今回は、「音楽」も「カレー」もない。
検索リンクで飛んできたのでなければ、今回の記事は飛ばした方がよいと思われる内容になっている。


Yahoo!光(Yahoo!BB光)が、サービスを年内で終了するらしい。
Web上のYahoo!BBのページにはどこにも記載がないが、利用者に届いた案内の文章がネット上に上がってきており、撤退は間違いないと思われる。
光利用者は、withフレッツのプランに切替を求められているらしい。
もっとも、回線事業者を乗り換えられなければではあるが。
全ての地域、マンションタイプも含むかなど分からないところはあるが、withフレッツでないサービスの申込ページは、ホームページ上見当たらない。


以下、首都圏の簡単な回線事業者の歴史を振り返る。
数年前まで、5つの会社が光ファイバー回線を提供していた。
1)NTT東日本
2)東京電力
3)USEN
4)KDDI
5)Yahoo!
他にもACCAなど、マンションタイプで提供していた事業者はあったが、個別引き込みを行っていたのは以上の5社であった。
ちなみに、首都圏以外では電力系が変わり、KDDIが提供していない地域もあったが、おおむね上記と変わらなかった。


1)占有タイプの「ベーシック」と共有タイプの「ファミリー」が、最初の分類である。
10mbpsの「ファミリー」の後、100mbpsの「ニューファミリー」の提供が始まったが、いわゆる「なんちゃって共有(実際は共有していなかった)」であり、国から排除勧告を受けた。
その後、PON(GePON)と呼ばれる独自技術の開発となる。
1本の光ファイバーを最大32分岐する企画を商品化し、「ハイパーファミリー」で「ひかり電話」とともに大々的にセールスをし、シェアを大幅に伸ばした。
現在、NGN(フレッツでは「ネクスト」)のサービスを始めて、新サービスをいろいろ始めている。
目玉は地デジ(まだごく一部だが)が利用できる「ひかりTV」ぐらいだが、コンセプトは「ベストエフォートでない帯域保証」であり、「使えるか保証できないひかり電話」を保証するものであった(ように記憶している)。


2)「100メガ回線独り占め」で、一時期大々的にCMを打っていた。
NTTの「ベーシック」で1万円以上かかっていた占有回線が、プロバイダー料込で6000円台で利用でき、回線品質も高かった。
0AB番号(いわゆる市外局番)が使える「DTIフォンひかり」というサービスも一部地域で利用でき、ナンバーディスプレーが無料などメリットも多かった。
ただ、占有にこだわり続けたため、「ハイパーファミリー」のエリア展開を広げるNTTとエリア的な差が付きすぎてしまった。
東京電力は!SpeedNet(スピードネット)のFWAとプロバイダー業務を終了。
POWEREDCOM(パワードコム)の法人回線をKDDIに譲渡し、個人向けプロバイダ業務も最終的にはフリービットに移管した。
「TEPCOひかり」サービスも、KDDIに移行。
サービスは存続しているものの、新規のキャンペーンは終了し、このプランしか使えない一部地域以外は需要がほとんどない。


3)「BROADGATE01」という個人向けサービスと、「BROADGATE02」という法人向けサービスとで2本立てだった。
途中、「01」の方は「Gyao光」という名称になり、今に至る。
当初、かなり気前のよいサービスで、「直収型(いわゆる「占有」)」の回線を用い(2芯という噂もあった)、「TEPCO光」で使えない固定IPが標準装備されていた。
NTTとも電力系とも違う、独自の光ファイバーネットワークを持っていたのだが、ある時期から「申し込んでもまず断られる」といった時期が生じた(らしい)。
また、途中から「直収型」や「固定IP」が保証されなくなり(これも噂だが)、それが実際ホームページ上でも「異なる場合がある」と但し書きがされるようになった。
量販店レベルのキャンペーン撤退は一番早く(やっていたかも分からないが)、やり手の営業が一時期導入しまくったマンションタイプ以外は利用者は少ないと思われる。
現在は「withフレッツ」のプランで、プロバイダーとしての「Gyao」ブランドだけを前面に出している。
以前、総務省が各回線事業者を呼び出し、NTTのNGNのダーク開放について質疑がされたことがある。
そこで「新規の回線ネットワークの拡大が、最近熱心でなくなった」ことについて、総務省から質問を受けている。
そのときUSENは否定していたものの、まず間違いなく独自回線からの撤退を決定していたはずである。
高サービス期に入った利用者にとっては続ける価値があるが、今は入る価値があるか、また加入すること自体できるのか疑問な事業者である。


4)NTTのダークファイバーを借用した「KDDI光プラス」が出発点である。
だが、上記の3社と異なり、NTTから8分岐単位でダークファイバーを借りるため、料金設定もエリア展開も制限受けるサービスであった。
具体的に示すと、借りた8本全部使ってもらえればレンタル料は回収できるが、1本しか使ってもらえないと持ち出しになってしまう。
エリア展開も、もちろんNTTが構築したエリアのみとなる。
「メタルプラス」というADSLを前面に展開していた出遅れがあり、自前の光ファイバーネットワークの獲得が悲願であった。
そこで、KDDIと東京電力で「KDDI&TEPCOキャンペーンプラス」という、東京電力のダークファイバーを用いたホームタイプの提供が始まり、「ひかりone」の名前に変更となる。
共有であるが、電話サービスが利用でき、ネットワークもNTTより速度が出ている点が当初売りであった。
現在は首都圏では初めての(関西圏のeo光はだいぶ早い)ギガサービス「ギガ得プラン」を、従来より1000円以上安い値段で始め大々的に売り出している。
au携帯との連携による無料通話「auまとめトーク」など、KDDI得意の垂直型統合サービス(WiMAXは難しいようだが)も売り材料である。


5)ADSLの値段を数千円下げた「Yahoo!BB」のブランドだが、光については後発で目立った活躍がない。
他社で光を大々的に売り出しているときにも、相変わらずADSLのパンフレットを量販店に並べていた。
一部の地域で自治体と提供して光ファイバーを提供していたが(「シティ」)、どちらかと言えば安さで遅いタイプのADSLを展開していた。
当然、NTTダークファイバーを借用してのサービスで、KDDIと異なり電力系との提携もなかった。
ソフトバンクの孫社長がNGNの1分岐単位での開放にこだわり、総務省内で大演説を行ったのもここでの苦い経験があったゆえであろう。
ただ、ほんの一時期、とても面白いサービスを日本で普及させようとしたことがあった。
マンションタイプでおなじみのVDSL規格であるが、これを個別引き込みしようというものである。
具体的に言えば、電柱まで光ファイバーを引き、そこから既存の電話線でVDSL信号を流す。
あとはADSLと同じようにモデムを付けて接続すれば、上りが若干遅いものの、大家の了承なし、工事もなしに光のサービスが利用できる。
どこまで受け入れられ、エリアが広がるか注目させられたが、残念ながら採算が取れるサービスにはならずにホームページからも「工事不要型」のプランは見当たらなくなった。
そして、回線事業者からプロバイダー業務のみに切替を行おうとするのか、「withフレッツ」のプランが開始される。
未発表であるが、おそらくその後の「Yahoo!光」プランの撤退は規定路線であろう。


エリア的な問題がなければ、基本上位サービスを利用者は欲し、申込を行う。
!SpeedNetのFWAやYahoo!光の「工事不要型」の失敗は、おそらくそこにあるのだろう。
「それしか使えない人だけが申し込む」サービスは、需要が減少しても拡大することは少ない。
それより、フリーライダーとなって回線使用料を払い、別の部分に労力と資金を回したほうが、ビジネスとしての旨味は大きい。


おそらく、撤退の最大の原因はNGNの存在だろう。
NGNは電力系もサービス開始は難しく、事実上NTT東西の独占となる可能性がある。
まだ、8分岐か1分岐か開放の単位は定まっていないが、「1分岐」「NGN」でYahoo!は価格攻勢に出てくると思われる。
「ひかりone」のギガサービスでなく、ひかりTVの地デジエリアがさらに広まったところで、そちら中心のCMを2011年までにしてくるであろう。


サービスが高度化されるほど、プロバーダーも回線事業者も淘汰されてゆく。
SNSなどで興味深い新サービスが始まる可能性はあるが、基幹となる部分のサービスそのものは、もう奇を衒った新サービスが生まれにくい構造になっていると言えるだろう。


いろいろ思うことはあるが、記憶違いや憶測も多く入っていると思われるので、今回はこのぐらいにしておく。
いずれ、この続編を書くことがあると思われるので、「その1」と付けておく。