Bluetoothキーボードの調子が悪く、二代目へ。

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 さて、経営者保証ガイドラインを使った再生の場でよく聞かれるのが、

 「特定調停により金融機関が債権放棄に合意したとして貸倒損失をきちんと立てられるのか」(=税務上否認され、結局有税償却になるのではないのか)という質問です。

 これに対して、今年6月、日本弁護士連合会、日本税理士会連合会の連名による照会が国税庁あてになされ、国税庁からは、「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」という回答を得ています。つまり、手順を踏んだ特定調停に基づく債権放棄は損金算入について問題なし、という所見です。

 では、「手順を踏んだ特定調停手続き」とは何でしょうか。

 この質問書に書かれている、関連の部分を抜粋します。

 (引用開始)

  経営困難に陥った債務者が弁護士、税理士、公認会計士等の専門家(以下「専門家」といいます。)の協力を得て、役員給与の減額等債務者自身の自助努力を加味した経営改善計画書を作成します。この経営改善計画書の経営改善計画概要の中には、金融機関等が再建計画の期間を通じて債権者の立場から債務者の管理を行うことを前提とした上で、モニタリングに必要な期間を定め、金融機関等は債務者に対して、当該モニタリング期間中、年一回程度の割合で、再建計画の実施状況を報告させるなどといった債務者に対するモニタリングの内容が記載されます(手引き別紙書式3≪経営改善計画概要≫)。また、実態貸借対照表を作成し予想配当率を算出するとともに、債務免除額を決定します。
 次に、メインバンクやそれ以外の金融機関等に対し経営改善計画案を説明し、意見交換等をし、同意の見込みを得た後、その経営改善計画案に則って調停条項案を作成し、金融機関等に対して特定調停についての説明と調停条項案に対する同意の見込みを得ます。
 さらに、この見込みを得ていることを前提に特定調停の申立てを行い、事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する調停委員(以下、単に「調停委員」といいます。)が、中立公正な第三者的立場から双方の意向を確認しながら、経営改善計画案の実行性等や支援額、調停事項の合理性等を検討します。これらの過程を経たうえで特定調停の対象となる債権者全員の同意を得て最終的に調停が成立します。

 (引用終り)

 手間ひまはかかりますが上記のような手順を踏んだものは、貸倒損失の計上について正当な事業再生手続きと同列に扱う、ということになります。破産、民事再生、中小企業再生支援協議会を使ったスキーム、私的整理ガイドラインなどと同質、ということになります。

 上記の手続きで重要なのは、

 「利害の対立する金融機関の同意を得て」というところです。

 つまり、金融機関が、「そんなのできるわけないでしょう」という認識でいればそれから先には進まない、ということです。

 ここが重要ですが、金融行政においても、金融検査マニュアルが大きく改訂され、それまでの全国画一の検査、管理体制から、

 「企業の再生可能性について各金融機関の評価に任せる」という大転換がなされています。

 金融機関としては、「前例が」「恣意的な債権放棄は」という思考になるのはやむを得ないと思いますが実は外堀はすでに埋まっていて、

 「金融機関として中小零細の再生に取り組むのかどうか」という姿勢を問われているように思います。

 この項、明日以降に続きます。