられる。三井住友銀は新たな資金需要が出ると見込み、自ら農業に参入して、貸し出しの増加などにつなげる狙いがある。
 新会社は自ら農地を保有して農業を手がけることができる「農地所有適格法人」。7月に秋田県大潟村の「大潟村あきたこまち生産者協会」が過半を出資して設立する。三井住友銀は5%の株式をもち、秋田銀行やNECキャピタルソリューションも出資する。
(後略)
(久保智)
 朝日新聞デジタル 6月15日(水)15時41分

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 こういう事例にみるように、

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 2015年の設立が前年より7割増加した「農事組合法人」

農業組合法人
(グラフ、東京商工リサーチより。農事組合法人新設法人年間推移)

 2015年(1‐12月)に全国で設立された「農事組合法人」は750社(前年比70.8%増)で、調査を始めた2009年以降で最多を記録した。2015年に全国で新設された全法人(新設法人)は12万4,996社(前年比4.5%増)と伸びが鈍化しており、農事組合法人の伸びの大きさが際立つ格好となった。
 農事組合法人は、農業に関する共同利用施設の設置や農作業の共同化などを手掛け、発起人、組合員とも農業従事者が条件だが、設立手続きは他の法人格より容易で諸経費も小さいメリットがある。
(中略)
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(309万社)から、「農事組合法人」の法人格で2015年(1‐12月)に設立された法人データを抽出し、分析した。 

2015年の設立750社 前年比7割増
 2015年の農事組合法人の新設数は750社で、前年より70.8%(311社)増加した。2014年の新設法人数は439社(前年比1.1%減)と落ち込んだが、2015年は再び大幅に増加した。
 新設法人に占める農事組合法人の構成比は0.6%で、2011年の0.3%からわずかに上昇した。他の法人格の構成比では、株式会社が79.9%から71.8%へ減少、合同会社は8.8%から17.6%へ大幅に伸長した。

都道府県別、新設法人数は富山県が最多
 都道府県別の農事組合法人の新設数は、トップが富山県の73社(前年比180.8%増、構成比9.7%)。前年の26社から2.8倍増と急増した。次いで、福岡県44社(同46.7%増、同5.8%)、岩手県43社(同115.0%増、同5.7%)、滋賀県43社(同19.4%増、同5.7%)、佐賀県40社(同1233.3%増、同5.3%)と続く。
 東北、九州(沖縄県除く)の新設数はともに152社で、2地区だけで2015年の新設農事組合法人の40.5%を占めている。増加率トップは、佐賀県の1233.3%(新設数3→40社)。次いで、長崎県の1050.0%(同2→23社)で、九州2県の新設数が突出した。

法人格別、農事組合法人が増加率トップ
 法人格別の新設数では、株式会社が8万9,756社(構成比71.8%)で全体の7割を占めた。次いで、合同会社が2万2,053社(同17.6%)、一般社団法人が5,557社(同4.4%)、特定非営利活動法人(NPO法人)が2,540社(同2.0%)、医療法人が1,416社(同1.1%)と続く。
 農事組合法人は750社(同0.6%)で新設数では第6位だが、前年(2014年)からの増加率は70.8%増(311社増)でトップだった。
(後略)
 東京商工リサーチ 6月15日(水)13時0分

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 ということにもなっている。

「TPPで農業壊滅」と騒ぐ人間が出てきた数年前に、「そんなものなくても日本の農業の未来は壊滅」と書いたその事態が、少しずつ改善の方向に動き出しているのだ。
 法人組織で農業をやっていくことになれば、高齢化の問題にも解決の光が見えてくるだろう。「法人」には監査が必要になるので、大企業が入ってくればくるほど、今問題になっている外国人技能者をこき使っている話にも、メスが入れられるようになる。
「先祖代々で~」という仕組みが崩れれば、地方への人口移動というところでもいろいろ考えが出てくることだろう。


「面倒くさい」「今まで生活習慣として米を作っていた。これからもそうしていたい」といっているような農家には厳しい未来が待っているだろうが、能動的に動こうという農家には、TPPは道を開くことにもなろう。

 はじめにTPP参加を決めた民進党は、

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 民進党は参議院選挙の公約を発表し、アベノミクスは失敗したとして、格差の是正に重点を置いた経済政策に転換することや、憲法の平和主義を守り抜くため9条の改正に反対することなどを打ち出しています。
(中略)
 TPP=環太平洋パートナーシップ協定については、日本の国益が守られておらず、今回の合意に反対するとしたほか、農業者の戸別所得補償制度を恒久化し、農業を地方再生の柱として打ち立てるとしています。
 NHKニュース 6月15日19時00分配信「民進 参議院選挙公約『格差是正に重点 平和主義守り抜く』」より

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 政権を取った時にマニフェストで謳った「農家の社会主義化」を再び掲げて参院選に挑むという。

 この何周も遅れた現実無視の政策でTPPを「有権者の審判」にかけようというのならば、彼らの未来眼の無さを我々有権者は「審判」にかけなくてはならない。


 おまけ。

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 日本人の金融知識は独英より低い 日銀リテラシー調査

 日銀が17日発表した18歳以上を対象に実施したお金の知識、判断力を把握する「金融リテラシー調査」によると、日本人の金融知識はドイツ、英国などに比べ低いことが分かった。
 質問は「100万円を年率2%の利息が付く預金口座に預けると、口座の残高は」や「5年後の残高は(税金除く)」などで、5問の平均点はドイツが67点、英国が65点だったのに対し、日本は58点だった。質問は別だが米国と比べた場合も、米国の57点に対し、日本は47点にとどまった。
 日銀は共通質問以外の独自の調査も実施した結果、「正答率は18~29歳が最も低く、年齢が上がるにつれ正答率も上昇する(70代は若干低下)」、正答率が高い人は「年収、金融資産額が高い」「金融・経済情報をみる頻度が高い」などの傾向があったという。
 こうした現状を踏まえ、日銀では学生時代や住宅ローン、教育資金を貯める際に金融教育の学習機会を設ける必要があるとみている。調査はリーマン・ショックで金融知識がないまま流動化証券を購入し、大きな損失を出したケースが相次いだことを踏まえ、世界的に実施されている。
 今回の調査は2月29日~3月17日に2万5000人を対象にインターネットで実施した。大規模の調査は初めてという。
 SankeiBiz 6月18日(土)8時15分

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 まあそうだろうねぇ。日本人は長い間「株や投資はギャンブル」という価値観にとらわれ、「銀行に預金するのが一番」という感覚で金融を捉えてきたから。

 だが、おかげで「マイナス金利で庶民の暮らしが~」といって政権叩きをするような馬鹿が跋扈するようになっているのだから、この低リテラシーは罪でもある。
 いうまでもなく「マイナス金利」というのは、銀行が預金として集めた金を日銀に預けておくだけで金利が得られていた体制を「一定以上のものからは手数料をとる」という形にしたものを象徴的にいっているだけのことで、「一般人の銀行預金の金利がマイナスになるもの」ではない。
 日銀はそうすることで銀行が抱える金を増やし、それを彼らがきちんと市中に回すようにということでやっているのだ。その金がうまく回っていないというのならば、それは銀行の怠慢である。

「マイナス金利で庶民いじめ」といっているような輩に騙されないだけのリテラシーというものを、みんなが持つようにしたいものだ。


 本日の模型。

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 新国立競技場の模型完成…聖火台はまだ リオで展示へ

モックアップ
(写真、朝日新聞デジタルより。新国立競技場の模型を視察する遠藤利明五輪担当相(右)と馳浩文部科学相=17日午後2時6分、東京都港区北青山2丁目、嶋田達也氏撮影)

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の模型が完成し、17日に報道陣に公開された。8月6日(日本時間)に開幕するリオデジャネイロ大会の期間中、現地で情報発信拠点となるジャパンハウスで展示される。
 建設を担当する大成建設や建築家の隈研吾氏らのチームが進めている基本設計案に基づいて作った。実物の500分の1で、120センチ四方。設置場所が未定の聖火台はついていない。模型の国内での公開は未定。
 新国立競技場は19年11月の完成予定で、整備費は1500億円前後。費用は、国が2、東京都が1、スポーツ振興くじ(toto)が1の割合で負担する。
 この日、馳浩文部科学相とともに模型を視察した遠藤利明五輪担当相は、辞職する舛添要一東京都知事に代わる新知事の下で負担割合が見直される可能性について「大会成功を公約とする方が当選すると思うので安心、信頼している」と述べた。
 新国立競技場をめぐっては昨年5月、舛添都知事が、旧計画の整備費の負担割合で下村博文文科相(当時)の対応を批判。計画の白紙撤回のきっかけになった。(阿久津篤史)
 朝日新聞デジタル 6月17日(金)20時1分

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 いろいろあった新国立協議場、まだ聖火台がどうのという者たちもいるようだが、シドニーオリンピックなどを思い出せばわかるように別に固定でなければならないというものでもなし。

 開会式の時にはグラウンドでセレモニーをした後は、正面入り口前にあるエントランス広場に移動させておけばいいのではないか?