メタルインドカレー高級化計画 | 大ぼら一代番外地

メタルインドカレー高級化計画

今宵はZENI GEVA@神戸Helluva Loungeにして、明日よりみつるちゃんが当山寺にて、私をプロデューサー兼エンジニアに迎え、ソロ作品の録音合宿せんとの事なれば、今宵神戸まで出向き、みつるちゃんを迎えに行かんとす。久しく吉田氏とも会っておらねば、況してやK.K.Null氏とは果たして何年ぶりの再会たるや、そもそもZENI GEVAのライヴ観戦も久しぶりにして、何とも楽し気な夜とならん。

「毎日カレーで構わない」と宣われるみつるちゃんなれば、録音作業に突入するや調理時間さえ惜しまれんと思い、温めるのみにて食し得るカレーでも拵えんと思い立ちし。私も日頃よりカレーを食らいておれど、殆ど手軽なレトルトにて済ませておれば、カレーを鍋にて拵えるなんぞ久しぶりなり。カレーと云えど、インドカレーの類いにあらず、市販のカレールーを使用する所謂日本の家庭の味たるカレーなり。何しろ曾ては、シェフとして夜毎インドカレーの類いを仕込んでおれば、また学生時代に自宅喫茶なるを開店、日々インドカレーの類いを提供しておれば、賃金なんぞ頂けるなら兎も角、今更己れの為にインドカレーなんぞ拵える気にもならぬ次第。使用するカレールーとは、斯くも陳腐なる味の「メタルインドカレー」にして、曾てはシェフを生業とせし私なれば、果たしてこの陳腐極まりなきメタルインドカレーを以て、如何程まで美味なるカレーを作り得るか、名付けて「メタルインドカレー高級化計画」これが今回の命題なり。勿論その審査委員とは「毎日カレーで構わない」と宣う程のカレー好きみつるちゃんなり。

そもそも所謂日本の家庭の味たるカレーを拵えるに当たり、私は「作ったその日から2日目の味がするカレー」なるレシピを独自開発会得しておれば、今回はそれの更に発展応用編と云う処か。
煮込み料理に於いて、最も重要なるもののひとつに出汁あれば、今回は先ず「カレー用特製鶏ガラスープ」から拵えん。

大ぼら一代番外地

水洗いせし鶏ガラを、水が張られし鍋にぶち込み煮立てん。

大ぼら一代番外地

鶏ガラの臭み取りに、白葱や果物の類いを利用するが常なれど、生憎白葱なんぞ常備しておらず、果物なんぞ高級食材なれば使用叶う筈もなく、そこで代用品として召喚せしはほうじ茶パックなり。ほうじ茶パック1包とローレル(月桂樹)の葉を数枚ぶち込み、ひたすら煮詰めるのみ。

大ぼら一代番外地

ほうじ茶が入っておれば、所謂鶏ガラスープの如き白濁色になる筈もなく、濃厚な茶色となれど、そもそもカレーに使用せんとすれば、色合いなんぞ些かの問題もなし。

大ぼら一代番外地

大ぼら一代番外地

笊にて濾せば、これにて下拵え第1弾「鶏ガラほうじ茶スープ」は完成、

大ぼら一代番外地

鶏ガラに残る肉やら内蔵の欠片やらも再利用せんと思えば、些か面倒臭けれど、骨より丁寧に外してやらん。

大ぼら一代番外地

続けて玉葱2個を微塵切り。世間にて呼ばれる微塵切りとは決して微塵切りにあらずして、微塵切りとは読んで字の如く微塵となるまで切り刻みてこそ、初めて微塵切りと呼ぶに相応しきものなれば、ここでの微塵切りとは、刻まれし玉葱の粒子が見えぬ程までに刻むものなり。曾て厨房にてインドカレーを仕込みし折には、毎度20個以上の玉葱を微塵切りにせねばならず、自ずからその包丁捌きも超絶的となりしものなれど、今回は斯様な手間さえ惜しまれれば、卸し金にて一気に微塵切りと同等なる粒子の大きさにせん。図らずもこの手法を思い付きしは、シェフを廃業する直前にして、ならば今迄の苦労は何やってん…と、長きに渡る我が徒労を呪いしものなり。
玉葱を微塵切りに処せれば、続けて大蒜と生姜も微塵切りとし、ここにクミンシード等スパイス各種を加え、これらを多めのオリーブオイルにて狐色若しくは飴色になるまで炒めん。このプロセスとはまさしくインドカレーの仕込み手順なれど、味の奥行きを決定し得る玉葱の旨味成分を引き出す最も重要なプロセスなり。

大ぼら一代番外地

玉葱等を炒めつつ、一方にてジャガイモをボイルせん。所謂日本の家庭の味たるカレー作りに於いて、ジャガイモやら人参等の具材は炒めし後、煮込まれると相場は決まっておれど、ボイルせし方が、煮崩れするが早く、煮崩れるとは即ちその具材の旨味成分が溶け出す事に相違なければ、最早炒める必要さえなし。皮剥きも、ボイルされし後に行えば、大いに容易にして、包丁さえ不要なり。ボイルされしジャガイモは、鍋へ放り込めば一瞬にして煮崩れる故、切り分けず丸ごとにて充分なれば、切る手間さえも省かれるものなり。奥様、何て簡単なんでしょう!

大ぼら一代番外地

ジャガイモのボイル完了すれば、続けて人参もボイルせん。

大ぼら一代番外地

さて鍋へ、鶏ガラスープ、鶏ガラより外せし肉片、炒められし玉葱等を放り込み、そこへ人参1本を擂り卸さん。この人参を卸し入れる意味とは、一瞬にして溶ける為、更なる野菜の旨味成分を、瞬時にして引き出さんとの目論みなり。

大ぼら一代番外地

ここへ水と酒を加え加熱、更に出汁を加えんと、出汁昆布を細かく刻みぶち込まん。

大ぼら一代番外地

いよいよカレールーたるメタルインドカレーを召喚。いざぶち込むや、ここまでの苦労を伺えし何とも云えぬ鶏ガラスープやスパイス等の芳しき香りは、メタルインドカレーの陳腐なる香り一撃の下に、見事打ち消され、何とも哀し気なる気分にさせられれど、料理とは完了せし際に美味なれば問題なく、斯様な過程のひとつに於いて一喜一憂しておれば、味の全体像さえ想像するに難しと知る。

大ぼら一代番外地

酸味を足さんとすれば、タマリンドペーストの類い、若しくはせめてトムヤンクンの素なんぞあれば問題なけれど、今やエスニック料理等の類いを日常生活に於いて拵える事なんぞ皆無なれば、持ち合わせる筈もなく、ここは甜麺醤にて代用せん。

大ぼら一代番外地

更に苦みと豊穣さを若干加えんと、オイスターソースを少々加えん。カレーの美味さとは辛さのみにあらず、甘さ、酸っぱさ、苦さの絶妙なるバランスの上に成立するものなり。コーヒーなんぞ加えるも同様の理由に他ならん。

大ぼら一代番外地

味見をしつつ微調整せんと思えば、ウスターソース、麺つゆ、ケチャップ等、冷蔵に常備する代物さえも召喚、また若干の辛味を加えんと唐辛子も召喚せり。これら全て決して入れ過ぎぬよう細心の注意を図りつつ、適量を見極め加える事こそ最重要ポイントなり。
ジャガイモなんぞ既に煮崩れ始めれば、焦げ付かぬよう掻き混ぜつつ、せめて1時間も煮込めば充分、斯くして「メタルインドカレー高級化計画」ここに完了せり。具に味が滲みるは温度が下がる時なれば、食する前に必ず一度冷ます事こそ重要なり。

大ぼら一代番外地

みつるちゃんが来れば、毎食カレーとならんと思えば、ここはカツカレーも堪能せんと、豚ヒレ肉にてヒレカツなんぞも仕込みし次第。

$大ぼら一代番外地

漸くカレーの仕込みも完了すれば、さて腹拵えせんと、レトルトカレーによるカレーうどんなんぞ食らわんとす。カレーを仕込みながら、何故レトルトカレーを食さんとするかと云えば、すっかり冷めし竹輪天やらコロッケやらの惣菜コーナーにて所望せし下衆なトッピングに相応しきは、やはり陳腐なるレトルトカレーの味わいなりと思えばこそ。刻み葱を添え、ウスターソースとハバネロソースをぶっ掛ければ、何ともジャンク且つB級なる味わいにして「竹輪天&コロッケカレーうどん」を堪能、これはこれにて愛して止まぬ限りなり。

大ぼら一代番外地

腹拵えも済ませれば、いざZENI GEVAのライヴ観戦に神戸Helluva Loungeへと赴かん。何しろ今宵は、高知よりChaotic Noise軍団も襲来せんとの事、ならば井上社長と7t程度はドーーンと飲み明かさん。