歪んだ正義が「無知」を「誤報」に仕立て上げる | 偕楽園血圧日記

歪んだ正義が「無知」を「誤報」に仕立て上げる

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 原子力船「むつ」事故から40年 報じた記者3人が再会

記者三人
(写真、朝日新聞デジタルより。「むつ」の原子炉の前で。左から吉田徳寿、和島善男、高間徹の各氏=11日、青森県むつ市のむつ科学技術館、隈元信一氏撮影)

 原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こしてから9月1日で40年。当時の乗船記者3人が、今月11日、そろって青森県むつ市のむつ科学技術館で、展示されている原子炉と再会した。
「我々が乗ってなかったら、事故は隠蔽(いんぺい)されただろう」。40年前に乗船したのは、共同通信の高間徹さん(77)、東奥日報の和島善男さん(74)、デーリー東北の吉田徳寿さん(71)。船内の異変に3人が気づき、翌朝に放射線漏れの事実が伝えられた。地元紙の2人は自社に原稿を送り、朝日新聞などは高間さ>んの原稿を使った。
 その後、埼玉に住む高間さんは青森を訪れる機会がなかった。「40年の節目だから」と吉田さんに誘われ、来る気になったのは、3年前の東京電力福島第一原発事故があったから。過酷事故に対処する手順書を黒塗りで出した東電などの姿勢に憤ってきた。
 隈元信一
 朝日新聞デジタル 2014年8月15日14時48分

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 なるほど、彼らが「むつ」の事故を「誤報」して日本人の「放射能アレルギー」を刺激し、原子力動力の研究を縮小させたその元凶か。
 朝日新聞に倣って「四十年経って誤報と認める」ために出てきた……わけではなさそうだな。

http://www.sydrose.com/case100/212/(SYDROSE 知識データベース「失敗百選 ~原子力船むつの放射線漏れ~」 ) がわかりやすくまとめてくれているので一読してもらえば分かるが、「むつ」の事故は「放射性物質漏れ」ではない
 要は「放射線遮蔽の不備」。「反原発」派が大好きな「設計の欠陥」の話なので、そこを論点にすべきものである。
 そして、そういうものであるだけに、同サイトでも指摘があるように「原因究明も分かりやすく、問題点の解決の道筋も見つけやすい」話である。

 だが、上記の記者たちが「放射能漏れ!」という形で報道したために社会は「放射能恐怖一色」になってしまった。
「むつ」はその事故の正確な分析をするための母港も失い、何年にも渡ってたらいまわし。動力用原子炉の研究も進まなくなった。
 それは回り回って廃炉技術の研究にも影響を与えているだろう。(ちなみに、福島第一の話で「廃炉に四十年」「困難」ということを口にする人間を見かけるが、おそらくそういう人間のほとんどが、その口ぶりからして、我が水戸市の近隣東海村で「既に原子炉の廃炉解体が進んでいるという事実」を知らないように見受けられる)

 原子力船が実際に実用価値をもつかどうかは、現在軍艦以外の当該船がほとんどないことからかなり怪しいが、その研究は別のところで生きることもある。
 例えば、軽量化と堅牢性の技術が進めば、地震に強い原子炉ができることにもなる。そうすれば「反原発派」の大好きな「東京湾原子炉」ができていた可能性もあるだろう。
 だが、報道が「間違えた」おかげで世論がねじ曲がり、それが断たれることになってしまった

 この事例はまさに「教訓」としてみるべきなのだが、どうやら彼らにはまるでその自覚はなく、福島第一原子力発電所の事故で「また同じこと」をしようとしているようである。


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 川内原発 審査書の意見募集終了

 原子力規制委員会が原発の新しい規制基準に初めて適合しているとした鹿児島県にある川内原発の審査書の案に対する一般からの意見募集が15日、締め切られました。
 地震対策への意見や規制委員会が今回募集の対象としていない防災に関する意見も寄せられ、今後の対応が注目されます。
 九州電力が進めている川内原発1号機と2号機の安全対策を審査してきた原子力規制委員会は先月、「新たな規制基準に適合している」とする初めての審査書の案をまとめ、一般からの意見募集が行われました。
 意見募集は15日締め切られ、規制委員会によりますと集計はまだ行われていませんが、今月4日現在で4000を超え、さらに増えているとみられます。
 意見の提出を呼びかけている市民団体によりますと、「想定する最大規模の地震の揺れが過小評価されている」など、地震や津波、それに重大事故への対策をもっと厳しくすべきという意見のほか、「法律を整備し、規制委員会が防災や避難計画にも責任を負う態勢にすべきだ」といった今回、規制委員会が募集の対象にしていない防災に関する意見も出されているということです。
 寄せられた意見を踏まえ今後、規制委員会がどのような審査書を最終的に取りまとめるのかや原発周辺地域の防災に関する意見にどう対応していくのかが注目されます。
 一方、九州電力は再稼働に必要な設備の詳細設計に関する資料の提出が遅れていて、地元の合意が得られた場合でも、九州電力が目指す川内原発の再稼働は12月以降になる見通しです。
 NHKニュース 8月16日 4時14分

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(2014/08/14の記事、教育は迷信に勝てないのか(ため息)) で取り上げた「原子力規制委員会」の意見募集が締め切られた。
「予想通り」というか「煽る『市民団体』がいるから当たり前」ととるべきか、技術的に「安全基準」を語るものではない意見も多数寄せられたという。

 やれやれである。
 NHKは「規制委員会が募集の対象にしていない防災に関する意見も出されている」から「規制委員会がどのような審査書を最終的に取りまとめるのかや原発周辺地域の防災に関する意見にどう対応していくのかが注目されます」というが、「周辺地域の防災に関する意見」などというのは委員会が図る仕事ではない。それはそのまま地元自治体に回してしまうべきものである。

想定する最大規模の地震の揺れが過小評価されている」にしても、ヤフージャパンでコメントつけている人間のような「数千ガルに設定しろ!」というような空理空論を振りかざすだけのものもあるのではないか? ただ「荒唐無稽なものでも意見しておき、それが反映されないことで『火つけの種』にしよう」とするだけのために。
 だから「意見の提出を呼びかけている市民団体」などというものが出てくる。
 NHKにはいい加減、こういう時にはきちんとその団体の名前を出すように望む。その背景によってはしっかりと「左翼団体」と表現することも。
 彼らは「右翼団体」というのははっきりというのだから、「左翼団体」についてもそれを言及するべきで、それをしないのは「差別」でありまた「報道しない自由」という「報道の死」の告白にもなる。


 国民生活に直結するエネルギー議論で、「むつ」報道の二の轍を踏むことは許されない。
 福島の事故から三年、既に各報道機関はそのレールを進んできているが、「誤報」を改めることに関して「時遅すぎる」ということはないのだ。


 おまけ。

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 <秘密保護法>「必要性弱い」 11年、内閣法制局が指摘

 2011年9月に初めて作られた特定秘密保護法の原案に関する政府内の協議で、「法の必要性(立法事実)が弱い」と内閣法制局に指摘されていたことが分かった。情報漏えい事件が少ないことなどが理由だった。特定秘密保護法には法律家から「立法事実がない」と批判があるが、政府内にも同様の異論があったことになる。【日下部聡、青島顕】
 内閣情報調査室(内調)は11年9月、内閣法制局の審査を随時受けながら法案を作り始めた。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の映像がインターネットに流出したことを機に、民主党政権が秘密保全法(当時)制定の検討を始めたためだった。
 毎日新聞の情報公開請求に開示された内調作成の「内閣法制局との検討メモ」によると、法案の素案に関して内調は11年9月20日、法制局と協議。法制局から「立法事実が弱いように思われる。防衛秘密制度を設けた後の漏えい事件が少なく、あっても起訴猶予のため、重罰化の論拠になりにくい」と指摘された。
 防衛秘密は01年の自衛隊法改正で導入され、秘密を漏らした隊員らは5年以下の懲役と定められた。適用は08年の中国潜水艦の情報の漏えい事件のみで、容疑者の空自1佐は起訴猶予処分だった。しかし内調はこの罰則を10年に引き上げることを想定。実際に特定秘密保護法でもそう定められた。内調は「ネットという新たな漏えい形態に対応する必要がある」と説明したが、法制局は「ネット(経由の漏えいの危険)と重罰化のリンク(つながり)が弱いのではないか」とも指摘した。
 その後も11月15日の協議まで、内調は内部告発サイト「ウィキリークス」を例示するなどして、ネットによる漏えいの危険性を強調。法制局は「重罰化への十分条件にはなっていない」と慎重な姿勢を保つ一方、「大きな補強材料となるだろう」とも述べて一定の理解を示した。これを最後に、昨年4月までこの件を議論した形跡はない。昨年5月以降の記録は未開示だ。
(中略)
◇抽象的な立法事実
 高作正博・関西大教授(憲法)の話 国会審議でも政府は重大な情報漏えい事件として5件を例示したが、ほとんどが起訴猶予で立法事実としては弱い。警視庁の国際テロ対策資料がネット上に流出した事件の民事訴訟判決で今年1月、東京地裁が指摘したのは警視庁の情報管理体制の不十分さで、法の不備ではなかった。既に外国と情報も共有しており、立法事実としては抽象的だ。法制局の指摘は特定秘密保護法にも当てはまるのではないか。
◇【ことば】立法事実
 法律を作ったり改正したりする際に、その必要性を根拠づける事実のこと。法律が憲法に違反していないかどうかを裁判所が審査する際、その有無が判断基準の一つになる。
 毎日新聞 8月17日(日)8時0分

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 毎日新聞が「思い出した」ように「特定機密保護法」の揚げ足取り記事を書いているが、2011年にこういう論議がされたからといって、2013年の内閣法制局の動きが否定できるとでも思っているのだろうか?
 故・小松内閣法制局長官(当時)の答弁を、彼らは何も聞いていなかったのだろうか?

 この2011年は民主党政権であったため、「機密の保護」について「厳しい縛りができると困る」人間の意思が介在していた可能性もあるだろう。「組織ぐるみで漏洩」をしていれば、「漏洩事件」も少なくなる。
 なんといっても「内閣法制局は行政の一部門」であって、内閣の監督下にあるのだ。「自分たちの主張に都合のいいところ」だけをつまみ食いして「法の番人」であるかのようにいうのは卑怯者の行為である。

 先日テレビのザッピングをしていたら、池上彰氏が「日本は報道の自由が低い。それには『特定機密保護法が成立した影響があるとされている』」という「解説」をしていた。
 が、記者仲間が記者のいうことを元にして順位づけをすれば、それは「自分たちにとって不利益をもたらす国」の順位が低くなるのは当たり前だろう。
 これで順位が下がるのならば、もっと厳しい「スパイ防止法」のあるアメリカやヨーロッパ各国が日本より「上」にあるなど筋が通らない。
 同氏は「3.11で政府が隠蔽」としれっと言っていたが、未確認情報を検証もなく流すことが「正しい」といわんばかりの人間が、テレビでは「素晴らしいジャーナリスト」扱いされているのだから、なるほど日本の「報道の自由度」が低いのも当たり前。彼らが自分で「報道規制」をして「特定秘密保護法が悪い」と騒いでいるだけのことだ。
(ちなみに池上氏は、「こどもニュース」をやっていた時代にバリバリの左巻き史観で「戦争」を子役に語っていたことがある)


 本日のお祭り。

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 岡山の奇祭、走るゴーサマがお遊び 逃げなきゃ不幸に

ゴーサマ
(写真、朝日新聞デジタルより。境内でお遊びをするゴーサマ(左から2人目)=15日午前1時、美咲町両山寺)

 神が乗り移った男性「ゴーサマ」が境内を走り回る「お遊び」で五穀豊穣(ほうじょう)を願う山岳信仰の奇祭「二上山護法祭(ふたがみさんごほうさい)」が14日深夜から15日未明、岡山県美咲町の両山寺であった。黒装束に白い紙製の帽子「紙手(しで)」をかぶったゴーサマの力走に約300人の見学者から歓声が上がった。
 護法祭は県指定の重要無形民俗文化財で今回が739回目。修験者は14日午後9時半から3回、清めのホラ貝を吹いた。霧が立ちこめ、神秘的な雰囲気に包まれた15日0時半過ぎ、たいまつの光で照らされた境内にゴーサマが現れた。
 お遊びが始まると、ゴーサマの後を警護役の子ども約20人が「ギャーテー ギャーテー」とはやしながら走った。ゴーサマに捕まると、3年以内に不幸が訪れるとの言い伝えがあり、見学者は悲鳴を上げながら逃げ回った。
 朝日新聞デジタル 8月16日(土)8時2分

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 また奇妙な祭の話題が。本当に日本各地には不思議な祭があるなぁ。
「ギャーテーギャーテー」という掛け声は般若心経の一説のように取れるが、だとするとこれは純粋な山岳信仰というよりは山伏など密教信仰などが縁起ということなのだろう。

 調べてみると「ゴーサマ」というのは「護法実」という字があてられ、「護法様」がなまって「ごー様」ということだが……この「ゴーサマ」が「神憑き」であるのに「捕まると不幸になる」というのは、どういうことなのかなぁ。
 多くの祭りでは、「追いかけてくるもの」につかまって「墨を塗られ」たり「笹で打たれ」たりすると「厄払い」になるとするのが常套なのだが。