省エネの基本は「動かさないこと」 | 偕楽園血圧日記

省エネの基本は「動かさないこと」

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 温室ガス25%減目標を削除=基本法案で修正案浮上―民主党

 国会に提出されている地球温暖化対策基本法案をめぐり、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減する中期目標を削除する修正案が民主党内で浮上したことが6日、分かった。東日本大震災後の原発停止などでエネルギー政策を取り巻く状況が大きく変わったことを受け、具体的な数値目標は事実上棚上げし、法案成立に向け野党との妥協点を見いだしたい考え。
 時事通信 6月6日(月)20時28分

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 鳩山前総理が国連で勝手に言い放ってくれたものを取り消してくれるのはいいのだが、ならばその政策に沿って進めてきた排出権取引と、それによって外国に流れた税金への責任は取ってくれるのだろうか? するようならば民主党を見直してやらんこともないのだが。
 民主党は今回の原子炉事故で「原子炉推進を政策としてきた自民党の責任は重い」といっているのだから、当然こういうところで自分の責任というものを取る覚悟がおありなのだろう(冷笑)。


 さて、菅総理の辞任発言に「そっちの方が面白そうだ」と多数のメディアが飛びついている現在だが、少し前にそういう節操のない輩がもてはやしていたのが、「東電の供給力公表は嘘。節電なんかしなくとも大丈夫。これは原発をなくしたくない奴らの陰謀」というものであった。
 まあ、そんな奴らにはその言葉通りじゃんじゃん電気を使ってもらって変電所をふっ飛ばし、多額の損害賠償請求を受けてもらいたいものだが、そんなものや上記の「温暖化」の話などは関係なく、これからの社会、省エネを考えていくことは大切である。
 メタンやプロパンといった低分子量の炭化水素が主成分になっている天然ガスはともかく、重合分子が豊富に含まれている石油・石炭をただ熱を得るためだけに酸化させてばらばらにしてしまうのはもったいない。資源の損失である。
 こういう物質がどれほど人間生活に「直接」関与しているか、今座っている場所の周りを見回してみるだけでも分かるだろう。今の世界、石油製品(いわゆるプラスチック類である)が目に入らないようにしようと思ったら、どれほど人間の生活空間から離れた未開の奥地に行かなくてはならないことか。

 と、いうところで、面白い省エネ方法を実践しているところを産経新聞が紹介してくれているので、少々長いが全文引用紹介させていただこう。

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 ピラミッドの下に地下工場 その涼しさの秘密は…

偕楽園血圧日記-入口はピラミッド
(写真、産経新聞より。ヤマザキマザックオプトニクスの工場敷地。この地下に、工場がある。奥に見えるピラミッドは、工場への入り口=岐阜県美濃加茂市)

 全国的な電力不足が懸念される今年の夏。休業日の変更やサマータイム制の導入など各企業は電力消費削減に向けた知恵を絞る。こうしたななか、エアコンを設置しないことで、電力消費を従来比9割削減に成功した工場がある。室内温度は「エアコンレス」ながら夏場は28度以下、冬場は18度以上と一定。一体、どんな秘密があるのか…。
 岐阜県美濃加茂市郊外の丘陵地。工業団地内を貫く幹線道路沿いに、工作機械大手、ヤマザキマザック(愛知県大口町)の関連会社、ヤマザキマザックオプトニクスの工場がある。
 敷地内に足を踏み入れると、まず見えてくるのは総ガラス張りのピラミッド型の建物。が、他に建物はなく、あとは緑鮮やかな芝生が広がるだけ。実は、工場は地下11メートルに埋め込まれている。ピラミッドは地下につながる入り口だ。
 建物の一部が地下という工場はあるが、すべてが地下に潜っているという世界でもまれな施設。驚異的な省エネ達成の秘密はここにある。
「地中の熱を利用することで温度を一定に保っています」。同社の担当者はこう話す。地中熱は1年を通し、ほぼ温度が一定だ。美濃加茂市の気温は、夏場には38度、冬場には氷点下と厳しい気候だが、工場の地温は年間を通し16~18度。これを利用した。
 仕組みはこうだ。地下工場の周囲に風洞を張り巡らす。夏は、地上の吸気口から吸い込んだ熱い外気を風洞で循環させ、地熱によって冷却。工場内に供給する。冬はその逆。地熱で暖めた空気を工場内に吹き込む。その結果、工場内は一定の温度に保たれている。
 地下工場は延べ床面積約1万平方メートル。従業員140人が働き、レーザー加工機を組み立てている。
 実は、地下に工場を置いたのは、ホコリの少ないクリーンな環境を求めたことがきっかけだった。レーザー加工機は、内部に反射鏡をいくつも埋め込んだ超精密機器で、チリやホコリ、振動は大敵だ。以前は防塵性を高めた工場で製造していたが、30センチ四方あたりのホコリの数は300万個までの低下が限界。必要レベルとされる15万個には程遠い。出荷前には洗浄作業が必要だった。
 求めるクリーン度の達成には窓も通用口もなく、密閉性が高い地下が理想という。また、地下1メートル以上は地上の振動が伝わりにくく、精密機器には快適な環境。そこで全地下式の工場が計画された。
 ただ、密閉式の地下施設では空気の循環も必要。大型エアコン設置が解決策のひとつだが、この方法を取らず、空気循環は工場の周囲に巡らした風洞で行うことにした。エアコンなしでの空気循環、気温調節、そして省エネを実現した。前例がない取り組みで「念のため」非常用にエアコンは設置したが、稼働は年に数回にとどまる。
 総工費は35億円で、同規模の地上工場に比べ25%のコスト高。だが、クリーンな地下工場での製造で、従来の洗浄工程が不要になるなど効率化が進展。平成20年の稼働以来、消費電力の削減と合わせ長期的なコスト削減につながるという。
 すべてを手探りで始めた試み。ヤマザキマザックの森中晴夫専務は「他社と同じことをしていてはだめ。次の工場を建てるときも地下になるのでは」と話している。(内山智彦)
 産経新聞 6月5日(日)13時57分

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 昔のSFにはよく「未来の地下都市」というものが出てきたが、この工場のようなものが増えると、「見た目は広い自然公園だが、実は大工業地帯」というものが実際に出現する可能性もある(笑)。
 今の工場敷地は部品の移動・運搬も考えて舗装されているところが多いが、この地下工場ならば、地上をいわゆる「緑の環境」に保つこともできるので、ヒートアイランドの影響も抑えられるだろう。
 問題があるとすれば、長いタイムスパンで見た時に熱のこもりはないのかということや、工場の場合全体が地下に入ることで地下水の影響などで湿度が上がったりしないかというところになる。
 そのあたりはこれからデータを集めていかなくてはならないことだろうが、元々デリケートな工場は窓も少なく、建てる際にはかなり地面を掘り返して頑丈な基礎を作らなければならないのだから、建設コストとの兼ね合いも取り易いのではないだろうか?

 この「逆地熱」とでもいうもの、家庭用のものも既に「先行生産型」とでもいうべきものがある。
 そちらは「家を地下に入れる」のではなく、「温度の低い地下に通した空気で家全体を冷却する」というもの。もちろん、冬は逆に地中の方が地表より温度が高くなるのでこれは暖房として機能する。

 前総理に続いて菅総理もサミットで「思いつき」の「太陽光発電パネル1000万戸」を言ってくれたが、今のレベルの発電パネルを今のレベルの補助金と今のレベルの買い取り価格で普及させようとするのは税金の無駄遣いである。
 それならば、この家庭用地冷システムにエコポイントをつける方がまだまし。いや、充分に普及できるならば、補助金もいらないだろう。
 似たようなもので地下100メートル以上まで掘ってその温度差を利用したヒートポンプを動かす技術もあるが、それとは違って数メートルの掘削だけで済むうえ、基本は風を送るだけの原始的なものなので建設費も安い。必要なのは宣伝費だ(笑)。
 こちらも問題があるとすれば、暑い空気を通した時内部で起きるだろう結露をどうするかということと長い目で見た熱の土地への影響、そして地下にパイプを通すことによる地震時の脆弱性といったところだろうか。
 だが、それを考えても、これは普及に本腰を入れるべき技術だろう。


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 光熱費年間5万円節約 新型「エコウィル」発売へ 大ガス

 大阪ガスは23日、家庭用ガスコージェネレーション(熱電併給)システム「エコウィル」の新型モデルを6月1日から発売すると発表した。標準価格は79万5690円。今年度は年間4100台の販売を目指す。
 発電と温水供給を合わせた総合エネルギー効率を従来の85・5%から92・0%に高めたのが特長。標準家庭の場合、一般的な給湯暖房機に比べ光熱費を年間約5万円削減できる。
 また、従来モデルに比べ奥行きを8・2~10センチ薄くしたほか、背面の空きスペースなども縮小し、これまでの機種では設置できなかった狭い場所でも設置できる。
 エコウィルは平成15年3月に販売開始以来、今年3月末までの累計販売台数は7万台を超えている。今年の夏は、東日本大震災の影響による電力不足も懸念されているため、「問い合わせが増えている」(担当者)という。
 産経新聞 5月23日(月)20時51分

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 大阪ガスがこんなものを作っているが、80万円で買って年間の節約コストが5万円では、メンテナンスも考えると一般家庭ではあまり実用的ではない。
 このようなシステムはもう少し大きなものを作って、一棟で100戸近い家庭が入っているマンションなどが導入すべきもの。戸建住宅に装備しても、使いきれない無駄な熱がばらまかれるだけである。

 太陽光発電もそうだが、今まではこういう「目先のお得感」と「エコ」という単語でマイナスのコストパフォーマンスがごまかされていたが、上で取り上げたような技術が出てきたことをきっかけに発想を転換し、詐欺的なやり方から脱却すべきだろう。
 企業の決算的にはあまり良くない数字が出ることになるが、社会維持コストが下がるということは、まわりまわって企業のためにもなるはずだ。


 本日の「高い高い」。

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 スカイツリー、来年5月22日開業 展望台料金も発表

 東京スカイツリー(東京都墨田区)が2012年5月22日に開業することが決まった。建設を進める東武鉄道が7日、発表した。
 入場料は第1展望台(350メートル)までと、エレベーターを乗り継ぐ第2展望台(450メートル)までの2種類あり、大人(18歳以上)は2千円と3千円▽中学・高校生は1500円と2300円▽小学生は900円と1400円▽4歳以上は600円と900円。3歳以下はいずれも無料。
 朝日新聞2011年6月7日(火)18:57

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 いくら日本一高い展望台とはいえ、料金までこんなに高くしなくてもいいじゃないか(笑)。

 21世紀になって新しく電波塔を立てたというのに、商売感覚はまだ「お上りさん価格」を通用させる昔のまんまというのはなぁ。