核開発疑惑を巡って欧米諸国によるイラン追加制裁の動きが加速し、日本にもイラン原油輸入の削減要請が米国から行われています。

既にフランスはイラン原油の輸入禁止を決め、EU諸国にも禁輸に向けた動きがあります。
とはいえ、フランスのイラン原油輸入量は日量5万バレル弱でドイツや英国の輸入量もわずかですから、同10万バレルを超える輸入量のイタリアやスペインが同調するかどうかがポイントですね。

油を売る日々-IranExport

また、足元では日量60万バレル近い量を輸入する中国がイラン原油最大の買い手で、同30万バレル余りを輸入する日本やインドが続きます。

中国による今年前半のイラン原油輸入量は前年比50%増ということですから、これまでの制裁措置で他国の輸入が減った分を中国が買っているということですね。

今後EUや日本がイラン原油の輸入を減らしても、中国が全て吸収してしまうのでしょう。

とはいえ、イランの原油供給量は減少傾向が顕著になっています。
OPEC全体の産油量推移と比較すると、その様子が明らかですね。今年はリビア内戦による供給不足を埋め合わせるために他のOPEC加盟国が増産を繰り返した一方、イラン産油は減少の一途です。

油を売る日々-OPECIran

2006年12月から昨年6月まで4回にわたって行われた国連安保理のイラン制裁決議に基づいて、日本を含め国際社会はイランの核開発や武器関連の取引を抑制する一方、欧米は独自の制裁を行なっています。

イランで石油開発を行う外国企業にも自粛要請や制裁の脅しが行われ、日本もアザデガン油田開発から撤退していますね。

欧米企業が開発から手を引いているためイランの原油生産は減少傾向となっており、今年前半の産油量は日量370万バレル前後で昨年の同408万バレルから9%余り減少しています。

開発の停滞の一方で老朽油田の産油量減少のため、イランの原油生産は毎年日量40~70万バレル程度の自然減少が予測されています。実際に昨年から今年の産油量推移がその推測を裏付けていますね。

油を売る日々-IranBalance

また、生産量が落ち込む一方で原油輸出は前年から増えていますから、国内消費向けはかなり減っているものと思われます。

イランの石油精製能力は日量150万バレル弱ですが、これも海外企業の撤退で増強が滞っていますね。

今年初めから補助金のカットなどによってイラン国内のガソリン消費が減少していると伝えられますが、経済活動全体にどの程度の影響を与えているのでしょうか。

制裁に対してイラン国民が激しく反発していますが、日常生活の不便が制裁によってもたらされていると考えるなら、それもうなずけますね。

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