斎藤佑樹選手~早慶戦が終わって~ | 大学野球万歳

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早稲田大学から2011年に日本ハムファイターズに入団した斎藤佑樹投手をはじめとして、東京六大学野球や東都大、関西学生リーグ、関西六大学野球など、気になる選手のことを色々と。

去年の秋の早慶戦、試合終了直後。背番号1を付けた彼の背中を1塁側ベンチ上で見ていた。

溢れる悔し涙が止まらず、隣の背番号17の楠田くんが彼の背中に手をやって慰めていた。そこにはエースとして、自分が慶應打線を封じられず、4年生たちが「優勝」を成し遂げられなかったことへの自戒や悔恨、そして自分の不本意さを憾む姿があると感じた。こんな表現を使うと不謹慎かもしれないが、とても「美しい」背中だった。その背中が多くの観客の涙を誘った。

そして優勝が懸かった大一番。誰もが彼の活躍を信じて疑わなかっただろう。1年の春や秋の早慶戦のように、必ずややってくれると信じていた。敗れはしたが、早慶戦第1戦の調子は非常に良かった。スコアをつけながらみていたが、ここぞという時には低めにコントロールされた回転の良いボールがきていた。安心して見ていられる投球であった。(9回の1失点は悔やまれるが、コントロールミスであろう)2失点はしたものの9奪三振。中一日ではあったが、きっと好調を維持しているものと思っていた。

だからこそ、彼の投球が不本意に終わったという事実を受け入れ難く、私たちファンにとって驚きと落胆と動揺が大きく広がった。私自身も思いもかけない結果に言葉を失った。


色々なところで原因探しや揶揄、嘲弄があったと聞く。

・捕手が後逸したことで、精神的な糸が切れたのであろう。
・主将という重責から、かなりのプレッシャーがかかったのだろうか?
・1年の夏から成長が見られていないのではないか。
・ドラフト一位で検討している球団も逡巡しているのでは?

などなど。

これらは大変辛い報道や言われ方であるし、それらの報道等を見るにつけ、彼や家族がその報道を見て、どう思っているだろう、大きく傷ついていないか、など胸が痛くなる時もあった。でも、私はある意味において、大きな確信がある。


それは早慶戦最終日、慶応が優勝で湧く前で、整列に並ぶ主将である彼の姿であった。辛いであろう、悔しいであろう感情を一切前に出さず、一人小走りに走り整列する彼の姿。

去年は涙にくれていた早慶戦。

投球内容から考えて、今年の方が悔しいであろう、自分の投球にふがいない思いも持つではないか。

しかし、、、、である。

その目には一点の曇りもなく、正々堂々とした姿に胸を打たれた。

負けを認め、自分の弱さを受容した人に見られる「強さ」が見えた気がした。去年の彼の背中は「美しかった」が、今年は「強かった」と感じた。

もちろん、この夏はつらいであろう。自分の鍛える部分をどう見つめ、フォームや制球を更に高め、秋のシーズンに、そしてその先の高いステップに踏み出せるために、どのように過ごすだろう。

どうか周りの雑音には目もくれず、自分を見つめ、自分を信じ、頑張ってほしい。


秋に一回りも二回りも大きくなった姿を見られることを期待している。この負けがあったからこそ、次へ繋がるのである。どんなエースも「あの負け」があったからこそ、今の姿があると云う。

彼にとって、今回の「負け」がそのようなターニングポイントになるようにと心から祈っている。